自宅で一人暮らしをしている母が、最近お風呂の浴槽をまたぐのがつらそうにしています。
足を高く上げるのが大変になってきたようで、滑って転ばないか心配です。
これまでは特に問題なく入浴できていましたが、年齢とともにふらつきや筋力の低下も気になるようになってきました。
自宅のお風呂で安全に入浴するには、どんな工夫や対策が必要なのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
高齢者が自宅のお風呂を使うとき、「浴槽のまたぎ」が大きな転倒リスクや負担になりやすく心配ですよね。
年齢を重ねると筋力やバランス感覚が衰え、思いがけない浴室内の事故が増加します。
特に浴槽をまたぐ動作は、足腰や体幹の弱さが目立ってきた方にとって、非常に大きな壁となることがあります。
この記事では、自宅で高齢者が安全に入浴するためのリスクの把握と具体的な工夫・福祉用具・介護保険サービスの活用法まで、わかりやすく解説していきます。
なぜ高齢者にとって「浴槽をまたぐ」動作が危険なのか
高齢の方が自宅で安全にお風呂に入るためには、「浴槽をまたぐ」という一見単純な動作が、実は大きなハードルになることを理解しておく必要があります。ここでは、その背景や具体的なリスクについて詳しく解説します。
1. 加齢に伴う身体機能の変化
まず大きな要因として、筋力や柔軟性の低下があります。
年齢を重ねると、太ももやお尻、腰回りの筋肉が徐々に衰え、足を高く持ち上げること自体が難しくなります。
さらに、関節の可動域も狭くなるため、浴槽の縁をしっかりとまたぐ動きができなくなりやすいのです。
また、バランス感覚の衰えも見逃せません。
浴槽の出入りは片足立ちになる瞬間があり、ちょっとしたふらつきでも転倒につながります。
特に高齢になると、体を支える反応も遅くなるため、一瞬のバランス崩れが重大な事故につながりやすいのです。
2. 浴室特有のリスクとヒートショック
浴室は滑りやすい床や湿気、温度差など、転倒リスクを高める要因が揃っている場所です。
石鹸やシャンプーの残り、水滴などで滑りやすくなった床で足を滑らせることも少なくありません。
また、冬場は「脱衣所と浴室内の急激な温度差」により、ヒートショック(血圧の急変)を起こすことがあります。
ヒートショックは、めまいや失神、場合によっては心筋梗塞や脳卒中など命に関わる事態を招くこともあり、浴槽をまたいだ直後や湯船から立ち上がる際に特に危険が高まります。
3. 家庭内事故データと現場の実態
厚生労働省や消費者庁のデータによると、家庭内で発生する高齢者の転倒・転落事故の多くが浴室で発生しています。
そのうち、「浴槽をまたぐ・出入りする際」に転んでしまい、大腿骨を骨折したり、頭部を強く打つなど重傷となるケースも目立っています。
また、骨折は寝たきりや介護状態の悪化を招く大きなリスク。
最初は「ちょっと滑って尻もちをついた」だけでも、骨がもろくなっている高齢者の場合、これがきっかけで長期入院や生活の質の大きな低下に繋がることもあるのです。
4. ご本人・家族の心理的負担も
「またぎ動作の不安」や「転倒事故の経験」があると、ご本人もお風呂に入ること自体を怖がるようになります。
その結果、清潔が保ちにくくなり、健康面や生活意欲にも悪影響が出てしまうことも少なくありません。
家族としても、「一人でお風呂に入れて大丈夫かな」「何かあったらどうしよう」と、日々心配が絶えないという声が多く聞かれます。
こうした背景から、「高齢者の浴槽またぎ」は日常の中に潜む大きなリスクポイントです。
しかし、ちょっとした工夫や福祉用具の活用でリスクはぐっと減らすことができます。
自宅でできる浴槽またぎの安全対策と福祉用具の活用
高齢の家族が自宅で安全に入浴できるようにするためには、浴室の環境を見直し、転倒リスクを減らすための具体的な対策が必要です。ここでは、ご家庭ですぐに実践できる工夫と、介護保険も利用できるおすすめの福祉用具を紹介します。
1. 浴槽のまたぎをサポートする福祉用具
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浴槽手すり
浴槽の縁にしっかりと固定できる手すりは、足を上げるときや浴槽から出るときに体を支えることができ、転倒のリスクを大きく減らせます。手すりは工具不要で簡単に設置できるものも多く、筋力が弱ってきた方にも有効です。 -
浴槽台・踏み台
浴槽の内側や外側に設置できる専用の台を使えば、またぐ高さを低くできるので、足腰にかかる負担を軽減できます。滑り止め加工がされているものを選ぶとより安心です。 -
バスボード(浴槽渡し板)
浴槽の上に板状の台を渡すことで、座ったまま浴槽をまたぐことができ、片足立ちになる危険を減らせます。バスボードは入浴用イスと併用することで、よりスムーズな動作が可能です。 -
滑り止めマット
浴室や浴槽の床に敷く滑り止めマットも、転倒予防に欠かせないアイテムです。お手入れしやすい抗菌タイプもあり、日常的に使いやすいのが特徴です。
2. 入浴前後の動作を工夫する
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椅子やシャワーチェアの活用
脱衣所や浴室内で座って着替えや体を洗うことで、ふらつきや疲労を防ぐことができます。 -
手すりを両手で使いながらゆっくり動作する
急いで浴槽をまたごうとせず、両手でしっかり手すりを握り、バランスを確認しながら動くことが大切です。 -
入浴前に水分補給・体調確認をする
脱水や体調不良を防ぐため、入浴前後は水分補給を心がけましょう。
3. 介護保険を使った住宅改修・福祉用具貸与も
介護認定を受けている場合、介護保険を利用して浴室手すりや段差解消などの住宅改修、または福祉用具のレンタル・購入補助を受けることができます。
市区町村の介護保険窓口や地域包括支
浴槽のまたぎ動作の不安は、ご本人もご家族も毎日感じやすいものです。
ですが、環境の工夫や福祉用具の活用によって、多くの方が安全に自宅での入浴を続けることができています。
無理に我慢せず、気軽に福祉用具や専門家の力を借りてみてください。
家族の見守りとプロのサポートを活用する
浴槽のまたぎや入浴動作に不安を感じる場合、ご本人の努力や環境の工夫だけでなく、家族や周囲のサポートも重要です。安全で快適な入浴を続けるためには、以下のような工夫や協力体制が役立ちます。
1. 家族による見守り・声かけ
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入浴前後の体調チェック
入浴前には「体調はどう?」「ふらつきはない?」といった声かけを心がけましょう。脱水や体調不良があれば無理をせず、休憩を促すことが大切です。 -
できれば入浴中も見守り
一人での入浴に不安がある場合は、浴室の外から声をかけたり、必要に応じて脱衣所で待機するなど、すぐにサポートできる環境を整えておくと安心です。 -
プライバシーとのバランス
入浴はプライバシーが大切な時間でもあるので、ご本人の意向を尊重しながら、無理のない見守り体制を検討しましょう。
2. 専門家やサービスの活用
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訪問介護・入浴介助サービス
介護保険を利用してヘルパーによる入浴介助や見守りを受けることも可能です。
入浴動作や浴槽またぎが難しい場合、専門職のサポートで安全性が格段に高まります。 -
リハビリ専門職によるアドバイス
理学療法士や作業療法士による訪問リハビリでは、ご本人の身体機能や自宅の環境に合わせた動作指導や環境整備のアドバイスが受けられます。 -
入浴支援用の見守りセンサーの導入
近年では、入浴中の転倒や異常をすばやく家族に通知する「見守りセンサー」も普及しています。
遠方に住む家族でも安心して見守れる仕組みを導入するご家庭も増えています。
3. 無理をせず相談を
「大丈夫だろう」と無理をしてしまいがちですが、入浴時の事故はほんの一瞬で起こることも多いです。
少しでも不安や困りごとがあれば、地域包括支援センターやケアマネジャー、かかりつけ医などに早めに相談しましょう。
適切なサポートやサービスを活用することで、安心して自宅での入浴を続けることができます。