私の父(78歳)は最近、転倒による骨折で入院しました。入院から数日後、急に「家に帰る!」と怒ったり、「誰かが盗みに来る」と怯えたり、今まで見たことのない言動をするようになりました。看護師さんから「せん妄の症状です」と説明されましたが、私たち家族はどう対応すればよいのか分からず、戸惑っています。
せん妄とはどういう状態で、家族としてどんな対応が望ましいのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
お父様のように、高齢の方が入院や環境の変化などをきっかけに「せん妄」を起こすことは決して珍しいことではありません。
混乱や不安、怒りといった症状は、ご本人が「現実」と感じているものなので、否定や説得よりも安心感を与えることが大切です。
家族にできることはたくさんあります。たとえば…
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・穏やかな声かけで安心させる
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・普段使っていた時計や写真などを病室に置いて、見慣れた環境をつくる
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・面会時にゆっくり話しかけ、今が「安全な場所」であると伝える
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・症状を医療スタッフと共有し、必要なサポートを一緒に考える
せん妄の基本的な知識や家族ができる対応策を詳しく解説していきます。
せん妄とは?原因・症状・家族ができること
せん妄とは?
せん妄は、急に始まる意識や認知機能の障害で、時間や場所がわからなくなる(見当識障害)、幻覚や妄想が現れる、感情が不安定になるなどの症状が見られます。
特に高齢者では、入院・感染症・薬の副作用などをきっかけに発症することがあります。
せん妄の主な原因
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急な環境の変化(入院、引っ越しなど)
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薬の副作用(睡眠薬や鎮痛薬など)
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脱水、栄養不足
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感染症(肺炎、尿路感染症など)
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睡眠不足や過度のストレス
家族ができる5つのサポート
1. 安心できる環境を整える
せん妄を起こしている人は、今自分がどこにいるのか、何が起こっているのか分からなくなることがあります。病室という慣れない環境に加え、見慣れない看護師や機器に囲まれることで、不安や混乱が増すのです。
家族としてできることは、できるだけ「日常」に近い環境をつくることです。たとえば以下のような工夫が役立ちます:
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・普段使っている眼鏡や補聴器を持参する
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・家で使っていたひざ掛けや枕カバーを病室に置く
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・孫や家族の写真、手紙などをベッドサイドに飾る
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・カレンダーや時計を設置し、日付と時間の感覚を保ちやすくする
これらはすべて、本人に「ここは安全な場所だ」と感じてもらうための大切な要素になります。
2. 穏やかでゆっくりした声かけ
せん妄の症状が出ている人は、外からの刺激にとても敏感です。声のトーンが強かったり、急かすような話し方をすると、不安や怒りが増幅することがあります。
まずは落ち着いたトーンで、短い言葉で話しかけてみてください。ポイントは以下のとおりです:
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ゆっくり目を見て話す
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名前を呼び、「〇〇さん、大丈夫だよ」「ここは病院だよ」と繰り返し伝える
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幻覚や妄想があっても否定せず、「怖かったね」と共感の言葉をかける
話しかけることそのものが、本人の心の安定につながります。焦らず、穏やかに寄り添う姿勢が大切です。
3. 医療スタッフと情報を共有する
家族だからこそ知っている情報があります。本人の性格、普段の生活スタイル、睡眠のリズム、服薬の履歴などは、医療スタッフが適切なケアを行ううえで非常に重要です。
また、「せん妄が起きやすい人かもしれない」と思った場合、あらかじめ伝えておくことで予防的な対応ができることもあります。
たとえば:
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「夜になると混乱しやすい傾向がある」
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「以前、入院中に似た症状があった」
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「この薬で副作用が出たことがある」
といった情報は、非常に有用です。医師・看護師との連携を積極的に行い、チームの一員としてサポートする意識を持ちましょう。
4. 睡眠や休息をサポート
せん妄の予防・回復にとって、質の良い睡眠は非常に重要です。特に高齢者は、環境の変化によって昼夜逆転しやすく、それがせん妄を悪化させることもあります。
家族ができるサポートには、次のようなものがあります:
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日中に自然光を浴びさせ、体内時計を整える
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昼寝を長時間しないように声をかける
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夜間の照明や音を調整し、静かで落ち着いた環境をつくる
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面会時間を本人の生活リズムに合わせて調整する
睡眠導入剤の使用については、必ず医師と相談の上行ってください。薬だけに頼らず、環境調整や生活リズムの工夫がとても大切です。
5. 否定しない・受け止める姿勢
せん妄の特徴のひとつに、「現実には存在しないものが見える・聞こえる」「誰かに狙われていると思い込む」といった幻覚や妄想があります。
これに対して、「そんなことないでしょ!」と否定したり、「気のせいだよ」と突き放してしまうと、かえって不安や攻撃性を強める結果になることがあります。
正しい対応は、「事実を訂正する」のではなく、「感情に寄り添う」ことです。
たとえば:
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「誰かが入ってきた気がする」→「怖かったんだね。私がそばにいるから大丈夫だよ」
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「財布を盗まれた」→「それは大変だったね。今一緒に探してみようか」
といったように、本人が感じている“現実”を受け止めつつ、安心感を与えることが大切です。
せん妄って治るの?
結論から言うと、多くのせん妄は治ります。
せん妄は一時的な脳機能の混乱によって起こる状態であり、原因を特定して適切な対応をすれば、数日〜数週間で改善するケースが多いです。
ただし、治り方や回復までの期間は、以下のような要因によって変わってきます:
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原因が明確で、早期に取り除けたかどうか
例:感染症によるせん妄なら、抗生剤で治療すれば改善が見込まれます。 -
本人の基礎疾患(認知症・脳疾患など)の有無
認知症がある方は、せん妄からの回復が遅れることがあります。 -
環境整備と家族の関わり
安心できる環境や、穏やかなサポートが回復を大きく助けます。 -
服用している薬の種類や量
睡眠薬・鎮静薬・抗うつ薬などが原因の場合、減薬・中止で改善することも。
せん妄が「長引く」「繰り返す」ときは?
まれに、せん妄が数週間以上続いたり、退院後に再発したりすることもあります。
このようなケースでは、
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元の認知機能の低下(認知症など)が影響している
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身体的な疾患(脱水、低栄養、内臓の病気など)が改善していない
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環境の変化や睡眠の乱れが続いている
といった背景が隠れている場合があります。
「なかなか元に戻らないな」と感じたら、早めに主治医に相談してください。認知機能検査や、薬の見直しが必要な場合もあります。
回復のために家族ができること
治療は医療者が行いますが、回復を早めるための鍵を握るのは“家族の存在”です。
前述のとおり、安心できる環境や穏やかな関わりは、せん妄の改善にとって非常に大きな意味を持ちます。
「いつかまた元気に戻る」と信じて、焦らず見守っていきましょう。
せん妄は“終わりが見えない病気”ではなく、“出口のある一時的な状態”です。
家族が“やってはいけない”5つの対応
せん妄の症状に戸惑い、不安になるのは当然のことです。
しかし、家族の善意から出た言動が、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。ここでは、せん妄の方に対して避けるべき対応を5つ紹介します。
1. 強く否定する・怒る
せん妄の状態では、本人にとって幻覚や妄想は「現実そのもの」です。
「そんなわけないでしょ!」「いい加減にして」などと否定したり怒ったりすると、混乱や不安がさらに強まり、興奮状態になることがあります。
❌ NG例:
「誰も盗んでないでしょ!」
「また変なこと言ってる!」
✅ OK例:
「そう思ったんだね。びっくりしたね」
「私がいるから大丈夫だよ」
2. 無理に説得しようとする
家族としては、「今は病院だよ」「そんな人いないよ」と正しい情報を伝えたくなるものです。
しかし、せん妄状態の方にとっては、論理的な説明は通じにくく、逆に混乱を深める結果になることがあります。
説得よりも、まずは感情に寄り添うことを優先しましょう。
3. 焦って大声を出す・早口で話す
混乱している人に焦って対応してしまうと、相手も不安になります。
特に高齢者は、聴覚や認知機能の低下で、早口や大声が威圧的に感じられることがあります。
❌ NG例:
「ちょっと!何やってるの!」
「早く落ち着いて!」
✅ OK例:
「ゆっくりで大丈夫だよ」
「一緒にゆっくり考えようね」
4. 一人きりにしてしまう
せん妄の方は、急な環境変化や孤独によって症状が悪化することがあります。
病室で長時間一人にさせることは、不安や恐怖感を強める要因になるため、可能な限り面会や声かけを意識しましょう。
もちろん、常に付き添うのは現実的でないため、看護師との連携も重要です。
5. 必要以上に制止・拘束しようとする
暴れる、徘徊しようとする、といった行動に対して、反射的に腕をつかんだり、無理に止めようとすることがありますが、これも逆効果になる場合があります。
ご本人にとっては「逃げなければ危険」と思っているため、無理に制止すると攻撃的になる可能性があります。
対応に不安がある場合は、医療者に状況をすぐに伝えることが最優先です。
やってはいけないのは“否定と制圧”。必要なのは“安心と共感”
せん妄の対応で最も大切なのは、「本人が見ている世界を否定せず、感情に寄り添う」ことです。
家族が少し視点を変えるだけで、ご本人の不安はぐっと軽減され、落ち着きを取り戻すこともあります。
わからないことや不安なときは、一人で抱え込まずに医療スタッフと連携することが最も安全で確実な方法です。
まとめ:せん妄は家族の関わりで回復をサポートできる
せん妄は一時的な状態であり、多くの場合は適切な対応と環境調整によって改善が見込めます。
家族の安心感ある声かけや環境づくりが、ご本人の不安をやわらげ、早期の回復につながります。
少しでも不安なときは、医師や看護師に気軽に相談してください。せん妄と向き合ううえで、家族も「ひとりじゃない」ことを忘れずに。