
高齢者や介護が必要な方の自立した生活を支えるうえで、「手すり」はとても重要な役割を果たします。
転倒防止や日常動作のサポートとして、住まいのいろいろな場所に手すりを設置する家庭が増えていますが、「どこに、どんな手すりをつければいいの?」「選び方や設置の注意点は?」と悩む声も多いのが現実です。
介護現場での手すりの役割や設置のポイント、実際に使える選び方のコツや介護保険の活用法まで、わかりやすく解説します。
安全で安心な住まいづくりの参考にしてください。
1. 介護における手すりの役割と必要性

高齢者や介護が必要な方の住まいにとって、「手すり」は転倒防止だけでなく、“安心して自分らしく暮らす”ための大切なアイテムです。
年齢を重ねると、筋力やバランス感覚が低下し、立ち上がりや歩行時にふらついたり、足腰に負担を感じる場面が増えてきます。こうしたとき、手すりがあることで体を支え、動作に安定感をもたせることができます。
転倒リスクの減少
日本では、高齢者の「転倒・転落」は介護が必要になる主な原因の一つです。特に自宅内での転倒事故は多く、トイレや浴室、玄関の段差など、日常のちょっとした動作で大きなケガにつながるケースも少なくありません。
手すりを設置することで、体の重心移動が安定し、「踏み外し」や「ふらつき」などの危険を減らすことができます。
段差の昇り降りや立ち座り、歩行の途中など、動作ごとにしっかり体を支えるポイントがあることで、安心して生活することが可能になります。
自立支援や動作の安心感
手すりは、「介助者がいないとできない」から「自分でできる」を増やすためのサポートにもなります。
たとえばトイレでの立ち座りや、お風呂での出入りなど、「あと一歩が不安」という場面でも、手すりを握ることで“自分でできた”という自信や、生活の自立にもつながります。
また、手すりがあることで、介助を行う家族やヘルパーにとっても負担軽減につながり、転倒事故のリスクを減らせるというメリットも大きいです。
手すりは高齢者や介護が必要な方の「安全・安心な毎日」を支える、住まいづくりの大切なパートナーです。
2. 手すりの設置が効果的な場所とは?

手すりを設置することで、安全性や自立度が大きく向上しますが、「どこに手すりを付けるか」がとても重要です。住む方の体の状態や生活パターンに合わせて、転倒リスクの高い場所や日常的によく使う場所を中心に設置しましょう。
玄関
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靴の脱ぎ履きや、段差の上り下りでバランスを崩しやすい場所です。
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玄関の上がり框(かまち)やアプローチ階段に手すりを設けると、立ち座りや段差越えが安全にできます。
階段
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家庭内で最も転倒・転落事故が多い場所のひとつ。
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上り下りのどちらにも使えるよう、左右どちらか一方、または両側に手すりを設置するのがおすすめです。
廊下
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長い距離を歩く場所や、曲がり角・段差のある廊下では、ふらつきやすい方のサポートに。
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廊下の壁沿いに連続して手すりを取り付けておくと、安心して移動できます。
トイレ
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立ち座り動作が多く、滑りやすい場面も。
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便器の横や背後、出入口付近に手すりを設置することで、自力でのトイレ動作や介助のしやすさがアップします。
浴室・脱衣所
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浴槽のまたぎ動作や、濡れて滑りやすい床での転倒予防に最適。
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浴室の出入口や浴槽の縁、シャワーの付近に手すりをつけると、安全性が高まります。
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脱衣所でも、衣服の着脱時や浴室への出入りをサポートします。
ベッドや椅子の周辺
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起き上がりや立ち上がりを補助する「据え置き型手すり」も有効です。
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ベッドサイドやリビングの椅子周辺に設置すれば、日々の動作がぐんとラクになります。
家の中の“つまずきポイント”“ふらつきやすい場所”を家族で見直し、必要な場所に手すりを設けることが、安全・安心な暮らしの第一歩です。
3. 手すりの種類と選び方

手すりにはさまざまな種類があり、使う場所や利用する方の状態に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、主な手すりのタイプと、それぞれの特徴・選び方のポイントを紹介します。
固定式手すり
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壁や床にしっかりと固定するタイプです。階段や玄関、廊下などによく使われます。
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安定感があり、長期的な使用に向いています。強度も十分なので、体重をかけても安心です。
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【選び方ポイント】
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利用者の身長や動作に合わせて高さや長さを選びましょう。
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壁や床の強度が必要なため、専門業者による設置が基本です。
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据え置き型手すり
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床に置くだけで設置できるタイプで、工事不要。ベッドサイドやトイレ、浴室などで使われることが多いです。
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必要なときに場所を移動できるので、一時的なサポートや引っ越しが多い方にも便利。
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【選び方ポイント】
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しっかりと床に安定しているか、滑り止め加工がされているかをチェックしましょう。
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移動が多い場合は、重さやサイズにも注意。
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吸盤タイプ・簡易取付け型
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吸盤やクランプで壁や浴槽に取り付けるタイプです。特に浴室や脱衣所で重宝します。
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賃貸住宅や壁に穴を開けたくない場合にもおすすめですが、強度には限界があるため、あくまで「補助用」と考えましょう。
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【選び方ポイント】
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取り付ける面が平らかどうか、耐荷重(何kgまでOKか)を確認してください。
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使用前に毎回、吸着力や緩みがないかチェックしましょう。
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素材や形状の選び方
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素材:木製は手触りが良く温かみがありますが、金属(ステンレスやアルミ)は水回りでも錆びにくい特徴があります。
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形状:握りやすい丸型、手のひらを乗せやすい楕円型など、使う人の手の大きさや握力に合わせて選びましょう。
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色や質感も、インテリアや好みに合わせて選ぶことで、使う方の満足度が高まります。
手すりは「安全性」「使いやすさ」「設置場所への適合性」をバランスよく選ぶことが大切です。
迷った場合は、福祉用具専門相談員やケアマネジャーに相談しながら、ご本人に合ったものを選びましょう。
4. 設置の際の注意点と失敗例

手すりを安全・快適に使うためには、「ただ付ければ安心」というわけではありません。
設置時のちょっとしたミスが、逆に転倒やケガのリスクになることもあります。よくある失敗例や、注意したいポイントを整理しました。
よくある設置の失敗例
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高さが合っていない
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利用者の身長や動作に合わない高さに手すりを設置してしまい、「使いにくい」「手が届かない」といったトラブルに。
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位置がズレている・壁や床の強度不足
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壁の下地が弱い場所や、きちんと固定できていない部分に設置すると、体重をかけた時に手すりが外れてしまう危険も。
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動線を考えずに設置
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階段や廊下のカーブ、トイレや浴室の出入口など、「ここでつかまりたい」という場所に手すりがないケース。
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据え置き型・吸盤タイプの不安定な設置
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床や壁との接地が不安定だと、使っているうちにズレたり、吸盤が外れたりしてしまうことも。
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設置の際の注意点
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高さは“手すりを使う人”に合わせて決める
→ 一般的には床から75~85cm程度が目安ですが、実際に立ち上がりや歩行動作を再現しながら「握りやすい位置」を必ず確認しましょう。 -
しっかり固定できる場所かを事前にチェック
→ 壁の下地や柱の位置、床の素材を確認。必要に応じて補強工事も検討します。 -
設置場所は“つかまりたい瞬間”を想定して決める
→ 移動や立ち座りの流れを再現し、「ここで手すりが必要」と思うポイントに設置。 -
工事や設置は専門家に相談する
→ 特に固定式手すりは、自己判断で取り付けるより、専門業者や福祉用具専門相談員に相談すると安心です。 -
据え置き型や吸盤タイプは、定期的に点検する
→ ズレや緩み、吸着力の低下に気を付けて、危ないと感じたらすぐ調整しましょう。
「なんとなく」で設置せず、“使う人の目線”で場所や高さ、強度を見直すことが大切です。
事故防止のためにも、プロのアドバイスや家族の意見を参考に、慎重に設置を進めましょう。
5. 介護保険を使った手すり設置のポイント

「手すりを設置したいけれど、費用面が不安…」という方も多いのではないでしょうか。
実は、要介護・要支援の認定を受けている方であれば、「介護保険」の住宅改修費を活用して手すりを設置できる場合があります。
介護保険による住宅改修費支給制度とは?
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介護保険では、在宅で自立した生活を支えるための小規模な住宅改修(手すりの設置・段差解消・滑り止めなど)に対し、最大20万円まで(原則1割~3割負担)の補助を受けることができます。
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この制度を利用すれば、実質負担額を抑えて手すりを設置できます。
制度を使うための流れ
まずはケアマネジャーに相談!
手すり設置を希望する場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、必要性や場所を一緒に検討します。
見積もり・申請書類の準備
福祉用具専門相談員やリフォーム業者が現地を確認し、見積書や工事内容を作成。
市区町村へ「事前申請」を行います。
審査・承認後に工事スタート
市区町村からの承認が下りたら、指定業者による工事が可能となります。
(※申請前に工事を始めると補助が受けられないので注意)
工事完了後に領収書・必要書類を提出し、補助金が給付されます。
注意点・アドバイス
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「申請前の工事着手」はNG!
必ず事前に申請・承認を受けてから工事を行ってください。 -
1回の利用上限は20万円(複数回利用はできません)
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対象者や手続き方法は自治体ごとに異なる場合もあるため、必ず事前にケアマネジャー等へ確認しましょう。
介護保険を上手に使えば、「必要な場所に・安心して・お得に」手すりを設置できます。
わからないことがあれば、遠慮なく専門家に相談しましょう。