介護離職とは何か|増え続ける理由と、後悔しないために知っておくべきこと

「介護のために、仕事を辞めたほうがいいのだろうか。」

親や家族の介護が現実になったとき、多くの人が一度は 「介護離職」 という言葉を頭に浮かべます。

仕事と介護の両立が難しくなり、時間的にも、精神的にも追い詰められた末に、「いったん仕事を辞めるしかない」と判断してしまう――
それが介護離職です。

しかし実際には、介護離職を選んだあとに

「辞めなければよかった」
「もっと他の方法があったのでは」

と後悔するケースも少なくありません。

介護離職とは何かをあらためて整理しながら、なぜ介護離職が起きてしまうのか、そして、仕事を辞める前に知っておいてほしい選択肢について、分かりやすく解説していきます。

介護離職を選びやすい人の共通点

介護離職は、
「仕事への意欲が低い人」や「覚悟が足りない人」が選ぶものではありません。

むしろ、
責任感が強く、まじめな人ほど選びやすいという特徴があります。

ここでは、実際によく見られる共通点を紹介します。


① 「自分がやらなければ」と思い込んでしまう人

介護が始まると、多くの人がこう感じます。

  • きょうだいに頼りづらい

  • 親のことは自分が一番分かっている

  • 他人に任せるのは申し訳ない

このように、
介護を一人で背負おうとする人ほど、
仕事との両立が難しくなり、
「辞めるしかない」という結論に近づいてしまいます。


② 周囲に「頼っていい」と言われた経験が少ない人

  • 会社で介護の話をしづらい

  • 上司や同僚に迷惑をかけたくない

  • 弱音を吐くのが苦手

こうした環境にいると、
介護と仕事の両立が限界に近づいても、
誰にも相談できないまま追い詰められてしまうことがあります。

結果として、
「静かに辞める」という選択をしてしまうのです。


③ 介護は「長くは続かない」と思っている人

介護が始まったばかりの頃は、

  • 少しの間だけ頑張ればいい

  • 状況はすぐ落ち着くだろう

と考えてしまいがちです。

しかし実際には、
介護は 数か月では終わらず、年単位で続くことが多い もの。

短期戦のつもりで無理を続けた結果、
体力・気力・仕事のすべてが限界を迎え、
離職という形になってしまうケースは少なくありません。


④ 「辞めれば何とかなる」と思ってしまう人

追い込まれた状態では、

  • 仕事を辞めれば時間は確保できる

  • 一度離職しても、また働けるはず

と考えてしまうことがあります。

ですが、介護離職後には、

  • 収入が不安定になる

  • 再就職が思った以上に難しい

  • 社会とのつながりが減る

といった 別の負担 が生まれることも多く、
後から想像以上の重さを感じる人も少なくありません。


⑤ 「まだ制度や支援をよく知らない」人

介護離職を選びやすい人の多くは、

  • 介護保険で何が使えるのか分からない

  • 見守りや生活サポートの存在を知らない

  • 会社の制度を調べる余裕がない

といった状況にあります。

情報が不足している状態では、選択肢が極端に狭くなってしまうため、
「辞めるしかない」という判断に傾きやすくなります。

介護離職は「特別な人の問題」ではない

ここで挙げた共通点の多くは、誰にでも当てはまり得るものです。

介護離職は、ある日突然決めるものではなく、少しずつ追い込まれた結果として選ばれてしまうことがほとんどです。

だからこそ大切なのは、限界まで我慢する前に、

  • ・状況を整理する

  • ・誰かに相談する

  • ・他の選択肢を知る

という行動を取ることです。

介護離職を選ぶ前に考えてほしいこと

介護と仕事の両立がつらくなったとき、「いったん仕事を辞めるしかない」そう感じるのは、決して弱さではありません。

ただ、介護離職は 一度決めると簡単には元に戻せない選択でもあります。
だからこそ、決断の前に、いくつか立ち止まって考えてほしいことがあります。

① 介護は「いつまで続くか分からない」という前提

介護は、
「あと数か月だけ」
「状況が落ち着くまで」
と区切りをつけにくいものです。

実際には、体調の波や状態の変化を繰り返しながら、年単位で続くケースがほとんどです。

その期間を、

  • 収入を減らしたまま過ごせるか

  • 心身の負担を一人で抱え続けられるか

一度、現実的に考えてみる必要があります。

② 「仕事を辞めた後の生活」を具体的に想像できているか

介護離職を考えるとき、目の前の大変さに意識が向きがちですが、離職後の生活も具体的に想像しておくことが大切です。

  • 収入はどれくらい減るのか

  • 貯蓄でどれくらい持つのか

  • 再就職の時期や条件はどうなるのか

「何とかなるだろう」ではなく、数字や状況をできるだけ具体化して考えることで、後悔の少ない判断につながります。

③ 本当に「自分が全部やる必要」があるのか

介護離職を考える人の多くが、「自分しかいない」と感じています。

しかし実際には、

  • 介護保険サービス

  • 見守りや生活サポート

  • 親族や第三者の関わり

を組み合わせることで、仕事を続けながら介護に関わる形も可能なケースは少なくありません。

「全部やる」以外の選択肢がないか、一度、外からの視点で見直してみることが大切です。

④ 会社の制度を「使い切ったか」

介護離職を選ぶ前に、会社の制度を十分に確認したかも重要なポイントです。

  • 介護休業

  • 時短勤務

  • 在宅勤務

  • 配置転換や業務調整

制度はあっても、「使いづらい」「言い出しづらい」と感じて、十分に活用されていないことも多くあります。

一度、人事や上司に相談することで、思っていたより柔軟な対応が可能になる場合もあります。

⑤ 今の決断は「冷静な状態」で考えられているか

介護が重なり、寝不足や疲労が続いているときは、どうしても判断が極端になりがちです。

  • 今日はもう無理

  • 辞めるしかない

  • これ以上考えられない

そう感じているときこそ、一人で決めないことが大切です。

誰かに話すだけでも、見え方が変わることがあります。

辞める前に「相談する」ことも、立派な選択

介護離職を選ぶかどうかは、白か黒かの問題ではありません。

  • 今すぐ辞める必要はあるのか

  • もう少し別の形を試せないか

  • 一時的な対応で乗り切れないか

こうしたことを整理するために、第三者に相談すること自体が、大切な行動です。

介護離職を防ぐためにできる具体策

介護離職は、ある日突然決断されるものではありません。

多くの場合、「少し無理を重ねた結果、他に選択肢が見えなくなる」という流れで起きています。

だからこそ、早めに・小さく・現実的な対策を積み重ねることが、介護離職を防ぐ最大のポイントです。

① 介護を「一人でやらない」前提に切り替える

介護離職を防ぐうえで、最も重要なのはこの意識です。

  • 自分が全部やらなければならない

  • 家族だから任せてはいけない

こうした考えは、結果的に自分を追い込み、離職につながりやすくなります。

✔ 介護保険サービス
✔ 見守り・生活サポート
✔ 第三者の定期的な関わり

最初から前提にすることで、仕事と介護を切り分けて考えられるようになります。

② 「今は何が一番つらいか」を言語化する

漠然としたつらさのままでは、対策を立てることができません。

まずは、

  • 平日の対応がつらい

  • 夜間・緊急時が不安

  • 通院や買い物が負担

など、一番の負担ポイントを一つに絞って考えることが大切です。

負担が明確になると、必要な支援も見えやすくなります。

③ 会社の制度を「現実的に使う」

介護離職を防ぐためには、制度を「知る」だけでなく、どう使うかが重要です。

  • 介護休業を「準備期間」として使う

  • 時短勤務を一時的に導入する

  • 在宅勤務と介護対応を組み合わせる

完璧に使おうとしなくて構いません。
一部でも使えれば、負担は確実に下がります。

④ 「緊急時の対応」を先に決めておく

多くの人が離職を決断するきっかけは、突然のトラブルです。

  • 連絡が取れない

  • 夜間に倒れた

  • 急な入院が必要になった

こうした場面でパニックにならないよう、

  • 誰に連絡するか

  • 家族以外の対応先

  • 平日・休日それぞれの動き方

を事前に決めておくことで、「仕事を辞めないと無理」という状況を防げます。

⑤ 定期的に「第三者」に相談する

介護離職を防げている人の多くは、定期的に誰かに相談しています。

  • 状況を客観的に見てもらう

  • 無理をしていないか確認する

  • 次の一手を一緒に考える

これは、「困ってから相談する」のではなく、困りきる前に相談するという姿勢です。

⑥ 「辞める・辞めない」を今決めなくていいと知る

介護離職を防ぐために、最初から答えを出す必要はありません。

  • 今は続ける

  • 状況が変わったら考える

  • 段階的に判断する

こうした 余白を残した考え方が、長期的に見て一番負担が少なくなります。

小さな対策が、将来の大きな選択を守る

介護離職を防ぐために必要なのは、特別な覚悟ではありません。

  • 一人で抱えない

  • 早めに整える

  • 選択肢を知っておく

この積み重ねが、「仕事を続けながら介護と向き合う」現実的な道をつくります。