父が最近、歩くのが少し遅くなり、転びそうになることが増えました。
病気というわけではないのですが、家の中でつまずいたり、買い物に行くのも大変そうです。
介護保険を使えるほどではないと思っていたのですが、知人から「介護予防サービス」というものがあると聞きました。
これは普通の介護サービスとは違うのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
とても良いタイミングでのご相談です。
介護保険というと、「介護が必要になってから使うもの」と思われがちですが、実はその一歩手前の段階で利用できる仕組みが用意されています。
それが「介護予防サービス」です。
この制度は、“できるだけ長く、自立した生活を続ける”ための支援を目的にしており、体力の低下や認知症の初期段階などに合わせた運動・生活支援を受けることができます。
介護予防サービスの仕組みと、どんな人が対象になるのかをわかりやすく解説していきます。
介護予防サービスとは?
――“介護が必要になる前”に始めるサポート
介護予防サービスとは、「要介護」になる前の段階で、できるだけ自立した生活を続けるための支援」を行う制度です。
目的は、“介護を受けなくてもよい状態を長く維持すること”。
高齢者が「転倒しやすくなった」「物忘れが増えた」「外出が減った」など、ちょっとした変化を感じたときに利用できる仕組みです。
対象となる人
介護予防サービスを利用できるのは、介護保険で要支援1・2と認定された方、または介護予防・日常生活支援総合事業(いわゆる“事業対象者”)に該当する方です。
| 区分 | 状態の目安 | 利用できるサービス |
|---|---|---|
| 要支援1・2 | 生活の一部に支援が必要だが、自立は可能 | 介護予防サービス全般 |
| 事業対象者 | 要支援未満だが、体力・認知・生活機能が低下している | 一部の介護予防事業(体操・買い物支援など) |
たとえば、
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・つまずくことが増えた
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・買い物や掃除が大変になってきた
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・外に出る機会が減った
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・話す相手が少なく、気力が落ちてきた
こうした「ちょっと気になる変化」がある方は、予防のサインです。
どんなサービスが受けられるの?
介護予防サービスには、次のような支援があります。
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運動機能向上プログラム(転倒予防体操、筋力トレーニングなど)
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栄養改善支援(食事指導、食生活相談)
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口腔機能向上支援(嚥下体操や口腔ケア)
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生活支援サービス(買い物・掃除・見守りなど)
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認知機能低下防止支援(脳トレ・交流活動など)
これらは地域包括支援センターを通じて利用できます。
医療・福祉の専門職が連携し、その人の状態に合わせて“オーダーメイドの予防プラン”を作成してくれるのが特徴です。
予防=「いまを守る介護」
介護予防は、「まだ元気だから関係ない」ではなく、“いまの元気を維持するための介護”です。
できなくなってから支援を受けるのではなく、できるうちにサポートを受けて、生活の質を落とさないことが大切です。
介護予防サービスの具体的な利用方法
――はじめてでも安心の4ステップ
「介護予防サービス」は、介護が必要になる前の段階で利用できる制度です。
手続きは難しそうに見えますが、実はとてもシンプル。
次の4つのステップで、誰でも利用を始めることができます。
Step1 地域包括支援センターに相談
まずは、お住まいの地域にある地域包括支援センターへ。
ここは「高齢者の総合相談窓口」で、介護予防に関する相談もすべて無料で受け付けています。
たとえば…
「最近、転びやすくなった気がする」
「外出が減って筋力が落ちた」
「家事や買い物がつらくなってきた」
こんな小さな変化でも、気軽に相談してOKです。
職員が体力・生活状況などを確認し、必要に応じて介護保険の申請や健康チェックへつなげてくれます。
Step2 介護保険の申請と認定
介護予防サービスを使うには、介護保険の申請が必要です。
申請後、専門職による訪問調査と主治医の意見書をもとに、
「要支援1・2」または「事業対象者」として認定されると、サービス利用が可能になります。
認定結果はおよそ1か月ほどで届きます。
Step3 介護予防ケアプランを作成
認定を受けたあとは、地域包括支援センターの介護予防ケアマネジャー(保健師・社会福祉士など)が、一人ひとりに合った介護予防ケアプランを作成します。
プランの内容例:
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週1回の体操教室(運動機能向上)
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月2回の訪問指導(生活支援)
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栄養士による食事アドバイス など
必要に応じて、地元の事業所やボランティア団体と連携しながら支援を組み立てます。
Step4 実際にサービスを利用
プランができたら、実際にサービスを利用スタート。
通いの体操教室・訪問支援・買い物同行など、生活に合わせて無理なく始められます。
利用後も、状態に合わせてプランを定期的に見直すため、「やってみたけど大変だった」「もっと違う内容にしたい」といった相談も可能です。
早めの相談がいちばんの予防
介護予防サービスは、「少し不安を感じたときに動けるかどうか」が鍵です。
まだ元気なうちに相談しておけば、介護度が上がるのを防ぎ、結果的に医療費や介護負担を減らすことにもつながります。
地域で受けられる介護予防の取り組み
介護予防サービスは、行政の制度だけではなく、地域や民間の取り組みとも深くつながっています。
「人と人が関わることで元気を保つ」――それが地域に根づいた予防の考え方です。
自治体主催の「通いの場」・介護予防教室
全国の多くの自治体では、地域包括支援センターや公民館を中心に、体操教室・脳トレ・健康チェック・口腔体操などの活動を行っています。
💬 例)
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「いきいきサロン」…週1回の体操とおしゃべりの場
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「介護予防カフェ」…地域住民・専門職・ボランティアが交流
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「認知症予防講座」…早期発見や家族支援もセットで学ぶ
こうした「通いの場」は、体力維持だけでなく、人とのつながりを通じて孤立防止・気力の維持にも役立ちます。
民間による支援サービス
近年は、民間企業や地域団体による保険外の介護予防支援も広がっています。
たとえば、運動指導・買い物支援・外出付き添いなどを行う事業者や、高齢者同士が支え合う「サロン型サービス」など。
ボランティアや地域住民による支え合い
地域には、高齢者支援に関心のある住民やボランティア団体も数多くあります。
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「見守り隊」「声かけボランティア」
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「配食サービス」「買い物同行」
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「趣味・文化活動のサークル」
こうした活動に参加すること自体が、介護予防につながります。
「誰かに助けてもらう側」ではなく、「自分も誰かを支える側」に回ることも、心の健康を保つ大切なきっかけになります。
予防とは、“元気を保つ生活づくり”
介護予防は、「トレーニング」や「リハビリ」だけではありません。
人と関わり、笑い、日々の暮らしに小さな目標を持つこと、それが最も自然で効果的な“予防”の形です。
地域での活動に一歩踏み出すことが、将来の介護を遠ざけるいちばんの近道かもしれません。