80代の母が、テレビ通販やカタログ通販を頻繁に利用しています。
健康食品、寝具、調理器具、洋服、雑貨など、必要のないものまで買ってしまい、部屋の中に使っていない商品が増えてきました。段ボールもなかなか片付かず、家の中が物であふれている状態です。
お金の管理も心配です。本人は「安かったから」「便利そうだったから」と言いますが、毎月どのくらい使っているのか、きちんと分かっていないように見えます。
家族としては、通販を少し控えてほしいと思っています。ただ、注意すると「自分のお金で買っているのに、なぜ文句を言われるの」と怒ってしまい、話し合いになりません。
ご相談ありがとうございます。
高齢の方がテレビ通販やカタログ通販を頻繁に利用し、必要以上に物を買ってしまうケースは、珍しいことではありません。家族としては、部屋が物であふれることや、生活費・老後資金への影響が心配になりますよね。
ただし、頭ごなしに「もう買わないで」「通販をやめて」と言ってしまうと、本人は責められたように感じ、かえって反発してしまうことがあります。
高齢の方にとって、通販は単なる買い物ではなく、楽しみや安心感、気分転換になっている場合があります。テレビ通販を見ている時間が生活の一部になっていたり、商品を選ぶことが刺激になっていたりすることもあります。
そのため、まず大切なのは、通販を「やめさせる」ことだけを目的にしないことです。なぜ買ってしまうのか、どのくらい使っているのか、本人が何に不安や寂しさを感じているのかを確認しながら、少しずつ買いすぎを防ぐ仕組みを作っていきましょう。
高齢者が通販をやめられない理由、家族ができる声かけ、買い物履歴の確認方法、通販を減らす工夫、専門機関に相談したほうがよいケースについて解説します。
高齢の親が通販をやめられない理由
高齢の親が通販を繰り返してしまう背景には、いくつかの理由があります。
まず考えられるのは、通販が日々の楽しみになっているケースです。外出の機会が減ったり、人と話す機会が少なくなったりすると、テレビ通販やカタログを見る時間が、生活の中の大きな刺激になることがあります。
商品を選ぶ、注文する、届くのを待つ、箱を開ける。こうした流れそのものが楽しみになっている場合、家族が急に「やめて」と言っても、本人にとっては大切な楽しみを奪われるように感じてしまいます。
また、「今だけ」「限定」「特別価格」「残りわずか」といった言葉に気持ちが動きやすいこともあります。通販番組やカタログは、商品が魅力的に見えるように作られているため、必要性を冷静に判断する前に「買っておいたほうがいい」と感じてしまうことがあります。
さらに、年齢を重ねることで、金銭感覚や判断力に変化が出ている場合もあります。以前は慎重だった方でも、同じような商品を何度も買ってしまう、使わないものを買い続ける、支払いの総額を把握できていないといった変化が見られることがあります。
認知症の初期症状として、買ったことを忘れる、同じ商品を何度も注文する、支払いの管理が難しくなることもあります。単なる浪費ではなく、認知機能の変化が関係している可能性もあるため、様子をよく見ることが大切です。
「通販をやめて」と強く言う前に確認したいこと
高齢の親の買い物が心配になると、つい「また買ったの?」「こんなもの必要ないでしょ」と言いたくなることがあります。
しかし、最初から否定してしまうと、本人は責められたように感じてしまいます。親にとっては、自分で選んで買うことが「まだ自分で決められる」という自信につながっている場合もあります。
まずは、買ったものを責めるのではなく、理由を聞くことから始めましょう。
「これ、何に使う予定だったの?」
「どこが良さそうだと思ったの?」
「最近、同じようなものを買っていないかな?」
「毎月どのくらい通販を使っているか、一緒に見てみない?」
このように、問いかける形にすると、本人も話しやすくなります。
大切なのは、「買ったこと」を責めるのではなく、「これから安心して暮らすために、一緒に確認したい」という伝え方をすることです。
たとえば、次のような言い方ができます。
「お母さんのお金だからこそ、大事に使えるように一緒に整理したい」
「必要なものまで全部やめようと言っているわけではないよ」
「使っていないものが増えると、転倒も心配だから一緒に見直そう」
「これからの生活費や介護費用もあるから、月にどのくらい使うか決めておこう」
本人の尊厳を守りながら、生活の安全やお金の不安について一緒に考える姿勢が大切です。
買い物履歴や支払いを「見える化」する
通販の買いすぎを防ぐには、まず「どのくらい買っているのか」を見える化することが大切です。
高齢の方の中には、毎月の購入額や支払い回数を正確に把握できていない方もいます。1回あたりの金額はそれほど高くなくても、何度も注文しているうちに、月の支出が大きくなっていることがあります。
まずは、通販の明細書、カタログの注文控え、クレジットカードの利用明細、代引きの領収書、銀行口座の引き落とし履歴などを一緒に確認してみましょう。
その際も、「こんなに使っているじゃない」と責めるのではなく、表やノートにまとめながら、本人が自分で気づけるようにすることが大切です。
たとえば、次のような項目をメモしておくと分かりやすくなります。
・購入日
・購入した商品
・金額
・支払い方法
・実際に使っているか
・同じような商品がないか
使っていない商品が多い場合は、部屋の中を一緒に確認するのも有効です。未開封の段ボールや、同じような健康食品、寝具、調理器具などがいくつも出てくると、本人も「少し買いすぎていたかもしれない」と気づきやすくなります。
見える化の目的は、本人を責めることではありません。今の状況を一緒に確認し、今後どう買い物をしていくかを話し合うための材料にすることです。
通販を完全に禁止するより「ルール」を決める
通販をやめさせたいと思っても、いきなり完全に禁止するのは難しい場合があります。
特に、本人にとって通販が楽しみになっている場合、急に取り上げると強い反発や不安につながることがあります。そのため、まずは「買ってよい範囲」や「相談するルール」を決めることから始めるとよいでしょう。
たとえば、次のようなルールがあります。
・月に使う金額の上限を決める
・同じ種類の商品は追加で買わない
・1万円以上の商品は家族に相談してから買う
・健康食品や定期購入はすぐに申し込まない
・買う前に一晩考える
・カタログを見ても、注文は週1回にする
・使っていないものがある場合は、新しく買う前に整理する
ポイントは、家族が一方的に決めるのではなく、本人と一緒に決めることです。
「これからは絶対に買わないで」ではなく、「本当に必要なものは買えるようにしながら、買いすぎない方法を一緒に考えよう」と伝えると、受け入れてもらいやすくなります。
また、定期購入には注意が必要です。健康食品やサプリメント、化粧品などでは、初回価格が安く見えても、継続購入が条件になっている場合があります。申し込む前に、定期購入なのか、解約方法はどうなっているのか、次回以降の金額はいくらなのかを確認しましょう。
国民生活センターも、テレビショッピングでは電話口で商品内容を確認すること、返品・解約条件を確認すること、意図せず定期購入になっていないか確認することを呼びかけています。
通販のきっかけを減らす工夫も大切
通販を減らすには、本人の意思だけに頼るのではなく、買いすぎにつながるきっかけを減らすことも大切です。
たとえば、カタログ通販がきっかけになっている場合は、不要なカタログの送付停止を申し込む方法があります。本人が納得している場合は、家族が手続き方法を調べ、一緒に連絡してあげるとよいでしょう。
テレビ通販を長時間見てしまう場合は、視聴する時間を減らす工夫も考えられます。別の番組を録画して一緒に見る、散歩や買い物の時間をつくる、食後の時間に電話をするなど、通販番組を見る時間を自然に減らす方法もあります。
インターネット通販を利用している場合は、スマートフォンやタブレットの購入設定を確認しましょう。クレジットカード情報が保存されていると、簡単に注文できてしまうため、決済方法を見直すこともあります。
ただし、本人に無断で設定を変えたり、カードを取り上げたりすると、信頼関係が崩れることがあります。緊急性が高い場合を除き、できるだけ本人に説明し、納得を得ながら進めることが大切です。
通販以外の楽しみを増やす
通販を減らすためには、「買わないで」と言うだけでなく、代わりになる楽しみを増やすことも大切です。
高齢の方が通販に頼ってしまう背景には、寂しさ、退屈、外出機会の減少、人との会話の少なさがある場合があります。商品そのものよりも、選ぶ時間や届く楽しみが生活の刺激になっていることもあります。
そのため、通販を減らしたい場合は、別の楽しみや予定を一緒に考えてみましょう。
たとえば、次のような方法があります。
・一緒にスーパーや商店街へ行く
・月に1回、買い物の日を決める
・デイサービスや地域サロンに参加する
・手芸、園芸、料理などの趣味を再開する
・家族と電話する時間を決める
・不要なものを整理して、部屋をすっきりさせる
・使っていないものを誰かに譲る
「通販をやめる」ことだけを目標にすると、本人にとっては楽しみを奪われる感覚になりやすいものです。代わりに、人と会う機会や外に出る機会、役割を持てる時間を増やすことで、通販への関心が少しずつ薄れることがあります。
認知症や金銭管理の不安がある場合は専門機関へ相談を
通販の買いすぎが続いている場合、単なる買い物好きではなく、認知症や判断力の低下が関係していることもあります。
次のような様子がある場合は、早めに専門機関へ相談しましょう。
・同じ商品を何度も買っている
・買ったことを覚えていない
・支払い状況を把握できていない
・請求書や督促状が届いている
・定期購入を解約できず困っている
・家の中が物であふれ、生活に支障が出ている
・注意すると強く怒る、話し合いができない
・生活費や介護費用に影響が出ている
まず相談しやすいのは、地域包括支援センターやケアマネジャーです。生活の様子や認知症の可能性、介護サービスの利用、見守り体制について相談できます。
通販トラブルや契約トラブルがある場合は、消費生活センターに相談する方法もあります。消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの消費生活センターなどにつながります。
また、判断能力の低下により金銭管理が難しくなっている場合は、日常生活自立支援事業や成年後見制度を検討することもあります。日常生活自立支援事業は、認知症高齢者など判断能力が不十分な方が地域で自立した生活を送れるよう、福祉サービスの利用援助などを行う制度です。
家族だけで解決しようとすると、感情的なぶつかり合いになりやすいものです。買い物やお金の管理に不安がある場合は、早めに第三者へ相談しましょう。
まとめ:通販をやめさせるより、買いすぎを防ぐ仕組みを作ろう
高齢の親が通販を頻繁に利用していると、家族としてはお金のことや部屋の片付けが心配になります。
しかし、通販は本人にとって、楽しみや気分転換、寂しさを埋める手段になっている場合があります。そのため、頭ごなしに「やめて」と言うだけでは、反発を招いてしまうことがあります。
まずは、なぜ買っているのか、どのくらい使っているのか、同じものを何度も買っていないかを一緒に確認しましょう。そのうえで、月の予算を決める、高額商品は相談してから買う、カタログの送付を止める、定期購入を見直すなど、買いすぎを防ぐ仕組みを作ることが大切です。
また、通販を減らすには、代わりになる楽しみや人との関わりを増やすことも大切です。買い物に一緒に出かける、趣味を再開する、地域の集まりに参加するなど、生活の中に別の楽しみを増やしていきましょう。
買ったことを忘れる、支払いが管理できない、同じ商品を何度も注文するなどの変化がある場合は、認知症や判断力の低下が関係している可能性もあります。その場合は、地域包括支援センター、ケアマネジャー、消費生活センターなどに早めに相談してください。
通販を完全にやめさせることだけが解決ではありません。本人の気持ちを尊重しながら、家族と専門職が協力して、安心して暮らせる環境を整えていくことが大切です。