認知症の家族を施設へ“強制入所”させることはできる?施設拒否する親と対応方法を解説

 

ご相談者

母の認知症がかなり進んできました。最近では、

  • ・同じ話を何度も繰り返す
  • ・夜中に外へ出ようとする
  • ・火の消し忘れが増えた
  • ・被害妄想のような発言がある

など、家族だけでの介護がかなり難しくなってきています。私自身も仕事をしながら介護を続けていますが、正直もう限界に近い状態です。

施設入所も考えているのですが、本人は『絶対に行かない』『家にいる』と強く拒否しています。こういう場合、認知症でも施設へ“強制的に”入所させることはできるのでしょうか?

ご相談ありがとうございます。

認知症の介護では、「施設へ入ってほしい家族」と「自宅にいたい本人」の気持ちがぶつかるケースが少なくありません。

特に、徘徊、火の不始末、幻覚や妄想、暴言・介護拒否、昼夜逆転などが進行してくると、家族だけで在宅介護を続けることが難しくなることもあります。

一方で、本人からすると、

「なぜ家を出なければならないのか分からない」
「施設へ行く理由が理解できない」

というケースも多く、強い拒否につながることがあります。

そのため、「無理やりでも施設へ入れられるのか」と悩む家族は少なくありません。

認知症の方を“強制的に”施設へ入所させることはできるのか、実際の現場ではどう対応しているのか、家族が知っておきたいポイントについてわかりやすく解説していきます。

認知症でも“無理やり施設へ入れる”ことは基本的には難しい

まず前提として、認知症だからといって、家族の判断だけで本人を強制的に施設へ入所させられるわけではありません。

高齢者本人にも意思や権利があり、「施設へ行きたくない」という気持ちがある場合、無理やり入所させることは非常に慎重に考える必要があります。

そのため実際の現場でも、“強制入所”というよりは、

  • 本人が安心できる形を探す
  • 少しずつ環境に慣れてもらう
  • 家族以外の第三者から説明してもらう

など、できるだけ本人の不安を減らしながら進めていくケースがほとんどです。

ただし、在宅介護が危険な状態になることもある

一方で、認知症が進行すると、家族だけでの介護が現実的に難しくなるケースもあります。

たとえば、

  • ・夜中に外へ出てしまう
  • ・火の不始末がある
  • ・転倒リスクが高い
  • ・家族への暴力がある
  • ・介護者が心身ともに限界

など、“本人や家族の安全”に関わる状況になることもあります。

このような場合は、「本人が嫌がっているから在宅を続ける」だけでは、かえって危険になることもあります。

そのため、ケアマネジャーや医師、地域包括支援センターなどと連携しながら、“今の生活を本当に続けられるのか”を客観的に判断していくことが重要になります。

「施設=捨てられる場所」と感じている方も多い

認知症の方が施設を強く拒否する背景には、不安や誤解が隠れていることも少なくありません。

特に高齢者世代では、

  • 「施設へ入る=家族に見捨てられる」
  • 「家へ戻れなくなる」
  • 「自由がなくなる」

と感じてしまう方もいます。

そのため、最初から「施設へ入るよ」と強く説得しようとすると、かえって拒否が強くなるケースもあります。

実際には、ショートステイやデイサービスに慣れてもらう。“体験利用”という形にする、医師や第三者から説明してもらうなど、段階的に進めていくことで受け入れにつながることも少なくありません。

家族だけで抱え込まないことが大切

認知症介護では、「本人の気持ちを尊重したい」という思いから、家族だけで無理を続けてしまうケースも少なくありません。

しかし実際には、

24時間気が休まらなかったり、夜間対応で眠れない。仕事との両立が難しかったり家族関係が悪化する。

その結果介護うつのような状態になってしまうなど、介護する側が限界を迎えてしまうこともあります。

特に認知症は、“少しずつ負担が増えていく”ことが多いため、気づいた時には家族がかなり疲弊しているケースも珍しくありません。

そのため、「まだ何とかなる」と我慢し続けるよりも、早めに周囲へ相談することが非常に重要です。

まずはケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談を

施設入所を考え始めた場合、まず相談先として多いのが、

  • ・ケアマネジャー
  • ・地域包括支援センター
  • ・主治医
  • ・病院の相談員

などです。

特に地域包括支援センターは、高齢者相談の窓口として、介護サービスの紹介や施設相談、認知症支援、家族介護の相談など幅広く対応しています。

「まだ施設へ入れるか決めていない」という段階でも相談可能です。

実際には、“施設へ入れるかどうか”だけでなく、

ショートステイを増やしたりデイサービスを利用する。見守りを強化する、訪問介護を増やすなど、在宅介護を続けるための方法が見つかるケースもあります。

「施設へ入れる=悪いこと」ではない

家族の中には、「施設へ入れることに罪悪感がある」という方も少なくありません。

しかし、介護は長期化することも多く、家族だけで支え続けることが難しいケースもあります。

また、認知症が進行すると、専門的な見守り、夜間対応、医療連携、認知症ケアなどが必要になることも増えていきます。

そのため、施設入所は“家族が楽をするため”ではなく、「本人が安全に生活を続けるための選択肢」のひとつでもあります。

無理を重ねて家族が倒れてしまう前に、周囲の支援や施設という選択肢を含め、介護体制全体を見直していくことが大切です。

執筆者

この記事の執筆者
清水 健児

バディファミリーサービス / 生活サポートアドバイザー

バディファミリーサービス所属。
高齢者の生活支援や介護保険外サービスの相談に多数対応。

外出サポート、買い物同行、施設探しなど、
家族だけでは難しい生活支援のサポートを行っている。

現在は地域サロンの運営や、
高齢者と家族を支える生活支援サービスの普及活動にも取り組んでいます。