高齢者の子宮脱手術は受けられる?治療法・リスク・家族が知っておきたい注意点

高齢の家族が子宮脱と診断され、「手術をすすめられたけれど高齢でも大丈夫なのか」「手術以外の治療法はないのか」「入院や術後の生活が心配」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

子宮脱は、骨盤の中で子宮を支えている筋肉や靭帯が弱くなり、子宮が腟の中へ下がったり、外へ出てきたりする状態です。骨盤臓器脱の一種で、膀胱瘤、直腸瘤、腟断端脱などと一緒に起こることもあります。日本泌尿器科学会も、骨盤臓器脱には膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱、腟断端脱などが含まれると説明しています。

子宮脱では、「股の間に何かが下がってくる感じがする」「ピンポン玉のようなものが触れる」「歩くと違和感がある」「尿もれや頻尿がある」「排便しにくい」といった症状が出ることがあります。

治療法には、骨盤底筋訓練、ペッサリーという器具を腟内に入れて支える方法、手術などがあります。日本泌尿器科学会も、軽度の下垂では骨盤底筋訓練で症状改善が期待でき、脱出している臓器や程度によって手術方法が検討されると説明しています。

高齢者の場合、「年齢的に手術は難しいのでは」と心配になるかもしれません。しかし、年齢だけで手術の可否が決まるわけではありません。症状の程度、生活への支障、持病、認知機能、麻酔への耐えられるか、術後の生活管理ができるかなどを総合的に判断します。

一方で、すべての方に手術が必要なわけではありません。軽症の場合や手術を希望しない場合、全身状態から手術が難しい場合には、保存的治療が選ばれることもあります。日本産婦人科医会も、軽症例や高齢者、外科的治療ができない症例では、保存的な選択肢が検討されると示しています。

高齢者の子宮脱で見られる症状、手術が必要になるケース、手術以外の治療法、手術のリスク、家族が確認しておきたいポイントについてわかりやすく解説します。

高齢者の子宮脱で見られる主な症状

子宮脱は、子宮が本来の位置より下がり、腟の中や外側へ出てくる状態です。

初期のうちは自覚症状が少ないこともありますが、進行すると「何かが下がってくる感じ」「股の間に違和感がある」「歩くとこすれて痛い」など、日常生活に支障が出ることがあります。

高齢者の場合、「年齢のせい」「尿もれの一種」と思って我慢してしまうこともあるため、本人が言い出しにくい症状にも注意が必要です。

股の間に何かが下がる感じがする

子宮脱でよく見られるのが、股の間に何かが下がってくるような違和感です。

「ピンポン玉のようなものが触れる」
「夕方になると下がってくる」
「立っていると違和感が強くなる」
「横になると少し楽になる」

このような訴えがある場合、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内臓器が下がっている可能性があります。

症状は、朝よりも夕方、座っているときより立っているとき、長時間歩いたあとなどに強くなることがあります。

歩くと違和感や痛みがある

子宮が腟の外へ出てくると、下着にこすれて痛みや出血が出ることがあります。

歩くたびに違和感がある、座ると当たる感じがする、入浴時に腟のあたりでふくらみを触れるといった変化で気づく方もいます。

高齢者の場合、恥ずかしさから家族や医師に相談しにくく、長い間我慢してしまうことがあります。

違和感や痛みが続く場合は、婦人科や泌尿器科、骨盤臓器脱を診ている医療機関へ相談しましょう。

尿もれ・頻尿・排尿しにくさが出ることがある

子宮脱では、膀胱や尿道の位置にも影響が出ることがあります。

そのため、尿もれ、頻尿、尿が出にくい、残尿感がある、トイレに何度も行くといった症状が出ることがあります。

なかには、子宮や膀胱が下がることで尿が出にくくなり、排尿に時間がかかる方もいます。

高齢者の尿もれは、加齢や膀胱の病気、薬の影響などでも起こりますが、股の間の違和感や下がってくる感じがある場合は、子宮脱や骨盤臓器脱の可能性も考えられます。

便秘や排便しにくさがある

子宮脱や骨盤臓器脱では、直腸が腟側に下がる直腸瘤を伴うこともあります。

その場合、便が出にくい、排便時に強くいきまないと出ない、便が残っている感じがするなどの症状が出ることがあります。

便秘が続くと、排便時のいきみによって骨盤底に負担がかかり、症状が悪化することもあります。

便秘がある場合は、食事、水分、薬の調整なども含めて医師に相談するとよいでしょう。

本人が恥ずかしくて相談できないこともある

子宮脱はデリケートな場所の症状のため、本人が家族に相談しにくいことがあります。

特に高齢者の場合、「恥ずかしい」「年だから仕方ない」「手術になるのが怖い」と感じて、受診を先延ばしにしてしまうこともあります。

家族が気づきやすいサインとしては、次のようなものがあります。

・トイレの回数が増えた
・尿もれを気にするようになった
・歩き方がぎこちない
・外出を嫌がるようになった
・下着の汚れや出血を気にしている
・座るときに痛そうにしている
・入浴や着替えを嫌がるようになった

子宮脱は命に直結する病気ではない場合もありますが、放置すると違和感や痛み、尿や便のトラブルが強くなり、生活の質が下がることがあります。

気になる症状がある場合は、恥ずかしがらずに婦人科や泌尿器科へ相談することが大切です。

子宮脱は手術以外で治療できる?

子宮脱と診断されても、すぐに手術が必要になるとは限りません。

症状の程度が軽い場合や、本人が手術を希望しない場合、持病や体力面から手術が難しい場合には、手術以外の治療法が選ばれることがあります。

子宮脱を含む骨盤臓器脱の治療は、症状の程度や生活への支障、年齢、全身状態、本人の希望などをふまえて決めます。日本産婦人科医会も、骨盤臓器脱の治療はQOLの障害度に合わせて治療法を決定すると説明しています。

骨盤底筋訓練

軽度の子宮脱では、骨盤底筋訓練がすすめられることがあります。

骨盤底筋とは、子宮や膀胱、直腸などを下から支えている筋肉のことです。この筋肉を意識して鍛えることで、下がってくる感じや尿もれなどの症状改善が期待できる場合があります。

日本泌尿器科学会も、軽度の下垂では骨盤底筋群を強くすることで症状の改善が期待できると説明しています。

ただし、子宮が腟の外へ大きく出ている場合や、違和感・痛みが強い場合は、骨盤底筋訓練だけでは十分な改善が難しいこともあります。

ペッサリー療法

ペッサリー療法とは、腟の中にリング状などの器具を入れて、下がっている子宮や臓器を支える方法です。

手術をしない治療法として、高齢者にも選択されることがあります。日本泌尿器科学会も、腟内にペッサリーリングを入れ、骨盤内臓器の脱出を防ぐ治療法を紹介しています。

ペッサリーは、合うサイズを医師が確認しながら選びます。うまく合えば、違和感や下垂感が軽くなり、歩きやすさや生活のしやすさが改善することがあります。

一方で、長期間入れたままにすると、おりもの、出血、痛み、腟の炎症などが起こることがあります。そのため、定期的な通院や器具の管理が必要です。

生活習慣の見直し

子宮脱の症状を悪化させないためには、骨盤底に負担をかける生活習慣を見直すことも大切です。

たとえば、重いものを持つ、強くいきむ、慢性的な便秘がある、長時間立ちっぱなしになるといったことは、骨盤底に負担をかける原因になります。

便秘がある場合は、食事や水分、薬の調整について医師に相談しましょう。咳が長引いている場合も、腹圧がかかりやすくなるため、内科などで相談することが大切です。

手術以外で様子を見る場合も定期受診が必要

手術をしない場合でも、定期的な診察は必要です。

症状が進行していないか、ペッサリーが合っているか、腟に傷や炎症が起きていないか、尿や便のトラブルが悪化していないかを確認するためです。

特に高齢者の場合、本人が違和感や痛みをうまく伝えられないこともあります。家族が、歩き方、トイレの回数、下着の汚れ、出血、外出を嫌がる様子などに気づいたら、早めに受診につなげましょう。

子宮脱は、症状が軽い場合には手術以外の方法で対応できることもあります。ただし、症状が強い場合や日常生活に大きく支障が出ている場合は、手術が検討されることもあります。

大切なのは、年齢だけで決めるのではなく、本人の困りごとや体の状態、生活環境に合わせて治療法を選ぶことです。

まとめ:高齢者の子宮脱は、症状や体の状態に合わせて治療法を選ぼう

子宮脱は、子宮を支える骨盤底の筋肉や靭帯が弱くなり、子宮が腟の中や外へ下がってくる状態です。骨盤臓器脱の一種で、膀胱瘤や直腸瘤などを伴うこともあります。

高齢者の子宮脱では、股の間に何かが下がってくる感じ、歩くときの違和感、下着とのこすれ、尿もれ、頻尿、排尿しにくさ、便秘や排便しにくさなどが見られることがあります。

デリケートな症状のため、本人が恥ずかしさから相談できず、長く我慢してしまうこともあります。しかし、放置すると違和感や痛みが強くなったり、尿や便のトラブルが続いたりして、生活の質が下がることがあります。

子宮脱と診断されても、すぐに手術が必要になるとは限りません。軽症の場合や高齢で外科的治療が難しい場合には、骨盤底筋訓練やペッサリー療法などの保存的な治療が検討されることがあります。骨盤臓器脱の治療は、生活の質への影響度に合わせて決めるとされています。

一方で、子宮が大きく下がっている、違和感や痛みが強い、歩行や排尿・排便に支障が出ている、ペッサリーが合わない、保存的治療で改善しないといった場合には、手術が検討されることもあります。

高齢だからといって、必ず手術ができないわけではありません。ただし、手術を受けるかどうかは年齢だけでなく、症状の程度、本人の体力、持病、認知機能、麻酔のリスク、術後の生活管理、本人の希望などを含めて総合的に判断する必要があります。

家族が確認しておきたいポイントは、次のとおりです。

・どの臓器がどの程度下がっているのか
・手術以外の治療法で対応できるか
・ペッサリー療法が合うか
・手術をする場合、どの方法になるか
・入院期間や術後の生活制限はあるか
・持病や服薬で注意することはあるか
・退院後の家事、通院、入浴、排便管理をどうするか
・本人が治療内容を理解し、納得できているか

子宮脱は、命に直結しにくい病気と思われがちですが、毎日の歩行、排尿、排便、外出、入浴などに影響しやすい病気です。

「年齢のせい」「恥ずかしいから」と我慢せず、気になる症状がある場合は、婦人科、泌尿器科、女性泌尿器科、骨盤臓器脱を扱う医療機関などに相談しましょう。

高齢者の子宮脱では、本人のつらさを軽くし、生活しやすさを取り戻すことが大切です。手術をするかどうかだけにとらわれず、本人の状態と希望に合った治療法を医師と相談しながら選んでいきましょう。

執筆者

この記事の執筆者
清水 健児

バディファミリーサービス / 生活サポートアドバイザー

バディファミリーサービス所属。
高齢者の生活支援や介護保険外サービスの相談に多数対応。

外出サポート、買い物同行、施設探しなど、
家族だけでは難しい生活支援のサポートを行っている。

現在は地域サロンの運営や、
高齢者と家族を支える生活支援サービスの普及活動にも取り組んでいます。