最近、母が“物忘れ”をすることが増えました。ついさっきのことを忘れたり、同じ話を何度も繰り返すことがあります。年齢のせいなのか、それとも認知症の始まりなのか心配です。
普通の物忘れと認知症はどう違うのでしょうか?家庭でできる見分け方があれば教えてください。
ご相談ありがとうございます。
年齢を重ねると、誰でも物忘れが気になるものです。「あれ、どこに置いたっけ?」「昨日の夕食、思い出せない」
——そんな経験は多くの方にあるはず。でも、それが「単なる加齢による物忘れ」なのか、それとも「認知症の始まり」なのか、不安になることもありますよね。
実は、物忘れと認知症には、いくつかのはっきりした違いがあります。
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認知症と物忘れの特徴
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家庭でできる見分け方
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受診の目安や対応のポイント
について、やさしく解説します。
ご家族やご自身が「これって大丈夫?」と感じたときの参考になれば幸いです。
認知症と“ふつうの物忘れ”はどこが違う?
年齢を重ねると、誰でも「物忘れ」は起こりますが、認知症の初期と“ふつうの物忘れ”では、その特徴や現れ方が大きく異なります。
物忘れ(加齢による健忘)の特徴
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体験したことの“一部”を忘れる
例:「昨日の夕飯に何を食べたか思い出せない」「テレビで見た俳優の名前が出てこない」
でも、“食事をしたこと自体”や“テレビを見たこと”は覚えている場合が多いです。 -
自分で忘れていることを自覚できる
「最近、物忘れが増えたな…」と本人が気づくことが多いです。 -
日常生活に大きな支障はない
忘れた後でもヒントをもらえば思い出せたり、生活自体は自立して送れます。
認知症の物忘れの特徴
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体験したこと“そのもの”を丸ごと忘れる
例:「夕飯を食べたこと自体を覚えていない」「家族との約束そのものを忘れる」など、“体験したこと自体”が抜け落ちてしまうのが特徴です。 -
本人に自覚が少ない/否定することが多い
忘れていることを指摘されても、「私はそんなことしていない」「聞いていない」と否定することが多いです。 -
日常生活や人間関係に支障が出る
物忘れの範囲が広がり、財布や通帳を何度もなくしたり、日時・場所の感覚があいまいになるなど、生活に影響が出てきます。
物忘れは「年齢のせい」と片付けがちですが、
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体験したこと自体を忘れているか?
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本人に自覚があるか?
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生活に困りごとが増えていないか?
という点を意識して観察することで、「認知症かどうか」の見分けにつながります。
家庭でできる認知症と物忘れのチェックポイント
ご家族や身近な人が「物忘れかな?」と感じたとき、
家庭で簡単に気づけるポイントをいくつかご紹介します。
1. 繰り返し同じことを聞く・言う
「さっき答えたばかりの質問を何度もする」
「同じ話題を一日に何度も繰り返す」
こうした場合、体験自体を忘れてしまっている可能性があり、認知症の初期サインのことがあります。
2. 体験そのものを忘れているか?
食事や外出の“内容”ではなく、
「食事したこと自体」「出かけたこと自体」を本人が覚えていない場合は要注意です。
ヒントを出しても思い出せないときは、認知症の可能性も考えられます。
3. 日付や時間・場所の感覚にズレが出ていないか
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今日の日付や曜日をよく間違える
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季節感がずれる
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よく知っている場所で道に迷う
これらは、記憶だけでなく「認知機能」全体が低下しているサインです。
4. 生活に困るような“うっかり”が増えていないか
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財布や鍵、通帳など大事な物をしょっちゅう失くす
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ガスや水道をつけっぱなしにする
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食事や薬を忘れてしまう
以前より“うっかりミス”が増えてきたと感じたら、チェックしてみましょう。
5. 本人に物忘れの自覚があるか
物忘れが増えても「最近物覚えが悪くなったな」と本人が気にしていれば、
年齢による物忘れの範囲であることが多いです。
逆に、まったく自覚がなかったり、指摘されても否定する場合は注意が必要です。
6. 日常生活が支障なく送れているか
家事や買い物、電話の対応、約束の管理など、
これまで普通にできていたことができなくなってきた場合は、認知症の初期症状かもしれません。
こうしたチェックポイントを参考にしながら、
「ちょっと気になるな」と思ったら、まずは日々の様子を記録してみましょう。
心配が続く場合や困りごとが増えてきた場合は、早めに医療機関や地域の相談窓口に相談することが大切です。
受診の目安と対応方法
どんなときに病院に相談したらいい?
「年齢のせいかな」「昔より物忘れが増えただけかな」と思っても、
次のようなサインが現れた場合は、早めに医療機関や専門家に相談しましょう。
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物忘れが急に増えた、または短期間で進行している
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体験そのものを丸ごと忘れている(食事したこと自体を忘れる、外出したことを全く覚えていない等)
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日付や場所の感覚が混乱し、迷子になったり約束をすっぽかしたりする
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日常生活に支障が出てきている(買い物や家事、服薬管理、金銭管理などが難しくなる)
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物忘れについて本人がまったく自覚していない、指摘しても否定する
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最近、性格や行動が大きく変わったと感じる
こうした症状が一つでも続いている、あるいはご家族が「何かいつもと違う」と強く感じる場合は、
我慢せず、できるだけ早く専門医(もの忘れ外来、神経内科、精神科など)やかかりつけ医に相談することが大切です。
受診までに家族ができること
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日々の物忘れの様子や困りごとをメモしておく
→ いつから、どんな症状が、どのくらいの頻度で起きているか簡単に記録しましょう。 -
本人の体調や生活の変化、服薬内容も整理しておく
→ 他の病気や薬の副作用が原因の場合もあるため、医師に伝えられるように準備しておくと安心です。
受診時のポイント
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家族も一緒に受診し、普段の様子を医師に伝えましょう
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本人に「認知症かもしれない」と直接伝えるのが難しい場合は、「健康診断」や「物忘れチェック」と声かけすると受診しやすくなります
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無理に受診させようとせず、できるだけ本人の気持ちに寄り添いましょう
認知症は早期発見・早期対応がとても大切です。
「もしかして…?」と感じたら、まずは気軽に専門家へ相談してみましょう。
適切なサポートや治療につなげることで、ご本人もご家族も安心して毎日を過ごすことができます。