親が2人とも認知症…“認認介護”を続ける危うさと支援制度まとめ

「高齢の父が認知症。母も少し物忘れがあり不安。でも2人暮らしで、介護は任せきり…。」

そんなご家庭、実は増えています。
認知症の方が、同じく認知症の家族を介護する「認認介護」という言葉をご存じでしょうか?

一見、家族の助け合いのようにも思えますが、放置すると重大な事故や共倒れにつながる危険性もあります。

この記事では、「認認介護」の意味や起きる背景、リスク、そして家族が取るべき対策について、わかりやすく解説します。

【1】認認介護とは?意味と定義をわかりやすく

認認介護(にんにんかいご)とは?

認認介護」という言葉をご存じですか?

これは、認知症の高齢者が、同じく認知症の家族を介護する状態を指します。
一般的には、老老介護(高齢者同士の介護)の中でも、さらにリスクの高い状態として知られています。

たとえば——

  • 夫が認知症を患っており、妻が主に介護をしている

  • ところが妻もまた、物忘れや混乱が目立つようになってきた

  • それでも2人は同居し、お互いに気づかないまま“なんとなく”支え合っている

このような状況が、まさに「認認介護」です。

認認介護の実情:誰もがなり得る状況

認認介護は、決して特別な家庭だけの話ではありません。
親を遠方で見守っている人、2人暮らしの両親を支える人——
誰にでも「いつの間にか始まっていた」ということが起こりえます。

しかも、本人たちが“自分たちは大丈夫”と思い込んでしまうケースも多く、
家族や周囲の人も気づいたときには、すでにトラブルが起きていた……ということも。

「助け合い」と「共倒れ」の紙一重

高齢の夫婦が、お互いを支え合って暮らしている。
一見、とても素敵なことのように思えるかもしれません。

しかし、どちらか一方、あるいは両方に認知症の症状がある場合、
「助け合い」ではなく「無理をしている」状態になってしまうことも

たとえば、

  • 火を消し忘れたまま放置していた

  • 薬の種類や量がわからず、重複して飲ませてしまった

  • 排泄物の処理ができず、部屋が衛生的に問題のある状態になっていた

……など、深刻な問題が“日常の中で進行”していくのが、認認介護の怖さです。

「うちも、もしかして……」と思ったら

もし、この記事を読んでいて、

  • 「最近、親の様子がちょっと心配…」

  • 「2人とも高齢なのに、誰にも頼っていないみたい」

  • 「どこか相談できるところはないのかな?」

と感じたなら、それは“気づけている”という大事なサインです。

次は、なぜ認認介護が増えているのか、どんな背景があるのかを、具体的に見ていきます。

【2】なぜ増えている?認認介護が起きる背景

「認認介護」が増えているのは、なぜ?

認知症の高齢者が、認知症の家族を介護する——。
一見、非常に特殊なケースに思えるかもしれません。

しかし今、日本ではこの「認認介護」が着実に増えています
その背景には、いくつかの社会的な要因があります。

高齢者同士の世帯が、圧倒的に増えている

まず、基本となるのが「高齢化の加速」です。

現在、日本の高齢者人口(65歳以上)は全体の約3割。
その中でも、75歳以上の“後期高齢者”同士が2人で暮らす世帯が、非常に多くなっています。

例:

  • 80代の夫婦が2人暮らし

  • 片方に介護が必要だが、もう片方も足腰が弱い・認知機能が低下している

  • それでも、周囲に頼れず、なんとなく支え合っている状態

これが「老老介護」であり、さらに認知症が加わると「認認介護」へと進行していきます。

認知症の“気づきにくさ”が、深刻化を招く

認知症の症状は、最初はとてもわかりにくいものです。

  • 「あれ、最近ちょっと忘れっぽいかも」

  • 「でも歳のせいだし、まだ大丈夫よね」

  • 「お父さんも元気だし、お互い様よ」

このように、本人も家族も気づかずに放置してしまうことが少なくありません。

さらに、認知症の方は「できていないこと」に気づきにくいため、
自分のケアが不十分でも、それを認識できないまま介護を続けてしまう場合も。

つまり、「まだ大丈夫」と思っている間に、
認認介護の状態に入っている可能性があるのです。

子世代が気づきにくい理由

また、子どもが近くに住んでいない場合や、別居している場合は、
2人暮らしの両親の様子を日常的に見ることができません。

たとえ電話で「元気にやってるよ」と言われても、
実際には「薬が飲めていない」「食事が偏っている」「同じ話を繰り返している」など、
見えない部分で支障が出ていることも多いのです。

地域や社会のつながりが薄れている現実

さらに、近所づきあいや地域の支援が希薄になっている現代では、
「最近あの家、おかしいな…」と思っても、誰も声をかけないまま、
認認介護が深刻化していくケースも後を絶ちません

認認介護は「気づかれにくく、進行しやすい」

  • 高齢夫婦の2人暮らしが増えている

  • 認知症は初期症状が気づきにくい

  • 周囲が介入しにくい社会構造がある

こうした背景が重なり、認認介護は、気づいたときには“もう手遅れ寸前”ということも珍しくありません

続いて実際に起こりうる「認認介護のリスクや問題点」について詳しく解説します。

【3】認認介護のリスクと問題点

「親がふたりで暮らしているけど、どちらも少し物忘れがある」
「お母さんが介護しているけれど、本人も年々しっかりしなくなってきた」

そんな状況、あなたの身の回りにもありませんか?

“お互いを支えている”ように見える認認介護ですが、じつは、さまざまなリスクや深刻な問題が潜んでいます。

リスク1:事故やケガの危険が高まる

認知症になると、記憶や判断力が低下するため、
日常生活の中でもさまざまなミスが起きやすくなります。

たとえば…

  • ガスの火を消し忘れた

  • 電気ポットに水を入れずに加熱してしまった

  • 外に出たまま帰れなくなった

  • 相手の体調変化に気づけず、病院に連れて行けなかった

こうした事故や体調悪化は、「予防できたはずの事態」です。
でも、認認介護の状況では、誰も止めることができません。

リスク2:介護している側が体調を崩す

介護を担っている側(たとえば認知症の妻)が、
「自分がしっかりしなきゃ」と思って無理をしてしまうと、
今度は介護者自身の心身が壊れてしまうこともあります。

  • 夜中に何度も起きて対応 → 睡眠不足

  • 自分の病院通いを後回しにする → 持病が悪化

  • 人に頼れない → 孤立・うつ症状へ

とくに認知症初期では「プライド」がある分、
誰にも相談できず、抱え込んでしまうケースが多いのです。

リスク3:緊急時の判断・対応ができない

認知症の方は、突然の出来事に対する判断力が落ちています。
たとえば、以下のような場面では対応が難しいことが多いです。

  • パートナーが倒れた。救急車を呼べない

  • 火災警報が鳴ったが、どうしていいかわからない

  • 薬を誤って重複して飲ませてしまった

結果として、対応が遅れたり、事態を悪化させたりしてしまうことも。
“ふたり暮らし”という一見安心な環境が、リスクの見えにくい孤立状態になっているのです。

リスク4:周囲からの気づきが遅れやすい

認認介護の最大の問題は、外から見えにくいことです。

  • 子どもは遠方に住んでいて、様子がわからない

  • 近所付き合いがないため、異変に気づく人がいない

  • 介護保険を使っていないので、専門職との接点がない

このような家庭では、事態が深刻化してから発覚することがよくあります。

たとえば…

  • 家の中でふたりとも倒れていた

  • ゴミ出しもできず、異臭で通報された

  • 金銭管理ができず、水道・電気が止まっていた

こうした「見えない孤立と共倒れ」こそが、認認介護のもっとも恐ろしいリスクです。

あなたの家族にも「予兆」はありませんか?

  • 最近、親が病院の受診を忘れることがある

  • ふたりで暮らしているのに、何かぎこちない

  • 電話しても話がかみ合わない、すぐ切りたがる

これらのサインがあるなら、すでに認認介護が始まっている可能性もあります。

【4】認認介護にならないために家族ができること

認認介護は、誰のせいでもなく、誰にでも起こりうる状況です。
ですが、「気づいたときに、できることから始める」ことで、
共倒れを防ぎ、安全で安心な暮らしへつなげることができます。

ここでは、家族が今すぐ実践できる4つの具体的な対策をご紹介します。

対策1:まずは“今の状態”を把握する

最初にすべきことは、「親が今どんな状態か」を客観的に見ることです。

以下のチェック項目を確認してみてください:

  • 最近、火の元や鍵の閉め忘れが増えていないか?

  • 病院や通院の日を覚えていないことがあるか?

  • 同じ話を何度も繰り返すようになっていないか?

  • 家の中が以前より散らかっていたり、清潔感がないと感じないか?

  • お金の使い方や管理が以前と違ってきていないか?

少しでも「ん?」と思うことがあれば、早めに地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

対策2:要介護認定を受けて、支援につなげる

「まだ介護は必要ないかも…」と思っても、“予防”としての介護サービス利用も可能です。

具体的には:

  • 市区町村の窓口で「要介護認定の申請」を行う

  • 調査を経て、「要支援1〜2」「要介護1〜5」に区分される

  • 状態に応じて、介護保険サービスが使えるようになる

これにより、訪問介護・通所介護(デイサービス)・配食サービスなど、
日常生活の支援を受けることができます。

大切なのは、「認定=重症」ではないということ。
早いうちからサービスを受けておくことで、症状の進行や事故を防ぐことができるのです。

対策3:介護を抱え込まない“仕組み”をつくる

家族がすべてを背負ってしまうと、疲弊してしまいます。

そこで大切なのが、「頼れる人・機関をあらかじめ確保しておく」こと。

  • ケアマネジャーと定期的に連絡を取る

  • 近所の親戚や友人に“見守り”をお願いする

  • 民間の訪問支援(見守り・買い物代行など)も検討する

  • ショートステイやデイサービスで「日中の安心」をつくる

介護保険だけで足りない部分は、民間の自費サービスで補うという柔軟な考え方も大切です。

対策4:「まだ大丈夫」ではなく「今からできること」を

認認介護に陥りやすいご家庭の多くは、こう言います:

「うちはまだ大丈夫だから」
「迷惑をかけたくないって言うし…」
「あの人はしっかりしてるから平気」

ですが、“大丈夫”の基準は、人によってバラバラです。
そして、本人が「平気」と言っていても、そうではないケースがほとんどです。

だからこそ、早めに“少しだけ人の手を借りる”ことが、安心と尊厳を守る近道になります。

【5】活用できる支援制度・サービス

「認認介護を防ぎたい」「もう始まっているかもしれない」
そう感じたときに、まず知っておきたいのが支援制度やサービスです。

公的な介護保険制度から、地域のサポート、民間サービスまで——
頼れる手段はたくさんあります。
「誰にも頼れない」と思う前に、できることから始めてみませんか?

地域包括支援センターに相談する

まず一歩目は、各自治体に設置されている
「地域包括支援センター」への相談です。

ここでは以下のような支援を受けられます:

  • 家庭の状況に応じたアドバイス

  • 介護保険サービスの申請サポート

  • 認知症対応の地域資源の紹介

  • 医療や成年後見制度などの情報提供

「こんなこと聞いてもいいのかな?」という不安も、
地域包括支援センターなら大丈夫。家族の悩みを受け止める場所です。

介護保険サービスを活用する

要介護認定を受ければ、以下のような公的サービスが利用可能です。

サービス種別 内容例
訪問介護(ヘルパー) 調理、掃除、排泄・入浴介助などの生活支援
通所介護(デイサービス) 食事・入浴・レクリエーションなど日中預かり
短期入所(ショートステイ) 数日〜1週間の間、施設での一時的な宿泊支援
福祉用具の貸与 手すり・ベッド・歩行器などの貸し出し
認知症対応型施設 認知症に特化した共同生活介護(グループホーム)

これらは自己負担1~3割で利用でき、
本人にも家族にも「生活の余裕」を取り戻す助けとなります。

民間の自費サービスも上手に取り入れる

介護保険では補えない部分を、民間の自費サービスでカバーするのも有効です。

たとえば…

  • 見守りサービス(定期訪問・電話確認)

  • 病院への付き添い代行・送迎サービス

  • 家事代行・買い物代行・配食サービス

  • 旅行・外出支援(高齢者専用タクシーなど)

中には、認知症に理解のあるスタッフが対応してくれる民間サービスもあります。

介護保険にこだわらず、「今必要なサポートを選ぶ」という視点が大切です。

その他の支援制度もチェック!

以下のような制度も、必要に応じて検討してみてください:

  • 成年後見制度:金銭管理や契約関係を第三者がサポート

  • 高齢者見守りネットワーク:地域によっては、郵便局や新聞配達と連携して安否確認を行う制度あり

  • 認知症カフェ・家族会:同じ立場の人たちと交流し、孤立を防ぐ場

「制度を知ること」が、安心の第一歩に

多くの人が、介護が必要になってから初めて制度を知ろうとします。
けれど本当は、「今はまだ大丈夫」なうちにこそ、情報を集めておくことが何よりの備えです。

支援を知っていれば、
「いざという時」に慌てず、適切なサポートへつなげることができます。