高齢の家族や介護施設の利用者さんが、日中もウトウトしている、声をかけても反応が鈍い、食事中に眠ってしまうことが増えた――。このような様子を見て、「傾眠傾向と言われたけれど、どういう意味?」「年齢のせいなのか、病気のサインなのか」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
傾眠傾向とは、意識がはっきりせず、眠りがちで、刺激を受けると目を覚ますものの、放っておくとまた眠ってしまうような状態を指して使われることが多い言葉です。
高齢者の場合、夜によく眠れていない、日中の活動量が少ない、薬の影響があるといった理由で眠気が強くなることがあります。一方で、脱水、感染症、低血糖、脳の病気、認知症、せん妄、睡眠時無呼吸症候群などが関係していることもあります。
特に、急に寝ている時間が増えた、声をかけても反応が弱い、食事や水分がとれない、発熱がある、ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくいといった変化がある場合は、早めの対応が必要です。
傾眠傾向は、単なる「眠い状態」とは限りません。普段の様子との違いを見ながら、必要に応じて医師や看護師、ケアマネジャーなどに相談することが大切です。
傾眠傾向とはどのような状態なのか、高齢者に多い原因、家族が注意したいサイン、受診や相談の目安についてわかりやすく解説します。
傾眠傾向とは?どんな状態を指す?
傾眠傾向とは、意識がはっきりせず、眠りがちになっている状態を指す言葉です。
完全に意識を失っているわけではなく、声をかけたり、体を軽くゆすったりすると目を覚ますことがあります。しかし、しばらくするとまた眠ってしまう、会話が続かない、ぼんやりして反応が鈍いといった様子が見られます。
たとえば、次のような状態がある場合、傾眠傾向として表現されることがあります。
・日中もウトウトしている時間が長い
・声をかけると目を開けるが、すぐに眠ってしまう
・食事中や会話中に眠ってしまう
・返事はするが、内容がはっきりしない
・いつもより反応が遅い
・起こしてもぼんやりしている
・活動量が急に減っている
高齢者の場合、「年を取ったから眠いのかな」と思われることもありますが、傾眠傾向は単なる居眠りとは異なる場合があります。
特に注意したいのは、普段の様子との違いです。
もともと昼寝が多い方でも、いつも通り食事ができ、会話もでき、呼びかけにしっかり反応する場合は、大きな問題ではないこともあります。
一方で、急に寝ている時間が増えた、声をかけても反応が弱い、食事や水分がとれない、会話がかみ合わない、発熱や脱水の様子がある場合は、体調不良や病気が関係している可能性があります。
傾眠傾向を見るときは、「眠っているかどうか」だけでなく、「いつもと比べてどう違うか」を確認することが大切です。
家族や介護者は、いつから眠気が強くなったのか、食事や水分はとれているか、薬が変わっていないか、発熱や痛みがないかなどを確認し、必要に応じて医師や看護師に相談しましょう。
高齢者に傾眠傾向が見られる主な原因
高齢者に傾眠傾向が見られる原因は、ひとつとは限りません。
単に「年齢のせい」「眠いだけ」と思っていても、薬の影響や体調不良、感染症、脱水、認知症、せん妄などが関係していることがあります。
夜間の睡眠不足や生活リズムの乱れ
夜によく眠れていないと、日中に強い眠気が出ることがあります。
高齢者は、夜中に何度も目が覚める、トイレで起きる、早朝に目が覚めるなど、睡眠のリズムが乱れやすくなります。夜間の睡眠が十分にとれていない場合、日中にウトウトする時間が増えることがあります。
また、日中の活動量が少ない、外に出る機会が少ない、昼寝が長すぎるといった生活リズムの乱れも、傾眠傾向につながることがあります。
薬の影響
高齢者では、薬の影響で眠気やぼんやり感が出ることがあります。
睡眠薬、抗不安薬、痛み止め、抗アレルギー薬、精神科の薬、認知症の周辺症状に使われる薬などは、眠気やふらつきが出ることがあります。厚生労働省の高齢者の医薬品適正使用に関する指針でも、高齢者に新たな症状が出た場合は、まず薬剤が原因ではないかを疑ってみることが重要とされています。
最近薬が増えた、薬の量が変わった、飲む時間が変わったという場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。自己判断で薬を中止するのは危険なため、必ず専門職に確認することが大切です。
脱水や低栄養
水分や食事の量が減ると、脱水や低栄養によって意識がぼんやりしたり、眠りがちになったりすることがあります。
高齢者は、のどの渇きを感じにくくなることがあり、夏場だけでなく冬場でも脱水に注意が必要です。食事量が減っている、尿の量が少ない、口の中が乾いている、元気がないといった様子がある場合は、体調変化のサインかもしれません。
感染症や発熱
肺炎、尿路感染症、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの感染症でも、傾眠傾向が見られることがあります。
高齢者の場合、感染症があっても高熱が出にくいことがあります。そのため、熱があまり高くなくても、急に元気がなくなる、食事をとらない、反応が鈍い、寝てばかりいるといった変化が先に目立つことがあります。
認知症やせん妄
認知症がある方では、生活リズムの乱れや昼夜逆転によって、日中に眠っている時間が増えることがあります。
また、急にぼんやりする、会話がかみ合わない、時間や場所が分からなくなる、昼夜で状態が変わるといった場合は、せん妄が関係していることもあります。せん妄は、脱水、感染、貧血、手術、入院など体に大きな負担がかかったときに起こることがあり、高齢者や認知症のある方は特に注意が必要とされています。
脳や全身の病気
脳梗塞、脳出血、頭部外傷、心不全、低血糖、腎機能や肝機能の悪化などでも、意識がぼんやりしたり、眠りがちになったりすることがあります。
特に、ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくい、顔の片側が下がる、強い頭痛がある、呼吸が苦しそう、意識が戻りにくいといった症状がある場合は、急いで医療機関へ相談する必要があります。
傾眠傾向は、さまざまな原因で起こります。大切なのは、「いつもの眠気」と決めつけず、普段との違い、薬の変更、食事や水分量、発熱、呼びかけへの反応などを確認することです。
傾眠傾向で注意したいサイン
傾眠傾向があるときは、「眠そうにしている」だけで判断せず、普段の様子と比べてどのような変化があるかを確認することが大切です。
もともと昼寝が多い方でも、食事や水分がとれていて、声かけにしっかり反応し、会話もいつも通りできる場合は、生活リズムの影響や一時的な疲れによることもあります。
一方で、急に眠っている時間が増えた、呼びかけへの反応が弱い、食事や水分がとれないなどの変化がある場合は、体調不良や病気が関係している可能性があります。
特に注意したいサインは、次のようなものです。
・急に寝ている時間が増えた
・声をかけても反応が弱い
・起こしてもすぐに眠ってしまう
・会話がかみ合わない
・食事や水分がとれない
・発熱がある
・尿の量が少ない、口の中が乾いている
・いつもより元気がない
・薬が増えた、薬の量が変わった
・転倒や頭をぶつけた後から眠りがちになった
また、せん妄が関係している場合は、意識の状態が時間帯によって変わることがあります。さっきまで会話できていたのに急にぼんやりする、夜になると混乱が強くなる、場所や時間が分からなくなるといった変化が見られることがあります。MSDマニュアルでも、せん妄では意識レベルが変動し、高齢者では感染症の初発症状として現れることがあるとされています。
次のような症状がある場合は、急いで医療機関へ相談しましょう。
・強く呼びかけても反応がほとんどない
・ろれつが回らない
・片側の手足に力が入らない
・顔の片側が下がっている
・強い頭痛がある
・呼吸が苦しそう
・けいれんがある
・意識が戻りにくい
・転倒や頭部打撲のあとから様子がおかしい
これらは、脳梗塞や脳出血、低血糖、感染症、脱水、薬の影響など、早めの対応が必要な状態が隠れている可能性があります。
高齢者の傾眠傾向では、「少し様子を見よう」と思っているうちに状態が悪化することもあります。普段と違う眠気や反応の鈍さがある場合は、家族だけで判断せず、かかりつけ医、訪問看護師、介護施設の看護師、ケアマネジャーなどに早めに相談しましょう。
傾眠傾向があるときに家族が確認したいこと
高齢者に傾眠傾向が見られるときは、まず「いつもと比べてどう違うか」を確認することが大切です。
単に眠っている時間が長いだけなのか、呼びかけへの反応が弱いのか、食事や水分がとれていないのかによって、対応の緊急度が変わります。
家族が確認したいポイントは、次のようなものです。
・いつから眠りがちになったか
・急に変化したのか、少しずつ変化したのか
・声をかけると反応するか
・会話がいつも通りできるか
・食事や水分はとれているか
・発熱、咳、痛み、下痢、嘔吐などはないか
・尿の量や回数が減っていないか
・転倒や頭をぶつけたことはないか
・薬が増えたり、変更されたりしていないか
・夜に眠れているか
・日中の活動量が減っていないか
特に確認しておきたいのが、薬の変更です。新しい薬を飲み始めた、睡眠薬や痛み止めが増えた、飲む時間が変わったなどがある場合、眠気やふらつきに関係していることがあります。
また、食事や水分がとれていない場合は、脱水や低栄養が進んでいる可能性もあります。口の中が乾いている、尿が少ない、皮膚が乾燥している、ぐったりしているといった様子があれば注意が必要です。
発熱がないから大丈夫とは限りません。高齢者は感染症があっても熱がはっきり出ないことがあり、肺炎や尿路感染症などで、眠りがちになる、元気がなくなる、食欲が落ちるといった変化が先に見られることがあります。
家族ができる対応としては、まず安全な姿勢を保ち、無理に食事や水分をとらせないことも大切です。意識がぼんやりしている状態で無理に飲ませたり食べさせたりすると、むせや誤嚥につながるおそれがあります。
呼びかけに反応があるか、呼吸が苦しそうではないか、顔色が悪くないかを確認し、普段と明らかに違う場合は、かかりつけ医や訪問看護師、介護施設の看護師、ケアマネジャーなどに早めに相談しましょう。
急に反応が弱くなった、ろれつが回らない、片側の手足に力が入らない、転倒後から様子がおかしい、強く呼びかけても起きにくい場合は、救急相談や救急受診を検討する必要があります。
傾眠傾向があるときは、「眠いだけ」と決めつけず、普段との違いをメモしておくと、医師や看護師に相談するときに役立ちます。いつから、どのように変化したのかを伝えられるようにしておきましょう。
まとめ:傾眠傾向は「眠いだけ」と決めつけず、普段との違いを確認しよう
傾眠傾向とは、意識がはっきりせず、眠りがちになっている状態を指す言葉です。声をかけると目を覚ますことがあっても、すぐにまた眠ってしまう、会話が続かない、反応が鈍いといった様子が見られることがあります。
高齢者の場合、夜間の睡眠不足や生活リズムの乱れ、日中の活動量の低下などで眠気が強くなることがあります。一方で、薬の影響、脱水、低栄養、感染症、認知症、せん妄、脳や全身の病気などが関係している場合もあります。
特に、急に寝ている時間が増えた、声をかけても反応が弱い、食事や水分がとれない、発熱がある、会話がかみ合わない、転倒後から様子がおかしいといった場合は注意が必要です。
また、ろれつが回らない、片側の手足に力が入らない、顔の片側が下がっている、強く呼びかけても反応がほとんどない、呼吸が苦しそうといった症状がある場合は、早急に医療機関へ相談しましょう。
家族や介護者ができることは、まず普段の様子との違いを確認することです。いつから眠りがちになったのか、薬の変更はないか、食事や水分はとれているか、発熱や痛みはないか、転倒や頭部打撲はなかったかを整理しておくと、医師や看護師に相談するときに役立ちます。
傾眠傾向は、単なる眠気ではなく、体調変化のサインとして現れることがあります。「年齢のせい」「少し眠いだけ」と決めつけず、いつもと違う様子がある場合は、かかりつけ医、訪問看護師、介護施設の看護師、ケアマネジャーなどに早めに相談しましょう。
高齢者の傾眠傾向では、早めに気づき、原因を確認することが大切です。普段の状態を知っている家族や介護者が変化に気づくことで、必要な対応につなげやすくなります。
