
増える「遠距離介護」—“帰省介護”が日常になりつつある
離れて暮らす親のもとへ、月に数回帰省して病院の付き添いや手続きを行う——。
いま、多くの人がそんな“遠距離介護”を日常的に続けています。
介護ポストセブンの調査によると、約2割が遠距離介護を経験し、9割以上が不安や悩みを抱えているという結果に。
背景には、親の高齢化だけでなく、子世代の就労や家庭事情から「同居できない」「通うしかない」現実があります。
新幹線や在来線を乗り継ぎ、片道2時間以上をかけて親のもとへ向かう。
その移動にかかる交通費・時間・体力は想像以上で、帰省介護が“もうひとつの仕事”になっている人も少なくありません。
そうした遠距離介護にかかる費用のシミュレーションと、負担を軽くする新しい選択肢——保険外介護サービスの活用法を紹介します。
データで見る遠距離介護の現実

(引用:介護ポストセブン「遠距離介護の調査レポート」より)
「親の介護をどうするか」――その問いに、明確な答えを出せないまま時間だけが過ぎていく。
高齢の親と離れて暮らす人の多くが、そうした“もやもや”を抱えながら日々を過ごしています。
介護ポストセブンが2024年に公開した調査(N.K.Cナーシングコアコーポレーション実施)によると、介護経験者のうち約2割が「遠距離介護(片道2時間以上)」を行っていると回答しました。
また、約8割が要介護者と別居していることも明らかになり、
親と離れて暮らすことがいまや特別ではなく「ふつうの介護スタイル」になりつつある現実が浮かび上がりました。
さらに、遠距離介護者の通う頻度を尋ねた結果では、
-
「月3〜4回」が31.4%
-
「月1〜2回」が26.2%
-
「月5回以上」が19.9%
と、半数以上が“月に複数回”実家へ通っていることがわかります。
つまり、単なる“年数回の帰省”ではなく、継続的に往復を繰り返す生活が当たり前になっているのです。
9割以上が「不安や悩みを抱えている」
同調査では、遠距離介護を経験した人の91%が介護に関して不安や悩みを感じていると回答。
その内訳は、
-
「とても強い不安・悩みがある」…44.5%
-
「やや不安・悩みがある」…46.6%
という圧倒的な割合に上りました。
具体的な悩みとして挙がったのは、
-
「病院付き添いや手続きなど、定期的な帰省が負担」(46.5%)
-
「お金の問題」(39.6%)
-
「離れて暮らしているため、すぐに対応できない不安」(33.2%)
など。
つまり、多くの人が“移動”と“費用”、そして“すぐ行けない距離”という3重の負担を感じています。
遠距離介護が生活・仕事に与える影響
また、81.7%が「介護によって職場や家庭に影響が出ている」と回答。
その具体的な影響として、
-
「心身の疲労が溜まっている」(34.0%)
-
「働く時間が減り収入が減った」(32.7%)
-
「休暇が増え、昇進機会を逃した」(29.5%)
といった声が多く、介護によって生活全体が変化している実態が見えてきます。
一方で、「やる気はあるが、体力・気力が追いつかない」「サポートが欲しい」という回答も半数近くに上り、介護を続けたいという思いと、続けることの難しさの板挟みになっている人が多いことがわかります。
保険外サービスへの関心は6割以上
こうした状況のなか、「負担が減るなら保険外のサービスでも利用したい」と答えた人は61.8%にのぼりました。
特にニーズが高かったのは、
-
「有事の際の訪問対応」(43.5%)
-
「通院付き添い・入退院支援」(30.4%)
-
「掃除・洗濯・調理などの家事支援」(27.2%)
といった項目。
つまり、介護保険の枠ではカバーしきれない“すぐそばで支えてくれる存在”が求められているのです。
「通う介護」が“当たり前”になった時代へ
調査結果が示すのは、遠距離介護がもはや特殊なケースではないということ。
東京から片道2時間――電車1本で通える距離でも、実際には時間・お金・体力のすべてが消耗する現実があります。
それでも「親のそばにいたい」「自分で支えたい」と考える人が多いのは、日本の家族文化の象徴でもあります。
しかし、続けるためには「自分一人で抱え込まない」ことが不可欠。
次の章では、実際に月1〜5回の遠距離介護にかかる費用シミュレーションを見ながら、その負担を“数字”で確認していきましょう。
遠距離介護は実際にどのくらいお金と時間がかかる?

遠距離介護をしている人の多くは、「お金も時間も思っていたよりかかる」と感じています。
では実際に、東京から片道2時間ほど離れた場所(例:宇都宮・水戸・小田原・大月など)へ、在来線で通うケースを想定した場合、どのくらいの負担になるのでしょうか。
前提条件
-
移動手段:JR在来線・快速(新幹線・特急なし)
-
交通費(往復):約4,000円
-
現地での付き添い・買い物・手続き時間:4時間程度
-
食事や雑費:1,000円前後
-
合計拘束時間:往復+滞在で約8時間/回
この条件で算出した場合、1回の訪問にかかる実費はおおよそ5,000円前後。
これを月1〜5回の頻度で行った場合の費用を以下にまとめました。
月ごとのシミュレーション
| 月訪問回数 | 想定費用(交通+食事) | 拘束時間の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 月1回 | 約5,000円 | 約8時間 | 通院や手続きのみ対応するケース |
| 月2回 | 約10,000円 | 約16時間 | 通院+生活フォローなど |
| 月3回 | 約15,000円 | 約24時間 | 継続的な支援が必要な状態 |
| 月4回 | 約20,000円 | 約32時間 | 週1ペースで定期訪問 |
| 月5回 | 約25,000円 | 約40時間 | 実質的に“もうひとつの仕事”に近い負担 |
見えてくる「金額以上の負担」
一見すると金額だけなら月2万円前後で済みそうに見えますが、実際には時間と体力の消耗が最大の負担です。
1回の介護で8時間、月5回なら約40時間――これは一般的な会社員の「週1勤務分」に匹敵します。
また、交通費が高騰する繁忙期や、親の体調変化で急な帰省が必要になる場合、想定外の出費やスケジュール調整が発生します。
こうした「予測不能なコスト」こそ、遠距離介護を継続的に難しくしている大きな要因です。
目に見えないコストも
さらに、金銭面では表れない「見えないコスト」も存在します。
-
仕事を休む・早退することによる収入減少
-
長距離移動による体調悪化・ストレス
-
現地での買い物・食事・手土産などの小さな出費の積み重ね
-
「もっと行ってあげたいのに行けない」という心理的負担
こうした複合的な負担が積み重なり、結果的に介護を続ける意欲そのものを削いでしまうケースもあります。
現実を数字で捉えることが「第一歩」
「これくらいなら何とかなる」と始めても、実際に数字を積み上げていくと負担は想像以上。
介護を“続けられる形”にするためには、まずこの「見えにくいコスト」を把握することが大切です。
遠距離介護で最も大きい3つの負担

遠距離介護は、金銭的な出費以上に「時間」「体力」「精神面」に影響を及ぼします。
ここでは、実際の介護経験者の声やデータをもとに、負担の中でも特に大きい3つの要素を整理します。
1.交通・移動コスト
最も直接的な負担が「移動」に関するものです。
電車やバスの往復だけで1回4,000円前後、宿泊が加われば1万円を超えることもあります。
また、移動中の待ち時間や乗り換え、悪天候による遅延など、金額に換算できないストレスも積み重なります。
介護ポストセブンの調査でも、
「病院付き添いや手続きのための帰省が負担」と答えた人が46.5%と最多。
多くの人が「行く」こと自体に疲弊しており、これは単なる経済問題ではなく、「時間の奪われ方」「体力の消耗」といった生活全体の圧迫につながっています。
2.時間と体力の消耗
東京から2時間の距離を往復するだけで約4時間。
現地での付き添いや家事、手続きなどを含めると、1日ほぼ丸ごと介護に費やすことになります。
仕事を持つ人にとっては、休暇を取る、早退する、休日をすべて介護に充てる——そうした調整を続けるうちに、自分の生活リズムが崩れていくケースが多いのです。
調査では、
-
「心身の疲労が溜まっている」…34.0%
-
「働く時間が減り、収入が少なくなった」…32.7%
という結果も出ており、体力だけでなくキャリアにも影響を及ぼしています。
3.精神的なプレッシャー
もうひとつ見逃せないのが、「すぐ駆けつけられない距離」による心理的な不安です。
「何かあったらどうしよう」「電話が鳴るたびに胸がざわつく」——
そんな声が調査でも多く聞かれます。
介護ポストセブンの調査では、
9割以上が“介護への不安や悩み”を抱えていると回答。
とくに「離れて暮らしているため、何かあったときに対応できない」(33.2%)という項目は、遠距離介護に特有の“常時ストレス”を象徴しています。
この精神的負担は、次第に「自分を責める」「もっと行くべきでは」という罪悪感に変わり、結果として燃え尽きやうつ状態につながることも少なくありません。
遠距離介護を続けるうえで大切なのは、「自分の限界を知ること」です。
すべてを自分で抱え込むのではなく、交通・時間・精神のどこで一番負担が大きいかを客観的に把握する。
そして、その部分を外部サービスや地域の支援に委ねるという選択が、「無理をしない介護」の第一歩になります。
保険外介護サービスが注目される理由

「もう少し誰かに頼れたら——」
そう感じている人は少なくありません。
遠距離介護を続ける人の6割以上が“保険外サービスでも利用したい”と回答したという調査結果(介護ポストセブン/N.K.Cナーシングコアコーポレーション)からも、いま多くの家庭が“自分たちだけでは支えきれない現実”に直面していることが分かります。
なぜ「保険外サービス」なのか
介護保険では、利用できる時間・内容・回数に制限があります。
「掃除や買い物を少し頼みたい」「通院に付き添ってほしい」など、ちょっとした日常支援や外出同行は、保険対象外となることが多いのが実情です。
その一方で、保険外サービスは柔軟性の高さが特徴。
-
利用時間や頻度を自由に設定できる
-
必要なときだけスポット利用が可能
-
通院や手続きなど、保険外のニーズにも対応
-
写真付き報告やLINE連絡など、家族へのフィードバック機能がある
これらの点が、遠距離介護を行う家族にとって“現実的な助け”となっています。
利用者の声に多い3つのメリット
1.移動・時間の負担が減る
自分が毎回行かなくても、現地スタッフが同行や手続きを代行。
「月5回通っていたのを、今は月1回に減らせた」という利用者も。
2.親の安心が見える化する
訪問後に写真や報告が届くサービスなら、「ちゃんと見てもらえている」と家族も安心。
“距離の不安”が少しずつ軽くなる。
3.必要な支援だけを選べる
生活サポート・通院付き添い・見守りなど、目的に応じて選択可能。
“フル介護”ではなく、“生活を支える伴走者”として利用できる。
介護を“家族だけで抱えない時代”へ
遠距離介護の課題は、「頑張る人」が報われにくい構造にあります。
物理的な距離に加え、仕事・育児・自分の生活——。
そのすべてを背負い続けることは、どんなに強い人でも限界があります。
保険外介護サービスの活用は、単なる“外注”ではありません。
それは、家族の絆を長く続けるための「支え合いの仕組み」。
親にとっても、家族にとっても、安心して頼れる“もう一つの手”を持つことは、介護の継続性を守る大切な選択肢なのです。
実際に使える保険外介護サービス例
「保険外介護サービス」といっても、その内容や得意分野はさまざまです。
ここでは、全国的にも利用者が増えている5つのサービスを紹介します。
それぞれが得意とする支援領域や、遠距離介護との相性を見ていきましょう。
イチロウ

通院・買い物・外出同行などを柔軟に依頼できる地域密着型サービス。
介護保険では対応しづらい“日常のちょっとした支援”を、1時間単位で依頼できます。
オンラインで依頼・マッチングができ、比較的短時間のサポートにも対応。
-
対応内容:自宅内の介護、通院同行、買い物代行、見守り、清掃など
-
対応エリア:東京都、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、兵庫、京都
-
特徴:早朝夜間や最短当日からの利用も可能
ダスキン ライフケアサービス

https://www.duskin.jp/lifecare/
家事支援・生活サポートの専門ブランドとして長年の実績を持つサービス。
掃除・洗濯・調理といった日常支援に強みがあり、介護保険外でも安心して任せられます。
-
対応内容:掃除、洗濯、調理、話し相手、外出同行など
-
対応エリア:全国のうち24都道府県(訪問拠点が多く、地方対応も可能)
-
特徴:信頼性が高く、契約体系が明確
クラウドケア(CrowdCare)

サービスのバリエーションが豊富。スマホやPCから依頼・進捗確認が可能で、映画館付き添いや550円の買い物代行など幅広いニーズ対応が特徴です。
-
対応内容:通院同行、生活支援、見守り、レポート送付
-
対応エリア:首都圏中心(東京・神奈川・千葉・埼玉など)
-
特徴:シンプルな利用フロー
わたしの看護師さん(N.K.Cナーシングコアコーポレーション)

看護師による医療的サポートを含む保険外介護サービス。
通院や入退院付き添い、服薬管理など、医療的配慮が必要な方に最適です。
-
対応内容:通院付き添い、服薬管理、体調チェック、有事対応
-
対応エリア:全国主要都市(看護師派遣型)
-
特徴:看護師・准看護師が対応、医療連携が可能
比較のポイント
-
目的で選ぶ:生活支援中心ならダスキン、医療サポートならわたしの看護師さん
-
連絡・報告重視なら:クラウドケア、イチロウ
-
併用も可能:例えば、月1回バディファミリー+スポットでクラウドケア、など柔軟に組み合わせられる
保険外介護サービスは、もはや“特別なもの”ではありません。
遠距離介護の現実を支える「もう一つの家族」として、信頼できるパートナーを見つけることが、あなた自身の生活と、親の安心の両方を守る鍵になります。
無理せず続けるための“距離の取り方”
遠距離介護は、「親を思う気持ち」と「自分の生活」との間で揺れ動く選択の連続です。
通うたびに感じる安心と、帰り際の寂しさ。
そんな感情の往復を続けながら、多くの人が“できること”と“できないこと”の狭間でもがいています。
しかし、介護を長く続けるために大切なのは、無理をしない距離の保ち方です。
たとえ毎回行けなくても、信頼できる人やサービスが親のそばにいる——
それだけで、心の負担は大きく軽くなります。
“会いに行く介護”から“支え合う介護”へ
これからの時代、介護は「家族だけで抱えるもの」から「つながりの中で支えるもの」へと変化しています。
保険外介護サービスや地域の支援ネットワークを活用することで、
「すべてを自分でやらなくてもいい介護」を実現できます。
遠距離に暮らす家族にとって大切なのは、
-
定期的なコミュニケーション(オンライン・電話・LINE報告など)
-
地元で支えてくれる人やサービスとの信頼関係
-
そして、自分自身の生活と健康を守る意識
それらを組み合わせることで、“支え続けられる介護”が生まれます。
距離があっても「想い」は届く
2時間でも、300kmでも。
距離があるからこそ、「どう支えるか」を考える力が磨かれます。
介護を通じて生まれる絆は、距離ではなく思いの深さで育っていくもの。
そして、保険外介護サービスは、そんな“思いの架け橋”となる存在です。
家族の気持ちを現地に届け、親の安心を遠くまで運んでくれる。
それが、いま多くの人が新しい介護のかたちとして選び始めている理由です。
最後に
遠距離介護は、決して「特別なこと」ではありません。
いまや誰もが直面する、新しい家族のかたちです。
そしてそれは、“ひとりで頑張ること”ではなく、“誰かと支え合うこと”から始まります。
無理をせず、助けを借りながら。
親も自分も、安心して暮らせる距離を見つけていきましょう。