認知症の父がトイレを汚すようになりました…家族にできる対策と工夫を知りたい

 

ご相談者

70代の父が認知症を患っています。
最近、トイレの使い方が以前と変わり、便座や床を汚してしまうことが増えてきました。
本人も失敗を気にしている様子ですが、家族としては片付けや掃除が大変で、どう声をかけたり、どんな工夫をすればよいのか悩んでいます。

こういった場合、どのような対策やサポート方法があるのでしょうか?
トイレを汚すのを防ぐための工夫や、家族が気をつけるべきポイントについて教えてください。

ご相談ありがとうございます。

認知症の方の介護では、「トイレの失敗」や「汚してしまうこと」が大きな悩みのひとつです。
「なぜ急にトイレをうまく使えなくなったのか」「どう声をかけたらいいのか」と戸惑うご家族も多く、気まずさや疲れを感じることも少なくありません。

認知症によるトイレトラブルは、本人のプライドや自信にも影響しやすいデリケートな問題です。
この記事では、なぜトイレを汚してしまうのかという原因や、ご家庭でできる工夫、家族が無理なく続けられる対策や声かけのポイントを分かりやすくご紹介します。

なぜ認知症の人はトイレを汚してしまうのか?——主な原因

認知症になると、今までできていたトイレの使い方が急にうまくいかなくなることがあります。
その背景には、いくつかの要因が複雑に関係しています。

1. 記憶力や判断力の低下

トイレに行くこと自体を忘れてしまったり、「どこがトイレなのか」「どうやって使うのか」をうまく思い出せなくなる場合があります。
便座やペーパーの位置を迷ったり、終わったあとどうすればよいかわからなくなることで、トイレが汚れてしまうことが増えます。

2. 空間認識や身体の動きの衰え

認知症が進行すると、目で見た情報を正しく理解できなくなったり、自分の体を思うように動かすのが難しくなることがあります。
便器の位置にうまく座れなかったり、ズボンや下着の上げ下げがうまくいかず、床や壁を汚してしまうことも。

3. 尿意・便意のコントロールが難しくなる

「トイレに行きたい」という感覚自体が鈍くなったり、急に強い尿意や便意が襲ってきて間に合わないケースもあります。
これによって焦ってしまい、十分な準備ができずに失敗することも多くなります。

4. 生活環境やトイレの使いにくさ

照明が暗い、トイレの場所が分かりにくい、手すりがなく不安定、トイレットペーパーの場所が分かりにくい――
こうした物理的な要因が重なると、失敗や汚れが増えることがあります。

認知症の方がトイレを汚さないための具体的な対策・工夫

1. トイレの場所や使い方を分かりやすくする

  • トイレのドアや壁に「トイレ」と大きく書いた表示やイラストを貼る

  • 夜間は足元灯やセンサーライトでトイレまでの道を明るくする

  • トイレの場所を移動させない・家具などで動線をさえぎらないようにする

2. 便器やトイレットペーパーの位置を分かりやすくする

  • 便座やペーパーの位置に目印(色テープ・シールなど)を付けておく

  • 便座に座るときに手を添えて誘導する

  • ペーパーやおしりふきを手に取りやすい場所にセットする

3. 使いやすいトイレ環境を整える

  • 手すりや背もたれ付きの便座で体を安定させる

  • 便座の高さや形を、ご本人が使いやすいものに調整する

  • 立ち上がりやすいように、足元マットや滑り止めを設置する

4. 衣服を脱ぎ着しやすくする工夫

  • ズボンや下着は、前開きやゴムタイプなど脱ぎやすいものにする

  • 服の色やデザインをシンプルにし、前後が分かりやすいものにする

5. 定期的な声かけや付き添いも活用

  • 「そろそろトイレに行きませんか?」と、定期的に声をかける

  • 失敗が多い場合は、トイレまで一緒に付き添ってあげる

  • トイレのタイミングを記録しておき、失敗のパターンを把握する

家族が気をつけたい声かけと本人への配慮

トイレの失敗や汚れが続くと、家族もついイライラしてしまったり、注意したくなるものです。しかし、認知症の方は「できない自分」にショックを受けたり、自信を失ってしまうことも多いものです。
ご本人のプライドや安心感を守るために、以下のような配慮や声かけを意識しましょう。

1. 失敗を責めず、安心できる言葉をかける

  • 「大丈夫だよ」「誰にでもあることだから気にしなくていいよ」と声をかけ、本人が安心できるようにする

  • 片付けや掃除をするときも、できるだけ本人の前で大げさに騒がず、さりげなく対応する

2. 本人の自尊心を傷つけない配慮

  • 「どうしてできないの?」などの否定的な言葉や表情は避ける

  • ご本人の前でトイレの失敗を家族同士で話題にしない

  • 小さな成功(うまくトイレができたとき)は積極的にほめる

3. できることは自分でやってもらう

  • 本人が自分でできることは、なるべく任せる

  • 何でも先回りしてやりすぎず、できる範囲で自立を尊重する

4. 恥ずかしさや混乱に寄り添う

  • 失敗を本人が気にしている様子があれば、「みんな同じようなことがあるよ」と共感を示す

  • 初めての環境やトイレでは混乱しやすいので、優しく誘導したり、一緒に確認してあげる

5. 「ありがとう」「助かったよ」など感謝を伝える

  • どんな小さなことでも「ありがとう」「手伝ってくれて助かったよ」と伝えることで、本人の自己肯定感や安心感につながります。

トイレ介助に役立つ便利グッズ・介護サービスと相談先

1. トイレの失敗を減らす便利グッズ

  • 防水マットや床シート
     便座まわりや床に敷くだけで、汚れの掃除がぐっとラクになります。使い捨てタイプや洗濯可能なタイプも選べます。

  • 失敗を防ぐ「尿取りパッド」や「リハビリパンツ」
     パンツ型おむつや尿取りパッドは、外から目立ちにくく、失敗したときの安心材料になります。最近は蒸れにくい・におい対策タイプも増えています。

  • トイレ誘導アラーム・センサー
     人感センサーやタイマーを使って「トイレの時間」を知らせてくれる便利グッズもあります。ご本人がトイレを忘れがちな場合におすすめです。

  • おしりふき・大判ウェットティッシュ
     汚れが落としやすく、肌にやさしいタイプを常備しておくと、家族の負担も減ります。

2. 困ったときは介護サービスの利用を検討

  • 訪問介護やデイサービス
     排せつ介助や清拭など、プロの手を借りることで負担が軽くなります。トイレトレーニングや環境調整のアドバイスももらえます。

  • 地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談
     「どんなグッズを使えばよいか」「どのサービスを利用できるか」など、地域の窓口や担当ケアマネジャーが無料で相談に乗ってくれます。

3. 家族だけで抱え込まないことが大切

介護の悩みは、つい家族だけでがんばりすぎてしまいがちです。
「もう限界」「疲れた」と感じたときは、早めに専門職や外部サービスに頼ることで、介護を続ける力を保つことができます。

まとめ

認知症によるトイレのトラブルは、工夫やグッズ、周囲の力を借りることで、負担を大きく減らすことができます
ご本人の自尊心と家族の気持ちの両方を大切に、できる範囲から無理なくサポートしていきましょう。