介護現場で相次ぐ「経済的虐待」 高齢者の財産を守るためにできること

介護の現場では、高齢者の生活を支える一方で、その財産を狙ったトラブルも後を絶ちません。

財産管理を名目にした不正や、身の回りを世話する立場を悪用した行為は「経済的虐待」と呼ばれています。

厚生労働省の調査でも、介護施設の職員による経済的虐待が報告されており、深刻な社会問題として注目されています。

経済的虐待とは何か

経済的虐待とは、高齢者の同意なく財産を奪ったり、不当に利用したりする行為を指します。

具体的には、現金や預金を勝手に引き出す、クレジットカードを無断で使用する、不利な契約を強要するなどが含まれます。

被害に遭う高齢者は、自ら異変に気づきにくく、また声を上げにくいため、表面化しにくいのが特徴です。

増加する被害の実態

厚生労働省によると、介護施設の職員による経済的虐待は2023年度に424人と報告され、前年の55人から大幅に増えました。

特定の施設で多数の被害が明らかになったことが背景ですが、例年でも50人前後が確認されており、決して少なくありません。


大阪市の施設では、元社長が入居者の姉妹の口座から2000万円を無断で引き出したとして逮捕されました。

福岡市でも施設長が入居者のカードを使い、1000万円以上を窃取する事件が起きています。

信頼関係を逆手にとった悪質な事例が後を絶たないのです。

なぜ経済的虐待が起きるのか

背景には、人手不足や事業運営のビジネス偏重など、介護現場が抱える構造的な問題があります。

職員の資質や倫理観に差がある中で、財産管理を任せられる立場が悪用されるケースも少なくありません。

被害を防ぐためにできること

日本高齢者虐待防止学会の池田直樹弁護士は「施設側は研修を通じて職業倫理を徹底する必要がある」と指摘します。そのうえで、利用者や家族も次の点に注意することが大切です。

  • 財産に関する大切な話は、必ず家族や信頼できる第三者と共有する

  • 契約や財産管理は弁護士や司法書士など専門職を交えて行う

  • 預金の出入りを定期的に確認し、不自然な動きがないかチェックする

  • 一人で抱え込まず、周囲に相談できる環境を整える

家族や地域の役割

経済的虐待は、介護施設だけでなく在宅介護の場でも起こり得ます。

家族が頻繁に顔を合わせたり、財産の管理を一緒に確認したりすることが、早期発見や防止につながります。

また、地域包括支援センターなどの相談窓口も活用できる存在です。

相談先

もし「おかしい」と思ったら、次のような相談先を活用できます。

  • 地域包括支援センター(高齢者の生活全般の相談窓口)

  • 各自治体の高齢者虐待防止窓口

  • 弁護士会の法律相談(経済的虐待や財産管理のトラブルに対応)

  • 警察(明らかな横領や窃盗が疑われる場合)

まとめ

経済的虐待は、被害を受けた高齢者にとって生活基盤を脅かす深刻な問題です。

信頼していた相手から裏切られる心理的ショックも大きく、回復に時間がかかります。制度や現場の改善はもちろんですが、家族や社会全体が関心を持ち、高齢者の財産を守る仕組みづくりに取り組むことが求められています。