勤務先から「はぐくみ企業年金」への加入を案内され、どのような制度なのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
はぐくみ企業年金は、毎月一定額を積み立て、退職後などに年金や一時金として受け取るための企業年金制度です。正式には「福祉はぐくみ企業年金基金」といい、将来の給付内容が規約に基づいて決まる確定給付企業年金にあたります。
老後資金を計画的に準備できることに加え、勤務先の制度設計によっては、給与や税金、社会保険料の負担が変わる可能性があります。
そのため、一見するとメリットの多い制度に思えますが、加入前には注意しておきたい点もあります。
たとえば、掛金の設定によって毎月受け取る給与が少なくなる場合があることや、標準報酬月額が下がることで、将来の厚生年金や傷病手当金、出産手当金などの金額に影響する可能性があることです。
また、iDeCoや企業型確定拠出年金と仕組みが異なるため、「自分で金融商品を選んで運用する制度」と勘違いしている方も少なくありません。
はぐくみ企業年金は、加入者自身が投資信託などの商品を選んで運用する確定拠出年金ではなく、基金が資産を管理・運用する確定給付型の制度です。加入期間や退職時の年齢などに応じて、年金または一時金を受け取る仕組みになっています。
ただし、実際の掛金や給与の扱い、加入方法などは勤務先の制度によって異なります。「社会保険料が安くなるから得」「積み立てたお金はいつでも受け取れる」といった説明だけで判断するのは避けた方がよいでしょう。
はぐくみ企業年金の基本的な仕組みをはじめ、加入するメリットとデメリット、給与や社会保険への影響、退職時の受け取り方などをわかりやすく解説します。
勤務先から加入を勧められている方や、掛金をいくらにするか迷っている方は、加入後に後悔しないための参考にしてください。
はぐくみ企業年金とは?仕組みをわかりやすく解説
はぐくみ企業年金とは、勤務先を通じて掛金を積み立て、退職後などに年金または一時金として受け取る企業年金制度です。
正式名称は「福祉はぐくみ企業年金基金」といい、国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せする形で、将来の生活資金を準備することを目的としています。
簡単に表すと、次のような仕組みです。
勤務先ではぐくみ企業年金を導入する
↓
従業員が加入し、毎月掛金を積み立てる
↓
基金が積立金をまとめて管理・運用する
↓
退職時や一定の年齢になったときなどに受け取る
自分で投資信託や株式を選んで運用する制度ではなく、基金が加入者から集めた資産を管理・運用する点が特徴です。
はぐくみ企業年金は「確定給付企業年金」
企業年金には、主に「確定給付企業年金」と「確定拠出年金」があります。
はぐくみ企業年金は、このうち確定給付企業年金にあたります。「DB」と呼ばれることもあります。
確定給付企業年金は、加入期間や掛金などに基づき、将来受け取る金額の計算方法があらかじめ定められている制度です。
確定拠出年金のように、加入者自身が運用商品を選び、その運用結果によって受取額が大きく変動する仕組みではありません。
| 比較項目 | はぐくみ企業年金 | 確定拠出年金 |
|---|---|---|
| 制度の種類 | 確定給付型(DB) | 確定拠出型(DC) |
| 運用する人 | 基金 | 加入者本人 |
| 商品選び | 原則として不要 | 本人が選ぶ |
| 受取額 | 規約に基づいて決まる | 運用結果によって変わる |
| 主な受取時期 | 退職時や一定年齢到達時など | 原則60歳以降 |
| 投資の知識 | 基本的に商品選びは不要 | 商品選びの知識が必要 |
投資に詳しくない方でも利用しやすい一方、勤務先の制度や規約に沿って加入・受給するため、自分の判断だけですべてを自由に決められるわけではありません。
「選択制」の企業年金として導入されることがある
勤務先によっては、はぐくみ企業年金を「選択制企業年金」として導入している場合があります。
選択制企業年金とは、給与体系を変更して「前払い退職金」という枠を設け、そのお金を次のどちらにするか従業員が選ぶ仕組みです。
- 前払い退職金として毎月の給与と一緒に受け取る
- はぐくみ企業年金の掛金として積み立てる
たとえば、前払い退職金として設定された金額が月2万円の場合、その2万円を給与として受け取るか、全部または一部を企業年金として積み立てるかを選ぶ形です。
ただし、具体的な仕組みは勤務先によって異なります。
会社が掛金を別途負担するケースもあれば、給与体系を変更して設けられた前払い退職金から、本人が積立額を選ぶケースもあります。
そのため、「会社が自分の給与とは別に、全額を出してくれる制度」とは限りません。加入前には、掛金の財源がどこから出ているのかを確認する必要があります。
掛金はいくらから積み立てられる?
はぐくみ企業年金の掛金は、制度上は月額1,000円から設定できます。
ただし、加入者が実際に選べる金額や変更できる時期は、勤務先の規程によって異なります。
また、掛金には上限があり、基本給の一定割合などをもとに決められます。ここでいう基本給の定義についても、勤務先によって異なる場合があります。
加入を検討するときは、会社の担当者に次の点を確認しておきましょう。
- ・最低掛金はいくらか
- ・自分が選べる掛金の上限はいくらか
- ・掛金を変更できる時期
- ・途中で積み立てを止められるか
- ・会社からの掛金負担があるか
- ・給与や前払い退職金がどのように変わるか
「毎月いくら積み立てるか」だけでなく、加入によって給与明細がどのように変わるかまで確認することが大切です。
積み立てたお金はいつ受け取れる?
はぐくみ企業年金では、老後だけでなく、勤務先を退職したときなどに一時金を受け取れる場合があります。
主な受給のきっかけには、次のようなものがあります。
- ・勤務先を退職したとき
- ・加入者が一定の年齢に達したとき
- ・休職・休業などにより加入資格を失ったとき
- ・加入者が亡くなったとき
加入期間や退職時の年齢などによって、年金として受け取るか、一時金として受け取るかが変わります。
確定拠出年金やiDeCoは、原則として60歳まで資産を引き出せません。一方、はぐくみ企業年金では、退職などの理由で加入資格を失ったときに、脱退一時金として受け取れる場合があります。
この受け取りやすさは、はぐくみ企業年金の大きな特徴の一つです。
ただし、加入中に「お金が必要になった」という理由だけで、自由に引き出せる普通預金のような制度ではありません。
受給できる条件や手続きは決められているため、近い将来に使う予定のあるお金まで、すべて掛金に回さないよう注意が必要です。
退職時には他の年金制度へ移せる場合もある
勤務先を退職したときは、積み立てた資産を一時金として受け取るだけでなく、条件によっては他の年金制度へ移す「移換」を選べる場合があります。
たとえば、転職先の企業年金や企業型確定拠出年金、iDeCoなどへ資産を持ち運べるケースがあります。
一時金として受け取るか、老後資金として別の制度で運用を続けるかによって、その後の資産形成や税金の扱いも変わる可能性があります。
退職時には、勤務先から渡される書類や基金の案内を確認し、手続きの期限を過ぎないようにしましょう。
公的年金とは別の制度
はぐくみ企業年金は、国民年金や厚生年金の代わりになる制度ではありません。
会社員の場合、通常は国民年金と厚生年金に加入しながら、それとは別に、はぐくみ企業年金へ加入します。
イメージとしては、老後の収入を次のように積み重ねていく形です。
1階部分:国民年金
2階部分:厚生年金
上乗せ部分:はぐくみ企業年金などの企業年金
公的年金に加えて、退職金や企業年金を準備できる点はメリットです。
ただし、選択制企業年金として加入し、掛金の拠出によって社会保険料の計算に使われる給与額が変わった場合、将来の厚生年金や一部の社会保険給付に影響する可能性があります。
そのため、「企業年金が増える」という面だけを見るのではなく、公的年金や社会保険への影響も含めて判断することが大切です。
まずは勤務先の制度内容を確認しよう
はぐくみ企業年金の基本的な仕組みは共通していますが、実際の加入方法や掛金の扱いは勤務先によって異なります。
加入前には、少なくとも次の点を確認しておきましょう。
- ・加入は任意か
- ・掛金は誰が負担するのか
- ・給与や前払い退職金からいくら積み立てるのか
- ・掛金を変更・停止できる時期
- ・退職した場合の受け取り方
- ・社会保険料や将来の厚生年金への影響
- ・受け取る際の税金
はぐくみ企業年金は、老後や退職後の資金を準備できる制度ですが、仕組みを十分に理解せずに掛金を決めると、「思っていたより手取りが減った」「将来の社会保険給付への影響を知らなかった」と感じることがあります。
会社から渡された説明資料や規程を確認し、不明点があれば担当者に具体的な金額を示してもらったうえで加入を判断しましょう。
はぐくみ企業年金のデメリット・加入前に知っておきたい注意点
はぐくみ企業年金は、退職後の資金を準備しやすく、自分で金融商品を選ぶ必要がない企業年金制度です。
一方で、加入の仕組みによっては毎月の給与や社会保険に影響する可能性があります。また、積み立てたお金を好きなタイミングで自由に引き出せるわけではありません。
加入後に「説明を聞いていた内容と違った」と感じないためにも、メリットだけでなく、次のデメリットや注意点を確認しておきましょう。
掛金を積み立てると毎月の手取りが減る場合がある
はぐくみ企業年金では、勤務先によって「選択制」の仕組みが採用されていることがあります。
選択制の場合、給与体系の中に前払い退職金などの枠を設け、その金額を毎月の給与として受け取るか、企業年金の掛金として積み立てるかを選びます。
掛金として積み立てる金額を増やすと、将来受け取る企業年金の積立額は増えますが、毎月受け取る給与はその分少なくなる場合があります。
たとえば、月3万円を給与として受け取らず、はぐくみ企業年金へ積み立てる場合、給与明細上の支給額や手取り額が変わる可能性があります。
「社会保険料や税金が軽くなるから、掛金は多いほど得」と考えてしまうかもしれませんが、現在の生活費に余裕がなくなっては意味がありません。
加入前には、掛金を差し引いた後の手取り額を確認し、無理なく生活できる金額を設定することが大切です。
将来の厚生年金が少なくなる可能性がある
選択制の仕組みによって給与額が下がり、社会保険料の計算に使われる標準報酬月額も下がった場合、将来受け取る老齢厚生年金の金額が少なくなる可能性があります。
厚生年金の受給額は、厚生年金に加入していた期間だけでなく、その間の給与や賞与をもとに計算されます。
そのため、はぐくみ企業年金への掛金を増やし、厚生年金の計算対象となる給与額が下がる期間が長くなるほど、将来の厚生年金にも影響が生じる可能性があります。
もちろん、厚生年金が減る一方で、はぐくみ企業年金の積立額は増えます。
そのため、単純に「年金が減るから損」と判断するのではなく、次の両方を比較する必要があります。
- はぐくみ企業年金によって増える退職後の資金
- 標準報酬月額が下がることで減る可能性がある厚生年金
勤務先の説明会などでは、社会保険料の軽減額だけでなく、将来の厚生年金への影響についても確認しましょう。
傷病手当金や出産手当金が減る可能性がある
標準報酬月額は、厚生年金だけでなく、健康保険から支給される一部の給付額を計算するときにも使われます。
たとえば、病気やけがで仕事を休んだときに支給される傷病手当金や、出産のために仕事を休んだときに支給される出産手当金です。
はぐくみ企業年金への加入によって標準報酬月額が下がると、こうした給付の金額も少なくなる場合があります。
特に、今後妊娠・出産を予定している方や、病気による休職に備えたい方は注意が必要です。
目の前の社会保険料が安くなることだけでなく、万が一のときに受け取る給付への影響も考慮して、掛金を決めましょう。
雇用保険の給付額に影響する可能性がある
勤務先の給与制度や掛金の扱いによっては、退職後に受け取る基本手当、いわゆる失業給付などに影響する可能性もあります。
雇用保険の給付額は、原則として退職前に受け取っていた賃金をもとに計算されます。
企業年金の掛金に回した金額が賃金として扱われず、給付の計算対象となる給与額が下がっている場合には、失業給付などの金額が少なくなることがあります。
近い将来に転職や退職を予定している方は、掛金を増やす前に、雇用保険への影響についても勤務先へ確認しておくと安心です。
積み立てたお金をいつでも自由に引き出せるわけではない
はぐくみ企業年金は、普通預金のように、必要なときにいつでも自由に引き出せる制度ではありません。
退職や休職・休業、一定の年齢への到達など、規約で定められた受給条件を満たした場合に、一時金や年金として受け取ります。
加入中に次のような事情が発生しても、単に「お金が必要になった」という理由だけでは自由に引き出せません。
- ・住宅や車を購入したい
- ・子どもの教育費が必要になった
- ・家族の介護費用が増えた
- ・生活費が不足した
- ・急な医療費がかかった
確定拠出年金よりは退職時などに受け取りやすい制度ですが、日常生活の予備資金として使えるわけではありません。
急な支出に備えるお金は預貯金で確保し、当面使う予定のない金額を積み立てることが重要です。
掛金を自由なタイミングで変更できるとは限らない
生活状況が変わり、「今月から掛金を減らしたい」と考えることもあるでしょう。
しかし、はぐくみ企業年金の掛金は、いつでも自由に変更できるとは限りません。
掛金を変更できる時期は勤務先の規程によって決められており、年に数回など、変更の機会が限られている場合があります。
たとえば、収入の減少や子どもの進学、家族の介護などで家計が急に苦しくなっても、すぐに掛金を変更できない可能性があります。
加入前には、次の点を確認しておきましょう。
- ・掛金を変更できる時期
- ・掛金を最低いくらまで減らせるか
- ・積み立てを一時的に止められるか
- ・変更の申し込み期限
- ・休職した場合の取り扱い
最初から上限に近い金額を設定するのではなく、家計に余裕を残した金額から始めることも一つの方法です。
退職時には受け取りや移換の手続きが必要
はぐくみ企業年金に加入している方が勤務先を退職すると、原則として加入者資格を失います。
その際、積み立てた資産を一時金として受け取るか、条件を満たす別の年金制度などへ移すかを選ぶことになります。
退職したからといって、自動的に銀行口座へ振り込まれるわけではありません。基金からの案内を確認し、所定の手続きを行う必要があります。
移換を選ぶ場合には期限が設けられているため、退職後に書類を放置しないことが大切です。
また、一時金として受け取る場合と、別の制度で老後まで持ち運ぶ場合では、税金やその後の資産形成も変わります。
退職時には、目先の現金だけで判断せず、老後資金全体を考えて受け取り方を選びましょう。
受け取り方によって税金の扱いが異なる
はぐくみ企業年金で積み立てた資産を受け取るときは、受給の理由や受け取り方によって税金の扱いが異なります。
退職に伴って一時金を受け取る場合は、退職所得として扱われ、退職所得控除を利用できる可能性があります。
一方、休職や休業など、退職以外の理由で一時金を受け取る場合は、別の所得区分として扱われることがあります。
また、勤務先から別の退職金を受け取る場合は、はぐくみ企業年金の一時金と合わせて、退職所得控除の計算に影響する可能性があります。
「企業年金だから受け取るときも必ず非課税」とは限りません。
受給時期が近づいたら、勤務先の退職金やほかの企業年金、公的年金も含めて、税金の扱いを確認しましょう。
iDeCoのような所得控除が適用される制度ではない
はぐくみ企業年金とiDeCoは、どちらも老後資金を準備する制度ですが、税制上の仕組みは同じではありません。
iDeCoでは、本人が支払った掛金が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
一方、はぐくみ企業年金では、加入者が掛金を支払ったものとして、年末調整や確定申告で同じ所得控除を受ける仕組みではありません。
選択制の制度では、給与体系の変更によって、掛金に回した部分が給与所得に含まれなくなることで、所得税などの負担が変わる場合があります。
つまり、iDeCoのように「自分で掛金を支払い、後から所得控除を申告する制度」ではないということです。
税制上の仕組みを混同すると、「年末調整でさらに税金が戻ると思っていた」と誤解することがあります。
会社ごとに制度の内容が異なり、わかりにくい
はぐくみ企業年金の基本的な仕組みは共通していますが、実際の制度設計は勤務先によって異なります。
たとえば、次のような点は会社ごとに違う場合があります。
- ・掛金の財源
- ・前払い退職金の金額
- ・会社が負担する掛金の有無
- ・本人が選べる掛金額
- ・掛金を変更できる時期
- ・加入対象となる従業員
- ・退職金制度との関係
インターネット上で見た他社の事例が、そのまま自分の勤務先にも当てはまるとは限りません。
制度の名称だけで判断せず、勤務先から配布された規程や説明資料を確認する必要があります。
特に、加入前後の給与明細の違いや、社会保険給付への影響は、具体的な金額を示して説明してもらうと理解しやすくなります。
デメリットを理解したうえで掛金を決めることが大切
はぐくみ企業年金の注意点は、制度そのものが危険ということではありません。
主な問題は、社会保険料や税金が軽くなるというメリットだけを見て、給与や将来の給付への影響を理解しないまま加入してしまうことです。
加入を検討する際は、次の3つの金額を比較してみましょう。
- 1.加入後の毎月の手取り額
- 2.はぐくみ企業年金に積み立てられる金額
- 3.将来の厚生年金や社会保険給付に生じる可能性がある影響
現在の生活に無理がなく、社会保険への影響も納得したうえで積み立てるのであれば、はぐくみ企業年金は退職後の資金を準備する選択肢になります。
反対に、家計に余裕がない方や、傷病手当金・出産手当金などを受け取る可能性が高い方は、掛金を慎重に設定した方がよいでしょう。
はぐくみ企業年金に加入するメリット
はぐくみ企業年金には、給与や社会保険への影響など、加入前に確認すべき注意点があります。
一方で、退職後の資金を計画的に準備しやすく、自分で運用商品を選ぶ必要がないなどのメリットもあります。
デメリットだけで判断するのではなく、制度を利用することで得られる利点についても確認しておきましょう。
退職後に向けて計画的に資金を積み立てられる
はぐくみ企業年金を利用すると、毎月一定額を企業年金として積み立てられます。
普通の預貯金では、生活費や買い物などで使ってしまい、退職後の資金をなかなか準備できないことがあります。
はぐくみ企業年金の掛金は、給与の支給時に積み立てられるため、自分で毎月振り込む必要がありません。先に老後や退職後の資金を確保し、残ったお金で生活する仕組みを作りやすくなります。
自分で貯金を続けるのが苦手な方にとっては、半ば自動的に退職後の資金を準備できることがメリットです。
ただし、毎月の手取りが少なくなる場合があるため、生活費に無理のない掛金を設定する必要があります。
自分で運用商品を選ぶ必要がない
企業型確定拠出年金やiDeCoでは、加入者自身が投資信託や定期預金などの運用商品を選びます。
一方、はぐくみ企業年金は確定給付企業年金であり、年金資産の管理や運用は基金が行います。
加入者が多数の商品を比較したり、相場の変動に合わせて商品を入れ替えたりする必要は基本的にありません。
投資に詳しくない方や、資産運用に時間をかけたくない方でも利用しやすい制度といえます。
ただし、加入者が自由に運用方法を選べないという見方もできます。自分で積極的に運用し、より高い収益を目指したい方にとっては、物足りなく感じる可能性があります。
確定拠出年金より早く受け取れる場合がある
iDeCoや企業型確定拠出年金の資産は、原則として60歳になるまで引き出せません。
これに対し、はぐくみ企業年金では、勤務先を退職して加入資格を失った場合などに、脱退一時金として受け取れることがあります。
60歳より前に転職や退職をした場合でも、条件を満たせば積み立てた資金を受け取れる可能性があることは、大きな特徴です。
退職後の生活費や転職期間中の資金として活用できる場合もあり、確定拠出年金より受け取りの柔軟性が高いと感じる方もいるでしょう。
ただし、在職中に自由な理由で引き出せるわけではありません。具体的な受給条件については、勤務先や基金の案内を確認する必要があります。
選択制では税金や社会保険料の負担が軽くなる場合がある
選択制のはぐくみ企業年金では、前払い退職金などとして給与で受け取る金額の一部を、企業年金の掛金として積み立てることがあります。
掛金に回した金額が給与として扱われない仕組みの場合、所得税や住民税、社会保険料の計算対象となる給与額が下がり、毎月の負担が軽くなる可能性があります。
掛金として積み立てた金額がそのまま手取りから減るわけではなく、税金や社会保険料の負担が軽くなることで、実際の手取りの減少幅が掛金より小さくなる場合があります。
ただし、社会保険料が軽くなる一方で、将来の厚生年金や傷病手当金、出産手当金などが少なくなる可能性があります。
目先の負担軽減だけでなく、将来受け取る給付への影響も含めて判断することが大切です。
少額から積み立てを始められる
はぐくみ企業年金では、勤務先の制度によっては少額から掛金を設定できます。
「最初から大きな金額を積み立てるのは不安」という方でも、生活に負担のない範囲から始められる可能性があります。
また、会社が定める時期に掛金を変更できる場合があるため、収入や家計の状況に合わせて積立額を見直すこともできます。
ただし、掛金の最低額や上限、変更できる時期は勤務先によって異なります。
少額から始められるからといって、いつでも自由に掛金を変えられるとは限らないため、加入前にルールを確認しておきましょう。
退職金制度が十分でない会社でも資金を準備できる
勤務先に大きな退職金制度がない場合、退職後にまとまった資金を受け取れないことがあります。
はぐくみ企業年金が導入されていれば、毎月掛金を積み立てることで、自分の退職後に向けた資金を準備できます。
特に、中小企業や福祉・医療関係の事業所など、従来の退職金制度を整えることが難しい勤務先では、企業年金制度が退職金の役割を補う場合があります。
ただし、会社から別途掛金が支給されるのか、給与体系の変更によって本人が積み立てる形なのかによって、メリットの大きさは異なります。
加入前には、会社独自の退職金制度との関係も確認しましょう。
はぐくみ企業年金が向いている人・慎重に考えたい人
はぐくみ企業年金が得になるかどうかは、収入や家計、働き方、将来の予定によって異なります。
企業年金に加入すれば、すべての人が同じメリットを得られるわけではありません。
ここでは、はぐくみ企業年金が向いている人と、加入を慎重に考えた方がよい人の特徴を紹介します。
はぐくみ企業年金が向いている人
退職後の資金を計画的に準備したい人
老後や退職後に向けて貯金をしたいものの、自分ではなかなか続けられない方には向いている可能性があります。
給与の支給時に掛金を積み立てるため、老後資金を先に確保する習慣を作りやすくなります。
普通預金にお金があると使ってしまう方にとっては、退職後の資金を別枠で管理できることがメリットです。
毎月の家計にある程度余裕がある人
掛金を積み立てることで、毎月自由に使えるお金は少なくなる場合があります。
そのため、生活費や住宅費、教育費などを支払った後にも、ある程度の余裕がある方に向いています。
急な医療費や家族の介護費などに備える預貯金を確保したうえで、無理のない金額を積み立てられる人であれば、制度を活用しやすいでしょう。
自分で投資商品を選ぶことに不安がある人
投資信託の種類や値動きを理解し、自分で商品を選ぶことに不安を感じる方もいます。
はぐくみ企業年金では、基金が年金資産を管理・運用するため、加入者が一つひとつ運用商品を選ぶ必要は基本的にありません。
投資の知識に自信がない方や、日々の値動きを気にせず退職後の資金を準備したい方に向いています。
60歳より前に退職する可能性がある人
転職や退職の可能性があり、確定拠出年金のように60歳まで資金を引き出せないことを不安に感じる方にも、選択肢になる場合があります。
はぐくみ企業年金では、退職して加入資格を失ったときに、条件に応じて一時金を受け取れる可能性があります。
ただし、退職後も老後資金として残した方がよい場合もあるため、一時金をすぐに受け取るか、他制度へ移すかは慎重に考えましょう。
給与や社会保険への影響を理解できている人
はぐくみ企業年金は、制度の仕組みを理解して利用することが重要です。
加入後の手取り額や、将来の厚生年金、傷病手当金などへの影響を確認し、それでも積み立てるメリットがあると判断できる方に向いています。
「社会保険料が安くなる」という説明だけでなく、デメリットも理解したうえで掛金を決められる人であれば、加入後の後悔を減らせます。
はぐくみ企業年金への加入を慎重に考えたい人
現在の生活費に余裕がない人
毎月の収入で生活費を賄うことが難しい方は、加入を急がない方がよい場合があります。
積み立てた資金は、在職中に生活費が足りなくなったという理由だけでは、自由に引き出せません。
老後の準備も大切ですが、まずは現在の生活を安定させることが優先です。
家計が赤字の場合や、預貯金がほとんどない場合は、先に支出を見直し、緊急時の資金を確保しましょう。
出産や長期休職を予定している人
近い将来に出産や治療などによる休職を予定している方は、掛金を慎重に設定する必要があります。
選択制への加入によって標準報酬月額が下がると、出産手当金や傷病手当金の金額が少なくなる可能性があるためです。
制度に加入すること自体が必ず不利になるわけではありませんが、受け取る可能性のある社会保険給付と比較して判断する必要があります。
将来の厚生年金をできるだけ減らしたくない人
標準報酬月額が下がると、将来の老齢厚生年金に影響する場合があります。
公的年金を老後の主な収入源として考えており、厚生年金の受給額をできるだけ維持したい方は、掛金を増やしすぎない方がよいでしょう。
はぐくみ企業年金の積立額が増えることと、公的年金が減る可能性の両方を比較することが大切です。
近い将来にまとまったお金が必要な人
住宅購入、子どもの進学、親の介護など、数年以内にまとまった支出を予定している場合は注意が必要です。
はぐくみ企業年金に積み立てたお金は、普通預金のように自由に引き出せません。
近いうちに使う予定のある資金は預貯金として確保し、当面使わない金額だけを積み立てましょう。
転職や退職後の手続きを負担に感じる人
退職時には、一時金として受け取るか、他の年金制度へ移すかなどの手続きが必要になります。
書類を確認せず放置すると、希望する受け取り方を選べなかったり、手続きが遅れたりする可能性があります。
転職や退職を繰り返す予定がある方は、退職時の手続きや受給条件をあらかじめ理解しておく必要があります。
はぐくみ企業年金への加入前に確認したいチェックポイント
はぐくみ企業年金の仕組みや掛金の扱いは、勤務先によって異なります。
インターネット上で見た情報だけで判断せず、自分の勤務先の制度について具体的に確認することが大切です。
加入前には、次の項目をチェックしましょう。
加入は任意か
まず確認したいのは、自分で加入するかどうかを選べる制度なのかという点です。
はぐくみ企業年金は、勤務先が導入したうえで従業員が加入する制度ですが、具体的な加入方法は会社の規程によって異なります。
加入を希望しない場合は、前払い退職金として給与と一緒に受け取れるのか、会社から別の説明があるのかを確認しましょう。
掛金はどこから出るのか
会社が給与とは別に掛金を負担してくれるのか、給与体系を変更して設けた前払い退職金から積み立てるのかによって、加入者にとってのメリットは大きく異なります。
「会社の福利厚生だから、全額会社が負担してくれる」と思い込まず、掛金の財源を確認しましょう。
給与明細上で、どの項目が減り、どの項目が掛金になるのかを見せてもらうと理解しやすくなります。
加入後の手取りはいくらになるか
掛金を積み立てると、毎月の給与や手取りがどの程度変わるのかを確認します。
掛金額だけを見るのではなく、所得税、住民税、社会保険料を含めた加入前後の手取り額を比較することが大切です。
勤務先に複数の掛金パターンを示してもらい、生活に無理がない金額を選びましょう。
標準報酬月額が変わる可能性はあるか
掛金の設定によって標準報酬月額が下がるかどうかを確認しましょう。
給与が少し下がっただけでは標準報酬月額の等級が変わらない場合もあれば、等級が一つ以上下がる場合もあります。
等級が変わらなければ社会保険料も変わらないことがあるため、「掛金を出せば必ず社会保険料が安くなる」とは限りません。
具体的な給与額と掛金額をもとに説明してもらうことが重要です。
厚生年金や社会保険給付にどの程度影響するか
標準報酬月額が下がる場合は、将来の厚生年金や傷病手当金、出産手当金などにどの程度影響する可能性があるかを確認します。
正確な将来額を計算するのは難しい場合もありますが、加入前後でどのような違いが生じるのか、少なくとも仕組みは理解しておきましょう。
近く出産や休職を予定している場合は、給付を受けた後に掛金を増やすなど、加入時期を検討できるか会社へ相談する方法もあります。
掛金を変更・停止できる時期はいつか
収入や家族の状況は将来変わる可能性があります。
掛金を変更できる時期、申し込み期限、最低掛金、積み立てを止められる条件などを確認しましょう。
「家計が苦しくなったら、すぐ翌月から減らせる」とは限りません。
変更可能な時期まで現在の掛金を続けられるよう、最初は余裕のある金額を選ぶことが大切です。
退職した場合はどのような選択肢があるか
退職時に一時金を受け取れるのか、他の企業年金やiDeCoなどへ移換できるのかを確認します。
また、加入期間によって受け取り方や選べる方法が変わる場合があります。
退職時の手続き期限や必要書類についても、事前に知っておくと安心です。
会社の退職金制度とどのような関係があるか
はぐくみ企業年金が、会社独自の退職金とは別に用意されているのか、従来の退職金制度に代わるものなのかを確認しましょう。
企業年金へ加入したことで、会社から受け取れる退職金が減る制度設計になっている可能性もあります。
退職時に受け取れる金額を全体で比較し、はぐくみ企業年金の積立額だけを見て判断しないことが大切です。
受け取り時にどのような税金がかかるか
退職時に一時金として受け取る場合、退職所得控除を利用できることがあります。
ただし、会社から別の退職金を受け取る場合や、ほかの企業年金の一時金を受け取る場合は、税金の計算に影響する可能性があります。
また、退職以外の理由で受け取る場合は、退職所得とは異なる扱いになることもあります。
受取時に必ず非課税になるわけではないため、どのような所得として扱われるのかを確認しておきましょう。
説明資料を保存しているか
加入時に受け取った説明資料、規程、掛金の申込書などは、退職や受給の手続きをするときにも必要になることがあります。
会社の担当者から口頭で説明を受けるだけでなく、制度内容が記載された書面を受け取り、保管しておきましょう。
わからない点がある場合は、曖昧なまま加入せず、次のように具体的に質問すると理解しやすくなります。
- 月2万円を積み立てると手取りはいくら変わるか
- 標準報酬月額の等級は変わるか
- 退職時にはいくら受け取れる見込みか
- 掛金はいつ減額できるか
- 会社の退職金は別に支給されるか
加入前に具体的な金額や条件を確認することで、自分にとってメリットのある制度か判断しやすくなります。
