「高齢の父によだれが出るようになりました…これって病気でしょうか?」

 

ご相談者

80代の父のことでご相談です。
ここ数ヶ月、食事中だけでなく普段の会話やテレビを見ているときにも、よだれ(唾液)が口から垂れてしまうことが増えてきました。

以前はこんなことはなかったのですが、最近は食事中にもむせやすくなったり、時々うまく飲み込めない様子も見られます。
父本人はあまり気にしていないのですが、家族としては「何か病気なのか」「認知症や他の病気のサインではないか」と心配です。

高齢者によだれが出やすくなるのは、どんな原因や病気が考えられるのでしょうか?
受診した方がよいタイミングや、家庭でできるケアについても教えていただきたいです。

ご相談ありがとうございます。

お父様によだれが出やすくなったということで、ご家族としてご心配なお気持ち、よくわかります。
高齢になると、これまでなかった症状が急に現れることも多く、「もしかして何かの病気では…?」と不安になる方も少なくありません。

よだれが増える背景には、年齢による体の変化や口腔・嚥下(えんげ)機能の低下、神経や筋力の衰えなど、さまざまな原因が考えられます。また、時には病気や認知症が影響している場合もあります。

今回は、高齢者によだれが出やすくなる主な理由や考えられる病気、受診の目安、ご家庭でできるケア方法について、わかりやすくご説明します。

ご家族ができるサポートのヒントもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

高齢者によだれが出やすくなる主な原因

高齢者でよだれが目立つようになる場合、さまざまな体の変化や健康状態が関係していることが多いです。主な原因を以下にまとめます。

1. 口腔や舌、飲み込む力(嚥下機能)の低下

年齢とともに、口や舌、のどの筋肉が衰え、唾液をうまく飲み込む力(嚥下機能)が弱くなることがあります。
こうした変化があると、口の中にたまった唾液を無意識のうちにうまく処理できず、よだれとなってあふれてしまうことがあります。

2. 口を閉じる力の低下や姿勢の変化

加齢や病気によって、口元の筋肉や顔まわりの筋力が弱くなったり、普段から口が開いてしまったりすることがあります。また、姿勢が悪くなりがちな高齢者では、重力の影響で唾液がこぼれやすくなることも。

3. 神経系の疾患や認知症

パーキンソン病や脳梗塞後遺症、アルツハイマー型認知症などの神経系の病気は、唾液のコントロールや飲み込む反射がうまく働かなくなるため、よだれが出やすくなります。
この場合は、他にも手足の動きや言葉、記憶などに変化が見られることもあります。

4. お薬の副作用や口腔トラブル

服用している薬の副作用で唾液の分泌が増えたり、逆に口が乾いて嚥下しづらくなったりすることがあります。また、入れ歯が合わない、虫歯や歯周病がある場合も、口の中の感覚が変化してよだれが出やすくなることもあります。

このように、高齢者のよだれは単なる老化現象だけでなく、体のさまざまなサインや病気の一部として現れる場合があります
次のセクションでは、受診の目安や、どんなときに医療機関へ相談すべきかについてご案内します。ご希望があれば続けてご提案いたします。

どんなときに受診すべき?——医療機関への相談の目安

高齢者によだれが増える場合、自然な加齢による変化のこともありますが、なかには受診や専門的なサポートが必要なケースもあります。以下のような症状が見られるときは、早めにかかりつけ医や専門の医療機関に相談しましょう。

むせやすい・食事中に咳き込むことが増えた

よだれだけでなく、飲み込むときにむせやすい、咳き込む、食事中に苦しそうな様子がある場合は、嚥下(えんげ)障害や誤嚥(ごえん)リスクが考えられます。
誤嚥性肺炎は高齢者の命に関わることも多いため、早めの評価・対応が大切です。

食事や水分摂取が減ってきた・体重減少がみられる

食べる量や飲む量が減ってきたり、短期間で体重が減少している場合も要注意です。体力や免疫の低下につながるだけでなく、何らかの病気や体調不良のサインかもしれません。

言葉がはっきりしない・口が動きにくい・顔の動きが左右で違う

顔や口まわりの筋力低下、ろれつが回らない、表情が動きにくいといった場合は、脳卒中やパーキンソン病、神経疾患の可能性もあります。
急な症状の場合は特に、すぐに医療機関へ連絡を。

物忘れや認知症の症状が進んでいる

認知症の進行にともなって、よだれが出やすくなることもあります。
最近「物忘れが増えた」「日常生活に変化がある」などの場合は、認知症専門外来やもの忘れ外来への相談もおすすめです。

その他、本人や家族が「何かおかしい」と感じるとき

「今までと違う」「なんとなく様子が変わった」など、家族の違和感や気づきも大切な受診のきっかけになります。
早期に相談することで、症状の悪化防止や適切なケアにつながります。

迷ったときは、まずはかかりつけ医に相談
受診の目安がわかりにくい場合も、かかりつけ医や地域の相談窓口(地域包括支援センターなど)にまずは気軽に相談してみましょう。

ご家庭でできるケアとサポートのポイント

高齢者によだれが出やすくなった場合、ご家庭でできる工夫やケアもたくさんあります。日常生活の中で、無理なく続けられるポイントをまとめました。

口腔体操や嚥下体操を取り入れる

口や舌、のどの筋肉をやさしく動かす「口腔体操」「嚥下体操」は、よだれや飲み込みにくさの予防・改善に効果的です。
「パ・タ・カ・ラ」と大きく発音したり、口を大きく開け閉めする動きを毎日少しずつ取り入れてみましょう。

姿勢を正す・食事環境を整える

普段から背筋を伸ばし、足をしっかり床につけて座ることで、自然と飲み込む力も働きやすくなります。
食事のときは落ち着いた雰囲気で、ゆっくりとよく噛んで食べることも大切です。

口腔ケアをしっかり行う

歯磨きや入れ歯のケアを毎日行い、口の中を清潔に保つことで、口腔トラブルや感染症の予防につながります。
また、口腔ケアは唾液の分泌を促し、飲み込みやすさの維持にも役立ちます。

水分・食事摂取を見守る

水分不足や食事の偏りは、口腔や嚥下機能の低下につながります。
こまめな水分補給や、やわらかく食べやすい食事メニューを意識することもサポートのひとつです。

声かけや安心できる環境づくり

「大丈夫?」「ゆっくりでいいよ」など、温かい声かけはご本人の安心につながります。
緊張や不安が強いと、ますます飲み込みづらくなったり、症状が悪化することもあるため、穏やかで落ち着いた環境を心がけましょう。

◆ 困ったときは専門家に相談を

ご家庭で工夫しても症状が続く場合や、急激な変化がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。

  • 歯科医院やかかりつけ医での口腔機能のチェック

  • 地域の訪問看護やリハビリスタッフへの相談

  • 地域包括支援センターや介護相談窓口の活用

一人で悩まず、専門家の力を借りながら、ご本人とご家族が安心して過ごせる工夫を続けていきましょう。