ポータブルトイレは介護保険で購入できる?対象条件・自己負担・申請の流れを解説

高齢の家族が夜間にトイレへ行くのが大変になったり、転倒の不安が出てきたりすると、自宅にポータブルトイレを置くことを検討する方も多いのではないでしょうか。

ポータブルトイレは、寝室やベッドの近くに設置できるため、トイレまでの移動が難しい方や、夜間の排泄に不安がある方にとって役立つ福祉用具です。

一方で、「ポータブルトイレは介護保険で購入できるの?」「レンタルではなく購入になるの?」「自己負担はいくら?」「どこで買っても介護保険の対象になる?」と迷うこともあります。

介護保険では、要介護・要支援認定を受けている方が、日常生活の自立を助けるために必要な福祉用具を利用できる仕組みがあります。ポータブルトイレは、介護保険の「特定福祉用具販売」の対象となる腰掛便座に含まれる場合があります。厚生労働省の福祉用具に関する案内でも、福祉用具は要介護者等が自宅で自立した日常生活を営めるよう助けるものが保険給付の対象とされています。

ただし、介護保険の対象にするには、指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入することや、市区町村への申請が必要です。一般の通販サイトやホームセンターなどで自己判断で購入した場合、介護保険の給付対象にならない可能性があります。

また、福祉用具購入費には支給限度額があり、多くの自治体では同一年度内で10万円までを上限として、利用者負担分を除いた額が支給される仕組みです。たとえば自治体の案内でも、腰掛便座の例として補高便座やポータブルトイレなどが挙げられています。

ポータブルトイレが介護保険の対象になる条件、購入とレンタルの違い、自己負担額の目安、申請の流れ、選ぶときの注意点についてわかりやすく解説します。

ポータブルトイレは介護保険の対象になる?

ポータブルトイレは、条件を満たせば介護保険の対象になる場合があります。

介護保険では、要介護・要支援認定を受けた方が、自宅で安全に生活するために必要な福祉用具を利用できる仕組みがあります。ポータブルトイレは、介護保険の「特定福祉用具販売」の対象となる腰掛便座に含まれることがあります。

特定福祉用具販売とは、利用者の肌に直接触れるものや、衛生面からレンタルになじみにくい福祉用具について、購入費の一部が介護保険から支給される制度です。

ポータブルトイレは、排泄に使う福祉用具であり、衛生面の理由からレンタルではなく購入の対象になるのが一般的です。

たとえば、次のような方は、ポータブルトイレの利用を検討することがあります。

・夜間にトイレまで歩くのが不安な方
・足腰が弱く、トイレへの移動に時間がかかる方
・転倒リスクが高い方
・寝室からトイレまでの距離が長い方
・介助があれば排泄できるが、移動が負担になっている方
・退院後、一時的にトイレまでの移動が難しい方

ただし、介護保険の対象にするには、本人が要介護認定または要支援認定を受けていることが前提になります。認定を受けていない方が自己判断で購入した場合は、介護保険の給付対象になりません。

また、どこで購入しても対象になるわけではありません。介護保険を使って購入する場合は、市区町村の指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」から購入する必要があります。

一般の通販サイト、ホームセンター、ドラッグストアなどで購入した場合、同じようなポータブルトイレであっても、介護保険の対象外になることがあります。

そのため、ポータブルトイレを介護保険で購入したい場合は、先にケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口に相談しましょう。

特に、すでに介護サービスを利用している方は、担当のケアマネジャーに相談するのが安心です。本人の身体状況や住環境を確認したうえで、必要な福祉用具かどうか、どのタイプが合うか、どの事業者から購入すればよいかを一緒に考えてもらえます。

ポータブルトイレは、夜間の転倒予防や介助負担の軽減につながる便利な福祉用具です。ただし、介護保険を使うには手順があるため、購入前に必ず確認しておきましょう。

ポータブルトイレを介護保険で購入した場合の自己負担はいくら?

ポータブルトイレを介護保険の対象として購入する場合、購入費の全額が支給されるわけではありません。

介護保険の福祉用具購入費では、原則として購入費用の1割から3割を利用者が負担し、残りの7割から9割が介護保険から支給されます。自己負担割合は、本人の所得などによって異なります。

たとえば、自己負担割合が1割の方が、3万円のポータブルトイレを介護保険の対象として購入した場合、最終的な自己負担はおよそ3,000円になります。2割負担であれば約6,000円、3割負担であれば約9,000円が目安です。

ただし、福祉用具購入費には支給限度額があります。一般的には、同一年度内で10万円までが対象となり、その範囲内で自己負担割合に応じた給付を受ける仕組みです。

たとえば、1割負担の方であれば、年間10万円までの購入費に対して、最大9万円までが介護保険から支給されるイメージです。10万円を超える部分については、原則として全額自己負担になります。

また、支払い方法には自治体によって違いがあります。

一度、利用者が全額を支払い、あとから市区町村に申請して保険給付分が払い戻される「償還払い」が基本となる場合があります。一方で、対応している自治体や事業者では、最初から自己負担分だけを支払う「受領委任払い」を利用できることもあります。

自己負担を考えるときに確認したいポイントは、次のとおりです。

・本人の介護保険の負担割合が1割、2割、3割のどれか
・購入するポータブルトイレの価格
・同じ年度内にほかの特定福祉用具を購入していないか
・年間10万円の支給限度額を超えないか
・償還払いか受領委任払いか
・指定された特定福祉用具販売事業者から購入するか

ポータブルトイレは、商品によって価格に幅があります。シンプルなタイプもあれば、肘掛け付き、背もたれ付き、消臭機能付き、家具調タイプなど、使いやすさや機能性を重視した商品もあります。

価格だけで選ぶのではなく、本人の身体状況、立ち座りのしやすさ、介助のしやすさ、掃除のしやすさ、設置場所に合うかどうかも確認しましょう。

介護保険を使って購入したい場合は、購入前にケアマネジャーや販売事業者へ相談し、自己負担額や申請方法を確認しておくと安心です。

ポータブルトイレを介護保険で購入する流れ

ポータブルトイレを介護保険の対象として購入したい場合は、自己判断ですぐに購入するのではなく、事前に手順を確認しておくことが大切です。

介護保険の福祉用具購入費は、要介護・要支援認定を受けた方が、指定を受けた特定福祉用具販売事業者から対象となる福祉用具を購入した場合に支給される仕組みです。厚生労働省も、福祉用具販売事業者と相談して製品を購入し、住んでいる自治体に支給申請をする流れを案内しています。

基本的な流れは、次のとおりです。

1. ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

まずは、担当のケアマネジャーに相談しましょう。まだケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口に相談します。

本人の身体状況、トイレまでの距離、夜間の転倒リスク、介助の必要性などを確認し、ポータブルトイレが必要かどうかを考えます。

2. 指定の特定福祉用具販売事業者に相談する

介護保険を使って購入する場合は、都道府県や市区町村から指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入する必要があります。

自治体によっては、指定を受けた事業者から購入した場合でも、福祉用具専門相談員から直接助言を受けられない通信販売では支給対象外と案内しているところがあります。

3. 本人に合うポータブルトイレを選ぶ

ポータブルトイレには、シンプルなタイプ、肘掛け付き、背もたれ付き、家具調タイプ、消臭機能付きなど、さまざまな種類があります。

立ち座りのしやすさ、座面の高さ、安定感、掃除のしやすさ、設置場所の広さ、介助のしやすさを確認しながら選びます。

4. 購入・支払いをする

支払い方法は自治体や事業者によって異なります。

いったん全額を支払い、あとから保険給付分が払い戻される「償還払い」が基本となる場合があります。一方で、対応している自治体や事業者では、最初から自己負担分だけを支払う「受領委任払い」を利用できることもあります。

5. 市区町村へ支給申請をする

購入後は、市区町村に福祉用具購入費の支給申請を行います。

申請に必要な書類は自治体によって異なりますが、一般的には、申請書、領収書、購入した商品のパンフレットやカタログ、福祉用具が必要な理由が分かる書類などを求められることがあります。

自治体によっては、購入前の事前確認が必要な場合もあります。申請のタイミングや必要書類は地域によって異なるため、必ず事前に確認しておきましょう。

ポータブルトイレを介護保険で購入するときは、「必要だから買う」だけではなく、「介護保険の対象になる買い方をする」ことが大切です。

購入前にケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談し、指定事業者、支払い方法、申請書類を確認してから進めましょう。

ポータブルトイレを選ぶときの注意点

ポータブルトイレは、介護保険の対象になるかどうかだけでなく、本人が安全に使えるか、介助しやすいか、掃除しやすいかを確認して選ぶことが大切です。

価格や見た目だけで選んでしまうと、「座りにくい」「立ち上がりにくい」「掃除が大変」「本人が使いたがらない」といった問題が出ることがあります。

座面の高さを確認する

ポータブルトイレを選ぶときは、まず座面の高さを確認しましょう。

座面が低すぎると立ち上がるときに膝や腰に負担がかかりやすくなります。反対に高すぎると、足が床につきにくくなり、姿勢が不安定になることがあります。

本人の身長や足腰の状態、ベッドの高さなどに合わせて、無理なく座れる高さを選ぶことが大切です。

肘掛けや背もたれの有無を確認する

足腰が弱っている方や、立ち座りに不安がある方は、肘掛け付きのタイプが使いやすい場合があります。

肘掛けがあると、座るときや立ち上がるときに体を支えやすくなります。背もたれがあるタイプは、座っている姿勢を保ちやすく、安心感につながることがあります。

ただし、介助者が横から支える必要がある場合は、肘掛けが邪魔にならないかも確認しましょう。

安定感と転倒リスクを確認する

ポータブルトイレは、寝室やベッドの近くに置いて使うことが多いため、安定感がとても重要です。

本体が軽すぎると、立ち上がるときに動いてしまうことがあります。床が滑りやすい場所では、転倒リスクにもつながります。

設置場所の床の状態、本人の動作、夜間の使用状況を確認し、安全に使える位置に置くようにしましょう。

掃除のしやすさを確認する

ポータブルトイレは毎日使う可能性があるため、掃除のしやすさも大切です。

バケツの取り外しやすさ、汚れがつきにくい形状か、消臭対策がしやすいか、部品が洗いやすいかを確認しましょう。

介助する家族にとって、掃除や後片付けの負担が大きいと、継続して使うことが難しくなる場合があります。

消臭機能や防臭対策を確認する

寝室に置く場合は、においへの配慮も必要です。

消臭機能付きのタイプや、専用の防臭剤を使えるタイプもあります。部屋の換気、フタの密閉性、処理のしやすさなども確認しておくと安心です。

本人がにおいを気にして使いたがらなくなることもあるため、できるだけ快適に使える環境を整えましょう。

設置場所と夜間の動線を確認する

ポータブルトイレは、置く場所も重要です。

ベッドから近すぎると生活スペースが狭くなり、遠すぎると移動の負担が残ります。夜間に使う場合は、ベッドから起き上がって数歩で安全に移動できる位置に置くと安心です。

足元灯を置く、床の物を片付ける、滑りやすいマットを避けるなど、夜間の転倒予防も一緒に考えましょう。

本人が抵抗なく使えるかを確認する

ポータブルトイレは便利な福祉用具ですが、本人が使うことに抵抗を感じる場合もあります。

「部屋にトイレを置くのは嫌だ」「家族に迷惑をかけたくない」「恥ずかしい」と感じる方もいます。そのため、本人の気持ちを無視して設置するのではなく、なぜ必要なのかを丁寧に説明することが大切です。

たとえば、「夜に転ばないように」「トイレまで急がなくていいように」「体調が戻るまで一時的に使おう」など、本人が受け入れやすい言い方を工夫するとよいでしょう。

ポータブルトイレを選ぶときは、本人の身体状況、住環境、介助者の負担、本人の気持ちを含めて考えることが大切です。迷う場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談し、実際の使い方を想定しながら選びましょう。

まとめ:ポータブルトイレは介護保険の対象になる場合がある。購入前に相談を

ポータブルトイレは、夜間にトイレへ行くのが不安な方や、足腰が弱ってトイレまでの移動が難しい方にとって、転倒予防や介助負担の軽減につながる福祉用具です。

介護保険では、ポータブルトイレが「特定福祉用具販売」の対象となる腰掛便座に含まれる場合があります。そのため、要介護・要支援認定を受けている方で、必要性が認められれば、介護保険を使って購入できる可能性があります。

ただし、どこで購入しても介護保険の対象になるわけではありません。介護保険を使う場合は、指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入し、市区町村へ必要な申請を行う必要があります。通販サイトやホームセンターなどで自己判断で購入すると、給付対象外になることがあるため注意しましょう。

自己負担は、本人の負担割合によって1割から3割が目安です。ただし、福祉用具購入費には同一年度内で10万円までという支給限度額があるため、購入前に金額や申請方法を確認しておくことが大切です。

また、ポータブルトイレを選ぶときは、価格だけでなく、座面の高さ、肘掛けや背もたれの有無、安定感、掃除のしやすさ、消臭対策、設置場所、夜間の動線なども確認しましょう。本人が抵抗なく使えるかどうかも大切なポイントです。

ポータブルトイレは、本人の身体状況や住環境に合っていないと、かえって使いにくくなったり、転倒リスクにつながったりすることがあります。購入を検討するときは、まず担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口、福祉用具専門相談員に相談しましょう。

介護保険の対象になるかどうかだけでなく、本人が安心して使えるものを選ぶことが、在宅介護を続けるうえで大切です。

執筆者

この記事の執筆者
清水 健児

バディファミリーサービス / 生活サポートアドバイザー

バディファミリーサービス所属。
高齢者の生活支援や介護保険外サービスの相談に多数対応。

外出サポート、買い物同行、施設探しなど、
家族だけでは難しい生活支援のサポートを行っている。

現在は地域サロンの運営や、
高齢者と家族を支える生活支援サービスの普及活動にも取り組んでいます。