【介護疲れチェックシート】介護疲れは誰に相談すればいいの?限界になる前に対策しよう

近年、高齢化社会の進行に伴い、多くの家庭で介護が必要とされています。しかし、長期間にわたる介護は、介護者にとって大きな負担となり得ます。介護疲れとは、こうした肉体的・精神的な負担が積み重なり、心身に影響を及ぼす状態を指します。

介護を続ける中で、生活の自由が制限されたり、ストレスが増大したりすることは少なくありません。介護者自身の健康や精神状態を守るためにも、介護疲れの原因や対策を知り、適切なケアを取り入れることが大切です。

介護疲れとは?

介護疲れとは、長期間にわたる介護による肉体的・精神的な負担が蓄積し、疲労やストレスが極度に高まった状態を指します。介護者は家族や施設での介護を行う中で、日常の生活が制限されることが多く、自身の健康や精神状態に大きな影響を受けることがあります。

介護疲れをしていないかチェックリストを使って確認してみよう

□体が常にだるく、休んでも疲れが取れないと感じる
□寝不足や睡眠の質が悪い
□頭痛や腰痛、肩こりなどが頻繁に起こる
□介護をしているときにイライラや怒りが増えてきた
□涙が出ることが増え、感情をうまくコントロールできない
□介護に対して嫌悪感を感じることがある
□不安感や焦り、絶望感を感じる
□介護をしている自分に対して自己嫌悪を感じる
□何をしても楽しく感じられず、楽しみを見つけられない
□介護に追われて、友人や家族と連絡を取る時間が減った
□外出する機会が減り、孤独を感じることが多い
□介護の負担を周りに理解してもらえないと感じる
□食事をきちんと取ることが難しく、栄養が偏っている
□健康管理が後回しになり、体調不良が続く
□ストレスが原因で体重が増えたり減ったりしている
□介護が自分の生活全般に影響を及ぼしていると感じる
□他の家庭の用事や仕事、プライベートの時間が取れない
□介護の仕事が重荷に感じ、逃げ出したくなることがある
□介護に対するモチベーションが低くなり、無気力になっている
□介護に向き合うエネルギーが出ない
□介護の成果を実感できず、どうしても疲れが募る

チェックが3つ以上・・・介護疲れが進んでいる可能性があります。自分一人で抱え込まず、専門家やサポート機関に相談することをお勧めします。

チェックが10以上・・・介護疲れの兆候が見られます。早めにストレスを軽減する方法を試してみましょう。休息やリフレッシュが大切です。

介護疲れの主な原因

身体的な負担

介護は体力を必要とする作業が多く、特に食事や入浴の介助、排泄の補助などは負担が大きいものです。また、長時間の抱え上げや移動の補助により、腰痛や関節痛などの健康問題を引き起こすことも少なくありません。

精神的なストレス

介護が長期間に及ぶと、孤独感や焦燥感が増し、うつ状態に陥ることもあります。また、被介護者の病状が悪化したり、感情的な衝突が増えたりすることで、精神的な負担がさらに大きくなることもあります。

経済的な負担

介護には医療費や介護用品の購入費用がかかるため、経済的な負担も無視できません。仕事を続けながら介護をすることが難しくなり、収入が減少することで家計の不安が増すケースもあります。

社会とのつながりの減少

介護に専念することで、友人や知人との交流が減り、社会的孤立を感じやすくなります。特に介護が長期化すると、外出の機会が減り、孤立感が深まることで精神的な健康にも影響を及ぼすことがあります。

介護疲れが蓄積すると・・・

介護疲れが蓄積すると、心身にさまざまな影響が現れます。放置すると、介護者自身の健康が損なわれるだけでなく、介護そのものが難しくなることもあります。以下のような症状や問題が起こる可能性があるため、早めに対策をとることが大切です。

1. 身体的な影響

 慢性的な疲労や睡眠不足

介護の負担が大きくなると、十分な休息が取れず、常に疲労感が抜けない。
夜間の介助が必要な場合は、睡眠が分断され、体力の回復が追いつかなくなる。

頭痛・肩こり・腰痛の悪化

抱え上げや移動の補助などの身体的負担が増え、筋肉疲労や関節痛を引き起こす。
長時間同じ姿勢を続けることで、血行が悪くなり、慢性的な痛みにつながる。

免疫力の低下

ストレスや睡眠不足により、風邪をひきやすくなったり、病気にかかりやすくなる。
持病(高血圧・糖尿病など)の悪化につながることもある。

2. 精神的な影響

イライラしやすくなる

余裕がなくなり、ちょっとしたことで怒りやすくなる。
介護される側に対しても、冷たい態度をとってしまうことが増える。

孤独感や喪失感

介護に時間を取られ、友人との交流や趣味の時間がなくなる。
「自分の人生がなくなった」と感じ、無力感や虚しさを覚えることもある。

うつ症状の出現

気分が落ち込み、何をしても楽しくない状態が続く。
食欲の低下、無気力、不眠などが現れる。

介護への嫌悪感や拒否反応

「もう介護なんてやりたくない」と強く思うようになり、介護を避けたくなる。
最悪の場合、介護放棄(ネグレクト)や虐待につながる可能性もある。

3. 社会的な影響

仕事や家事への影響

介護と仕事の両立が難しくなり、遅刻・欠勤が増える。
集中力が低下し、仕事のミスが増える。
家事がおろそかになり、生活環境が悪化する。

人間関係の悪化

介護の負担が大きくなり、家族や友人に対してもストレスをぶつけてしまう。
「誰も助けてくれない」という不満が募り、周囲との関係がぎくしゃくする。

経済的な負担の増大

介護にかかる費用が増え、家計が圧迫される。
仕事を辞めざるを得なくなり、収入が減少する。

4. 最悪のケース

介護うつ・介護離職・介護破綻

介護ストレスが限界に達し、精神的にも経済的にも追い詰められる。
仕事を辞めざるを得なくなり、収入が途絶える。
介護疲れから、本人の健康状態も悪化する。

介護虐待のリスク

介護者のストレスが限界を超えると、感情のコントロールができなくなり、暴言や暴力に発展することもある。
特に「自分ばかりが負担を背負っている」と感じると、怒りや不満が爆発しやすい。

共倒れの危険性

介護者自身が心身を壊してしまい、介護を続けることができなくなる。
最悪の場合、介護者と被介護者の両方が健康を失い、共倒れになってしまう。

増加する高齢者への虐待—家族による虐待が9割超に

介護疲れが限界になることで起こる大きな問題の1つが虐待です。

近年、日本では高齢者への虐待が深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査によると、令和5年度に確認された高齢者虐待の件数は1万8223件と過去最多を記録しました。

特に93.8%(1万7100件)が家族や親族によるものであり、家庭内での虐待が大きな問題となっています。

高齢者虐待の実態—どのような虐待が多いのか?

高齢者虐待は様々な形で発生しており、主な種類として以下のものがあります。

身体的虐待(65.1%)

殴る、蹴る、強く押さえつけるなど、身体に直接的な暴力を加える行為。
長期間続くことで高齢者の健康や命に危険を及ぼすケースも。

心理的虐待(38.3%)

罵倒する、無視する、脅すなど、精神的な苦痛を与える行為。
高齢者の自尊心を傷つけ、抑うつ状態を引き起こすこともある。

ネグレクト(19.4%)

食事や入浴をさせない、薬を与えない、必要な介護を怠るなど、放置する行為。
適切な世話が受けられず、健康状態が悪化するケースが多い。

虐待を行うのは誰か?

高齢者虐待を行う加害者の多くは、実の家族です。統計によると、虐待を行ったのは息子が最も多く(38.7%)、次いで夫(22.8%)、娘(18.9%)、妻(7.6%)という結果でした。

親の介護を担うことが多い中高年の子どもや、配偶者が加害者になるケースが多く、介護ストレスが背景にあることがうかがえます。

虐待が発生する主な原因

高齢者虐待が起こる背景には、さまざまな要因が絡み合っています。

認知症の症状(56.4%)

認知症のある高齢者は、徘徊や暴言・暴力などの行動が見られることがあり、介護者が対応に苦慮するケースが多い。

介護疲れ・介護ストレス(54.8%)

長期間の介護による肉体的・精神的疲労が蓄積し、虐待につながることがある。

介護する側の知識・理解不足(47.7%)

認知症や高齢者の介護に関する適切な知識が不足し、対応に困るうちに虐待に発展してしまう。
また、虐待が深刻な家庭ほど介護保険サービスを利用していない傾向があり、適切な支援を受けられないまま追い詰められてしまうケースが多いと指摘されています。

そして虐待がいきすぎると・・・

介護疲れが引き起こす悲劇—事件に発展する危険性とは

日本では高齢化が進み、多くの家庭で介護が必要となる中、「介護疲れ」が原因とされる悲劇的な事件が後を絶ちません。

2021年までの10年間で、介護疲れや将来への悲観が背景にある親族間の殺人や無理心中事件は全国で少なくとも437件発生し、死者は443人に上ることが判明しました。

これは、平均すると8日に1件のペースで発生している計算になります。

なぜ介護疲れが事件につながるのか?

1. 身体的・精神的な限界

介護は長時間にわたり、肉体的にも精神的にも負担が大きいものです。特に認知症の高齢者を介護する場合、夜間の徘徊や暴言・暴力への対応が必要になり、介護者の睡眠不足やストレスが深刻化します。その結果、精神的に追い詰められ、感情が爆発することがあります。

2. 経済的な困窮

介護には医療費や生活費がかかり、働きながら介護を続けることが難しくなるケースも少なくありません。収入が減り、将来への不安が募ることで、希望を失ってしまうこともあります。

3. 社会的孤立

介護に専念するあまり、仕事を辞めたり、友人との交流が減ったりして、社会とのつながりが希薄になります。悩みを相談できる相手がいないと、「自分だけが苦しんでいる」と感じ、追い詰められることになります。

4. 介護制度への不安

介護保険サービスを利用しても、十分な支援を受けられない場合があります。また、要介護者が施設入所を拒否したり、家族の意向と合わなかったりすることもあり、介護者がすべてを背負い込んでしまうケースもあります。

実際に起きている介護事件

ケース1

2024年9月29日、福井市江尻ヶ丘町の自宅で、60歳の沖田美奈子容疑者が実母・山下弘子さん(84)の首を絞めて殺害したとして、殺人の疑いで逮捕されました。

沖田容疑者は両親と夫、娘の5人で暮らしており、山下さんは少なくとも15年以上前から同居し、週に数回デイサービスを利用していました。

近隣住民の話によると、山下さんは認知症を患っていたとされ、「介護疲れ」が事件の背景にある可能性も指摘されています。

ケース2

2022年8月、東京・葛飾区で92歳の母親の首を絞めて殺害した。

前原被告はかつてフレンチシェフとして活躍していたが、母親のガンや脳梗塞を機に仕事を辞め、介護に専念することに。母親は要介護5の重度認知症で、訪問介護を利用しながらも、たんの吸引やインスリン注射など高度な介護を担っていた。

収入源は母親の年金のみで、生活費が常に不足。借金を重ね、自宅をリースバックするも、家賃や支払いに追われる日々が続いた。事件当時の債務残高は369万円、預貯金は4014円、所持金は100円以下と経済的に追い詰められていた。

 

高齢者虐待、介護事件は増加傾向にあり、特に家族による虐待が深刻な問題となっています。

介護疲れや認知症への対応に困った結果、虐待・事件に発展するケースが多いため、介護者が無理をせず、適切な支援を受けることが重要です。

一人で抱え込まず、介護サービスや周囲の協力を得ながら、介護者自身の心身の健康を守ることが、高齢者を守ることにもつながります。

自治体の相談窓口や専門機関を活用し、虐待を防ぐための取り組みを進めていくことが求められています。

介護疲れしやすい人が良く言う言葉

介護をしていると、無意識のうちにストレスを増大させる言葉を使ってしまうことがあります。以下のような言葉は、介護疲れをしやすい状況を生み出しやすいので、意識して避けるか、前向きな表現に言い換えることが大切です。

「私がやらなきゃ」

責任を一人で抱え込んでしまいがちになる。

言い換え:「みんなで協力してやろう」「できる範囲で頑張ろう」

「こんなに頑張っているのに…」

頑張りすぎて報われないと感じると、自己犠牲感が強くなる。

言い換え:「少し休みながら続けよう」「周りに頼ってもいいんだ」

「どうしてこんなこともできないの?」

介護される側を責めるような言葉は、罪悪感やストレスを生む。

言い換え:「今日は調子が良くないのかな」「ゆっくり一緒にやろう」

「もう限界」

心が追い詰められているサイン。自分の負担を意識するきっかけにはなるが、そのままにすると心身ともに疲弊しやすい。

言い換え:「少し休憩しよう」「助けを求めても大丈夫」

「私のせいで…」

介護が思うように進まないと、自責の念に駆られやすい。

言い換え:「できることを精一杯やっている」「完璧じゃなくても大丈夫」

言葉を変えるだけで気持ちが楽になる

言葉の使い方ひとつで、ストレスの感じ方が変わることもあります。無意識に追い詰める言葉を使っていないか振り返り、前向きな表現を意識することで、介護疲れを軽減できるかもしれません。

介護をしていて言われたら困る言葉

介護をしていると、親(被介護者)からの言葉にストレスを感じることもあります。特に以下のような言葉は、介護者にとって負担になりやすいものです。

介護者がストレスを感じやすい言葉

「こんなこともできないの?」

介護を頑張っているのに、能力を否定されるような言葉は大きなストレスになる。

気持ちの切り替え:「親も不安でイライラしているのかもしれない」と客観的に捉える。

「昔はもっと優しかったのに」

介護に疲れて余裕がなくなったときに言われると、罪悪感を感じやすい。

対処法:「私も頑張ってるよ」と素直に気持ちを伝えるのも大切。

「早く○○して!」

介護は時間がかかるものなのに、急かされるとプレッシャーになる。

対処法:「できるだけ急ぐけど、ちょっと待ってね」と落ち着いて対応する。

「私のことなんてどうでもいいんでしょ」

介護をしているのに、ないがしろにしていると言われると悲しくなる。

対処法:「そんなことないよ」と安心させつつ、自分の気持ちも伝える。

「あの人の家はもっと良くしてもらってる」

他の家と比較されると、「これ以上どうすればいいの?」と悩んでしまう。

対処法:「それぞれの家庭でできることは違うよ」と冷静に返す。

「私なんていないほうがいいよね」

被介護者の気持ちが弱っているときに出る言葉だが、介護者も精神的に追い詰められる。

対処法:「そんなこと言わないで、一緒に頑張ろう」と寄り添う。

「もっと感謝してほしい」

「やって当たり前」と思われると、モチベーションが下がる。

対処法:「私も精一杯やってるよ」と、感情を抑え込まずに伝える。

ストレスを減らすために

被介護者も不安や苛立ちからきつい言葉を発することがありますが、すべてを真に受けず、適度に受け流すことも大切です。また、あまりにストレスが溜まる場合は、周囲に相談したり、介護サービスを活用することを考えましょう。

介護の相談をするなら

介護疲れに関する相談は、いくつかの選択肢があります。以下のような場所に相談をすることができます:

地域の福祉事務所

地元の市区町村には、介護に関する相談を受け付ける福祉事務所があります。専門の相談員が、介護に関する悩みや問題に対応してくれる場合があります。

介護相談センター(地域包括支援センター)

地域包括支援センターは、高齢者やその家族向けに、介護の悩みや生活支援についての相談を行っています。地域ごとに設置されているので、近くのセンターに相談してみると良いでしょう。

ケアマネージャー(介護支援専門員)

ケアマネージャーは、介護サービスの利用や生活支援を計画する専門家です。ケアマネージャーに相談することで、適切な介護サービスの提供や、ストレスの軽減方法についてアドバイスをもらえます。

精神的なサポートを求める場合

介護疲れによって精神的に辛い場合は、メンタルヘルスの専門家(心理カウンセラーや精神科医)に相談することも有効です。カウンセリングを通じて、心のケアを受けることができます。

介護者サポートグループ

他の介護者と交流し、情報交換やサポートを受けることも助けになります。介護者サポートグループは、オンラインや地域のコミュニティセンターなどで見つけることができます。

これらの窓口を活用し、無理なくサポートを受けながら、少しでも介護の負担を軽減できる方法を見つけていけるのが望ましいですね。