親の介護費用は親の口座から出すもの?支払い方法と家族が注意したいポイント

 

ご相談者

親の介護が必要になり、介護サービスや通院、介護用品などの費用がかかるようになりました。

今は家族が立て替えているものもありますが、これから施設入居や在宅サービスの利用が増えると、金額も大きくなりそうで不安です。

親には年金や預貯金があります。この場合、介護費用は親の口座から支払うものなのでしょうか。それとも、子どもが負担するべきなのでしょうか。

また、親が高齢で銀行手続きが難しくなってきているため、家族が通帳やキャッシュカードを預かって支払ってもよいのかも気になります。あとで兄弟姉妹との間でトラブルにならないよう、注意点も知りたいです。

ご相談ありがとうございます。

親の介護費用は、基本的には「介護を受ける本人のための費用」です。そのため、親に年金や預貯金などの資産がある場合は、親本人の口座から支払うことが一般的です。

介護サービスの利用料、医療費、施設費、介護用品代、日用品代などは、親本人の生活や介護のために必要なお金です。子どもが必ずすべてを負担しなければならないわけではありません。

ただし、親の口座から支払う場合でも、家族が自由にお金を引き出してよいわけではありません。親の預貯金は、あくまで親本人の財産です。家族が管理する場合は、本人の意思確認、支払いの記録、他の家族への共有がとても大切になります。

特に、親に認知症がある場合や判断能力が低下している場合は、銀行での手続きが難しくなることがあります。本人の意思確認ができないと、預金の引き出しや定期預金の解約、振込などに制限がかかる場合もあります。

この記事では、親の介護費用は誰が払うのか、親の口座から支払うときの注意点、家族が立て替える場合の記録方法、成年後見制度などの財産管理の方法についてわかりやすく解説します。

親の介護費用は、基本的には親本人の資産から支払う

親の介護費用は、原則として介護を受ける親本人の収入や資産から支払うと考えるのが自然です。

親に年金収入や預貯金がある場合は、まずそこから介護費用をまかなうことが多いでしょう。介護サービスの利用料、デイサービス、訪問介護、ショートステイ、施設入居費、医療費、薬代、介護用品代などは、親本人の生活を支えるための費用だからです。

介護保険サービスを利用する場合、自己負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割負担になります。また、介護保険施設を利用する場合は、介護サービス費の自己負担のほか、居住費、食費、日常生活費なども必要になります。

そのため、介護が長く続くと、毎月の支出は少しずつ大きくなります。親の年金だけで足りるのか、預貯金をどのくらい使う必要があるのか、早めに確認しておくことが大切です。

一方で、親の資産だけでは足りない場合や、一時的に家族が立て替える場合もあります。その場合は、誰がどの費用を負担するのか、兄弟姉妹でどのように分担するのかを話し合っておくと安心です。

親の口座から支払うときの注意点

親の口座から介護費用を支払うこと自体は、親本人のための支出であれば自然なことです。

ただし、家族が親の通帳やキャッシュカードを預かり、自由に引き出して使う場合は注意が必要です。親のお金は、子どもや配偶者のものではなく、あくまで親本人の財産です。

たとえ介護費用として使っていても、記録が残っていなかったり、他の家族に説明していなかったりすると、後からトラブルになることがあります。

たとえば、親が亡くなった後に通帳を確認した兄弟姉妹から、

「この引き出しは何に使ったの?」
「本当に親のために使ったの?」
「一部を自分の生活費に使ったのでは?」

と疑われてしまうことがあります。

こうしたトラブルを防ぐためにも、親の口座から支払った場合は、必ず記録を残しましょう。

記録しておきたい内容は、次のようなものです。

・引き出した日付
・引き出した金額
・支払った内容
・支払先
・領収書や請求書
・振込明細
・残金の管理方法

できれば、現金で引き出して支払うよりも、介護事業所、病院、施設などへ直接振り込むほうが、使い道が明確になります。振込記録が残るため、後から説明しやすくなります。

親の判断能力があるうちに話し合っておく

親がまだ自分で判断できる状態であれば、介護費用の支払いについて早めに話し合っておくことが大切です。

「介護が必要になったら、どの口座から支払うのか」
「通帳や印鑑、キャッシュカードは誰が管理するのか」
「施設入居が必要になった場合、どの程度まで費用を使ってよいのか」
「子どもが立て替えた場合、どのように精算するのか」

このようなことを、できるだけ本人の意思を確認しながら決めておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

親本人が元気なうちは、お金の話を切り出しにくいかもしれません。しかし、認知症や入院などで急に本人確認が難しくなると、銀行手続きや施設契約で困ることがあります。

本人の判断能力があるうちであれば、金融機関の代理人手続きや任意後見契約などを検討できる場合もあります。任意後見制度は、本人がひとりで決められるうちに、将来に備えて、信頼できる人に代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。

介護は突然始まることもあります。お金の管理についても、できるだけ早めに家族で話し合っておきましょう。

認知症などで判断能力が低下した場合はどうする?

親が認知症などで判断能力が低下している場合、親の口座から介護費用を支払う手続きが難しくなることがあります。

銀行では、預金の引き出しや定期預金の解約、振込などを行う際に、本人の意思確認が求められることがあります。本人が手続きの内容を理解できない、意思確認が難しいと判断されると、家族であっても手続きができない場合があります。

このような場合に検討されるのが、成年後見制度です。

成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分な方を保護し、支援するための制度です。法務省も、判断能力が不十分な方が預貯金などの財産管理や、介護サービス・施設入所の契約を自分で行うことが難しい場合に、本人を保護・支援する制度として説明しています。

成年後見人が選ばれると、本人の財産を管理し、介護費用や医療費、施設費など、本人のために必要な支払いを行うことができます。金融機関では、成年後見人が口座を管理するための手続きが必要になります。

ただし、成年後見制度は、家族が親のお金を自由に使えるようにする制度ではありません。成年後見人は、本人の利益のために財産を管理し、家庭裁判所への報告なども必要になります。専門職が後見人に選ばれた場合は、報酬が発生することもあります。

必要かどうか迷う場合は、地域包括支援センター、社会福祉協議会、家庭裁判所、司法書士や弁護士などに相談しましょう。

家族が介護費用を立て替える場合の注意点

親の口座からすぐに支払えない場合や、急な通院・入院などで家族が一時的に立て替えることもあります。

その場合も、必ず記録を残しておくことが大切です。

たとえば、次のような費用を家族が立て替えることがあります。

・介護サービスの利用料
・病院の診療費
・薬代
・介護用品代
・おむつ代
・交通費
・施設の入居準備費
・日用品費

立て替えた費用を後で親の口座から精算する場合は、領収書やレシートを保管し、何に使った費用なのか分かるようにしておきましょう。

兄弟姉妹がいる場合は、介護費用の負担や立て替えについて早めに共有することも重要です。ひとりの子どもだけが費用を負担していると、後から不公平感が出ることがあります。

可能であれば、介護費用用のノートや表を作り、支出をまとめておくと便利です。

記録しておく項目は、次のようなものです。

・支払日
・支払内容
・金額
・支払った人
・親の口座から精算したかどうか
・領収書の有無

家族間のお金の問題は、後から大きなトラブルになりやすい部分です。「家族だから分かってくれるだろう」と思わず、記録と共有を意識しましょう。

介護保険や公的支援も確認する

介護費用を考えるときは、親の口座から支払うことだけでなく、介護保険や公的支援を活用できるかも確認しましょう。

介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。認定を受けると、要介護度に応じた支給限度額の範囲内で、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与などのサービスを利用できます。

自己負担は原則1割ですが、所得によって2割または3割になる場合があります。支給限度額を超えてサービスを利用した場合、その超過分は全額自己負担になります。

また、所得が低い方や、1か月の利用者負担が高額になった方には、負担軽減制度が用意されている場合があります。施設入居を検討している場合は、居住費や食費の負担軽減制度が使えるかどうかも確認しましょう。

詳しくは、ケアマネジャー、市区町村の介護保険窓口、地域包括支援センターに相談すると安心です。

まとめ:親の介護費用は親の資産を使うのが基本。ただし記録と手続きが大切

親の介護費用は、基本的には介護を受ける親本人の年金や預貯金から支払うことが一般的です。介護サービス費、医療費、施設費、介護用品代などは、親本人の生活を支えるための費用だからです。

ただし、親の口座から支払う場合でも、家族が自由に引き出してよいわけではありません。親の預貯金は親本人の財産であり、本人の意思確認や適切な手続きが必要です。

親の通帳やキャッシュカードを家族が管理する場合は、いつ、いくら使ったのか、何に支払ったのかを必ず記録しておきましょう。領収書、請求書、振込明細を残しておくことで、兄弟姉妹とのトラブルや相続時の疑いを防ぎやすくなります。

親が認知症などで判断能力が低下している場合は、銀行手続きが難しくなることがあります。その場合は、取引銀行に相談したり、必要に応じて成年後見制度を検討したりすることが大切です。

介護費用は、長く続くほど家族の負担も大きくなります。親の資産状況、介護保険サービス、公的支援、家族の分担を早めに確認し、無理のない形で支払い方法を整えていきましょう。

執筆者

この記事の執筆者
清水 健児

バディファミリーサービス / 生活サポートアドバイザー

バディファミリーサービス所属。
高齢者の生活支援や介護保険外サービスの相談に多数対応。

外出サポート、買い物同行、施設探しなど、
家族だけでは難しい生活支援のサポートを行っている。

現在は地域サロンの運営や、
高齢者と家族を支える生活支援サービスの普及活動にも取り組んでいます。