認知症の母の依存がひどい…家族が限界になる前にできる対応と相談先

 

ご相談者

はじめまして。私は現在、認知症の母を介護しています。最近、母の私への依存がますます強くなってきており、どのように対応すればよいのか悩んでいます。

母は、私がそばにいないと強い不安を感じるようです。少しでも目を離すと、「どこに行ったの?」「一人にしないで」と不安を訴えます。食事、トイレ、着替え、ちょっとした移動など、生活のあらゆる場面で私に付き添いを求めることが増えました。私自身の時間はほとんど取れず、家事や仕事にも支障が出ています。

特につらいのは夜間です。夜中にも何度も呼ばれるため、睡眠不足が続き、心身ともに疲れ果てています。他の家族も協力してくれるのですが、母は特に私にだけ強く依存しており、他の人が対応しても不安が落ち着かないことがあります。

介護サービスの利用も考えていますが、母が嫌がるのではないか、どのサービスを使えばよいのか分からず、なかなか踏み出せません。

母を見捨てたいわけではありません。でも、このままでは自分が壊れてしまいそうです。認知症の母の依存が強い場合、家族はどのように対応すればよいのでしょうか。

ご相談ありがとうございます。

認知症のお母さまが相談者さまに強く依存し、日々の介護に限界を感じていらっしゃるのですね。

少し離れただけで不安を訴えられたり、夜間も何度も呼ばれたりする状態が続くと、介護する側は休む時間がなくなってしまいます。

特に「自分にだけ依存している」と感じる場合、逃げ場がないように思えて、精神的にも追い詰められやすくなります。

まず知っておきたいのは、認知症の方が特定の家族に強く頼ることは珍しくないということです。

認知症が進むと、記憶や判断力が低下するだけでなく、不安や混乱が強くなることがあります。その不安をやわらげるために、本人にとって一番安心できる相手を何度も呼んだり、そばにいてほしがったりすることがあります。

つまり、お母さまの依存は、単なるわがままではなく、不安や混乱の表れである可能性があります。

ただし、だからといって、介護する家族がすべてに応え続けなければならないわけではありません。

介護者が眠れない、休めない、自分の生活を保てない状態が続けば、心身の限界を迎えてしまいます。結果的に、本人への対応がきつくなったり、在宅介護を続けること自体が難しくなったりすることもあります。

大切なのは、お母さまの不安に寄り添いながらも、相談者さま一人に依存が集中しない仕組みを作ることです。

認知症の人が家族に依存しやすくなる理由

認知症の方が特定の家族に依存する背景には、不安、混乱、見当識障害、環境の変化への弱さなどがあります。

本人の中では、「今どこにいるのか」「これから何をするのか」「家族は戻ってくるのか」が分からなくなり、不安が大きくなっている場合があります。

そのとき、いつもそばにいてくれる家族、よく世話をしてくれる人、安心できる人に強く頼ろうとすることがあります。

不安を安心できる人で埋めようとしている

認知症になると、物忘れだけでなく、不安感が強くなることがあります。

たとえば、家族が少し離れただけでも、「置いていかれた」「一人になった」「何か大変なことが起きた」と感じてしまうことがあります。

本人にとっては、実際に一人でいる時間が短くても、不安の感じ方はとても大きい場合があります。

そのため、安心できる家族を何度も呼ぶ、常にそばにいてほしがる、外出を止めようとする、といった行動につながることがあります。

いつもの人でないと落ち着かない

認知症の方は、慣れた人や慣れた環境に安心しやすい一方で、変化に弱くなることがあります。

そのため、他の家族が手伝おうとしても、「あなたじゃないと嫌」「いつもの人がいい」と拒否することがあります。

これは、他の家族が嫌いというより、本人の中で安心できる相手が限られているために起こることがあります。

介護する側からするとつらい状況ですが、本人の安心のよりどころが一人に集中している状態ともいえます。

介護者が応え続けることで依存が強まることもある

本人が不安を訴えるたびに、家族がすぐに駆けつけることは、短期的には安心につながります。

しかし、毎回すぐに応じ続けると、「不安になったらこの人を呼べばよい」という形が固定され、依存が強くなることもあります。

もちろん、冷たく突き放す必要はありません。

ただ、少しずつ他の人やサービスにも慣れてもらい、「この人だけでなくても大丈夫」という経験を増やしていくことが大切です。

まず見直したい日常の接し方

認知症の母親の依存が強い場合、急に距離を取ろうとすると、かえって不安が強くなることがあります。

そのため、対応のポイントは「安心感を与えながら、少しずつ離れる時間を作ること」です。

否定せず、まず安心できる言葉をかける

お母さまが「どこに行くの?」「一人にしないで」と不安を訴えたときに、「さっき言ったでしょ」「大丈夫だから静かにして」と返すと、不安が強くなることがあります。

まずは、本人の気持ちを受け止める言葉をかけることが大切です。

たとえば、次のような声かけです。

「ここにいるから大丈夫だよ」

「少し台所に行くだけだから、すぐ戻るね」

「心配だったね。今からお茶を入れてくるね」

「時計の針がここに来たら戻るね」

本人が安心しやすい言葉を、短く、分かりやすく伝えることがポイントです。

見通しを伝えてから離れる

認知症の方は、家族が急にいなくなると不安になりやすいことがあります。

そのため、離れる前に「どこへ行くのか」「どのくらいで戻るのか」を伝えるようにしましょう。

たとえば、

「洗濯物を干してくるね。10分くらいで戻るよ」

「隣の部屋で仕事をするね。何かあったら声をかけてね」

「買い物に行ってくるね。お昼までには帰るよ」

といった形です。

ただし、時間の感覚が分かりにくくなっている場合は、「時計の長い針が上に来たら」「このテレビ番組が終わるころ」など、本人が理解しやすい目印を使うとよいでしょう。

安心できるものをそばに置く

家族がそばにいない時間を少しでも安心して過ごせるように、本人が落ち着くものを用意する方法もあります。

たとえば、

・家族の写真
・お気に入りのひざ掛け
・昔から使っているクッション
・好きな音楽
・ぬいぐるみや人形
・本人が安心するメモ
・家族の声を録音した音声

などです。

「すぐ戻るよ」「ここで待っていてね」と書いたメモを見える場所に置くことで安心する方もいます。

ただし、人によって合う方法は違います。本人が落ち着くものを少しずつ試してみましょう。

最初から長時間離れようとしない

依存が強い状態で、急に長時間離れると、本人の不安が大きくなることがあります。

まずは、短い時間から始めましょう。

たとえば、最初は同じ部屋の中で少し距離を取る、次に隣の部屋で家事をする、慣れてきたら短時間の外出をする、というように段階を踏みます。

「離れても戻ってくる」
「この人がいなくても大丈夫な時間がある」

という経験を少しずつ積み重ねることが大切です。

介護者ひとりに依存を集中させない工夫

お母さまが相談者さまに強く依存している場合でも、少しずつ他の人に慣れてもらうことは大切です。

最初はうまくいかなくても、繰り返し関わることで、他の家族や介護職に安心感を持てるようになる場合があります。

他の家族にも同じ対応をしてもらう

家族が協力してくれる場合は、対応の仕方をそろえることが大切です。

相談者さまだけが優しく対応し、他の家族が「大丈夫だから我慢して」と突き放すような対応をすると、本人はますます相談者さまだけを求めるようになることがあります。

家族で、次のような対応を共有しておきましょう。

・否定しない
・短い言葉で安心させる
・予定を分かりやすく伝える
・同じ説明を繰り返す
・できたことをほめる
・不安が強いときは無理に説得しない

対応を家族でそろえることで、本人が他の家族にも少しずつ安心しやすくなります。

介護サービスは短時間から始める

デイサービスや訪問介護をいきなり長時間利用すると、本人が強く拒否することがあります。

最初は短時間から始め、同じ曜日、同じ時間、同じスタッフに関わってもらうなど、できるだけ安心しやすい形を作るとよいでしょう。

たとえば、訪問介護なら、最初は掃除や買い物の支援として入ってもらい、本人が「知らない人に介護される」という抵抗感を持ちにくい形から始める方法もあります。

デイサービスも、いきなり丸一日ではなく、見学や短時間利用から始められる場合があります。

「家族の代わり」ではなく「安心できる人」を増やす

介護サービスを利用するときに大切なのは、本人に「家族に見捨てられた」と感じさせないことです。

「お母さんを預ける」ではなく、「お母さんが安心して過ごせる場所を増やす」「家族以外にも頼れる人を作る」という考え方で進めると、家族の気持ちも少し楽になります。

本人に伝えるときは、

「私が休みたいから行って」ではなく、

「お風呂に入りやすいように手伝ってくれる人が来てくれるよ」

「一緒に体操したり、お茶を飲んだりできる場所があるよ」

「家に来てくれる人と少しずつ慣れていこうね」

というように、本人にとってのメリットを伝えるとよいでしょう。

利用を検討したい介護サービス

認知症の母親への依存が強く、家族が休めない状態になっている場合は、介護保険サービスの利用や見直しを検討しましょう。

すでにサービスを使っている場合でも、現在の負担に合っていなければ、回数や内容を調整できることがあります。

デイサービス

デイサービスは、日中に施設へ通い、食事、入浴、体操、レクリエーションなどを受けられるサービスです。

本人が日中を安全に過ごせるだけでなく、介護する家族にとっては休息や仕事の時間を確保しやすくなります。

認知症対応型のデイサービスであれば、認知症の方への対応に慣れたスタッフが関わってくれる場合があります。

最初は嫌がることもありますが、相性のよい施設が見つかると、本人の安心できる場所になることもあります。

訪問介護

訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、排泄、入浴、掃除、洗濯、買い物などを支援するサービスです。

お母さまが外出やデイサービスを嫌がる場合でも、自宅に来てもらう訪問介護から始めると受け入れやすいことがあります。

最初は家族も一緒に同席し、徐々にヘルパーと本人だけで過ごす時間を作る方法もあります。

同じヘルパーが継続して関われると、本人が安心しやすくなることがあります。

ショートステイ

ショートステイは、短期間施設に宿泊して介護を受けるサービスです。

夜間も頻繁に呼ばれて眠れない、介護者が体調を崩している、冠婚葬祭や仕事で家を空ける必要があるといった場合に利用できます。

認知症の方の場合、最初は環境の変化に戸惑うこともあります。そのため、いきなり長期間利用するのではなく、短い日数から試す方法もあります。

介護者が睡眠を確保するためにも、ショートステイは大切な選択肢です。

訪問看護や医師への相談

不安が強い、夜間に落ち着かない、睡眠リズムが乱れている、幻覚や妄想がある、怒りっぽさが増えている場合は、医療的な相談も必要です。

認知症の症状と思っていても、痛み、便秘、脱水、感染症、薬の影響、不眠などが不安や興奮を強めていることがあります。

かかりつけ医、認知症専門医、訪問看護師などに相談し、体調面や薬の見直しも含めて確認してもらいましょう。

介護者が限界を迎える前に相談したいサイン

認知症の母親への依存に対応し続けていると、介護する側が自分の限界に気づきにくくなることがあります。

次のような状態が続いている場合は、早めに助けを求めるサインです。

・夜眠れない日が続いている
・食欲がない
・理由もなく涙が出る
・イライラして怒鳴ってしまう
・本人に優しくできない自分を責めている
・介護のことを考えるだけで苦しい
・仕事や家事に支障が出ている
・自分の時間がまったくない
・家から離れられない
・「もう限界」と感じることが増えた

このような状態は、相談者さまの努力不足ではありません。

介護の負担が大きすぎるサインです。

すぐに、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護相談窓口、かかりつけ医などに相談しましょう。

「まだ大丈夫」と我慢し続けるよりも、早めに相談したほうが、本人にとっても家族にとっても安全な介護体制を作りやすくなります。

施設入居を検討することも選択肢のひとつ

在宅での介護が限界に近づいている場合、施設入居を検討することも選択肢のひとつです。

施設に入れることに罪悪感を持つ方もいますが、施設入居は「見捨てること」ではありません。

本人の安全を守り、介護する家族の生活と健康を守るための選択でもあります。

特に、次のような場合は、在宅介護だけで支えることが難しくなっている可能性があります。

・夜間の呼び出しが多く、家族が眠れない
・徘徊や転倒のリスクが高い
・排泄介助や入浴介助の負担が大きい
・認知症による不安や混乱が強い
・介護サービスを使っても家族の負担が減らない
・介護者の心身に限界がきている
・本人に強く当たってしまうことが増えた

施設に入居しても、家族としての関わりがなくなるわけではありません。

面会、衣類の準備、本人の好みの共有、医療や生活方針の相談など、家族だからこそできる関わりは続きます。

在宅か施設かを一人で決める必要はありません。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、本人の状態と家族の負担をふまえて考えていきましょう。

まとめ:認知症の母の依存は、ひとりで抱え込まず支援につなげよう

認知症の母親が特定の家族に強く依存する背景には、不安や混乱、安心できる相手を求める気持ちがあることがあります。

そのため、依存を単なるわがままと決めつけるのではなく、本人が何に不安を感じているのかを考えることが大切です。

一方で、介護する家族がすべてに応え続ける必要はありません。

夜間も眠れない、自分の時間がない、心身ともに限界を感じている状態で介護を続けることは、相談者さまにとっても、お母さまにとっても危険です。

まずは、安心できる声かけをしながら、少しずつ他の家族や介護職に慣れてもらうことを考えましょう。

デイサービス、訪問介護、ショートステイ、訪問看護などを活用することで、本人の安心できる場所や人を増やし、介護者の休息時間を確保しやすくなります。

また、不安や夜間の落ち着かなさが強い場合は、体調不良や薬の影響が関係していることもあるため、かかりつけ医や認知症専門医に相談することも大切です。

認知症の介護は、家族の努力だけで乗り切るものではありません。

「もう限界かもしれない」と感じる前に、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護相談窓口などに相談し、介護者自身の心と体を守る体制を整えていきましょう。

執筆者

この記事の執筆者
清水 健児

バディファミリーサービス / 生活サポートアドバイザー

バディファミリーサービス所属。
高齢者の生活支援や介護保険外サービスの相談に多数対応。

外出サポート、買い物同行、施設探しなど、
家族だけでは難しい生活支援のサポートを行っている。

現在は地域サロンの運営や、
高齢者と家族を支える生活支援サービスの普及活動にも取り組んでいます。