「2035年問題」とは?日本の介護が直面する“静かなる危機”

2035年、日本の介護現場はこれまでにない深刻な局面を迎えると言われています。
それが「2035年問題」——団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)が高齢期を迎え、65歳以上の人口が3,800万人を超えると予測されているタイミングです。

この年、日本は史上最大の“高齢者数”と“現役世代の少なさ”に直面することになります。
介護が必要な人が一気に増える一方、支える人材の確保が追いつかない。
医療・介護・地域社会、そして家族——私たちは今、どのような備えをしておくべきなのでしょうか?

■ 2035年に起こるとされること

1. 介護人材の“圧倒的な不足”

2035年、日本では約245万人の介護人材が必要になると試算されていますが、現状のままでは約32万人が不足すると見込まれています(厚生労働省推計)。

高齢者が増え続ける一方で、介護を担う20~40代の若年~中年世代は減少。
「人が足りないから施設に入れない」「訪問サービスの枠が空かない」といった事態が日常化する恐れがあります。

2. “現役世代が親を支えきれない”家庭が急増

団塊ジュニア世代(いわゆる働き盛り・子育て世代)が、親の介護問題に直面するタイミングでもあります。

  • 子どもの学費

  • 住宅ローン

  • 自身のキャリア

こうした課題と親の介護が同時にのしかかる「ダブルケア」や「ヤングケアラー」の問題がより深刻化することが予想されます。

3. 介護保険制度の限界

要介護者の急増により、介護保険制度の持続可能性にも黄信号が灯っています。

  • サービス利用者の増加

  • 財源の逼迫

  • 保険料・自己負担の引き上げの可能性

結果として、「本当に必要な人に届かない」「サービスの質が保てない」などの問題が懸念されます。

4. “地域の支え合い”が必須になる社会へ

すべてを制度や施設で支えることが難しくなる2035年以降、
キーワードになるのが「地域共生社会」や「インフォーマルサービス(保険外支援)」。

  • 地域での見守り・移動支援

  • 家事・生活援助

  • 民間の家族的サポート

こうした“ゆるやかな支え合いの仕組み”が各地で求められていくことになります。

■ 介護される側が「今から備えるべきこと」

1. 自分の希望を「言葉にしておく」こと

将来、介護が必要になったときに「どう過ごしたいか」「どこで暮らしたいか」を自分の言葉で伝えておくことは、介護する家族や関係者にとって大きな助けになります。

  • 施設か、自宅か

  • 誰に介護してもらいたいか

  • 延命治療や意思表示ができなくなった時の希望

これらは エンディングノート事前指示書などの形で記録しておくと、トラブルや後悔を防げます。

2. お金の準備は“見える化”から

介護にかかる費用は月5〜15万円とも言われます(介護保険+自費含む)。
「もし介護が必要になったら、何にどれくらいかかるのか」「そのときのための資金はどこにあるのか」を 家族がわかる形で整理しておくことが大切です。

  • 預金口座・保険の情報を一覧にしておく

  • 成年後見制度や信託の検討

  • 必要に応じて、財産管理を誰に任せるか決めておく

3. 日々の健康習慣を積み重ねる

介護状態にならない・遅らせるために、日常の体づくりがとても大切です。
特に「フレイル予防」がキーワード。

  • 栄養(たんぱく質・ビタミンの意識)

  • 運動(散歩・ラジオ体操・筋トレなど)

  • 社会参加(人と話す、趣味活動に出かける)

心と体を元気に保つことが、将来の自立度を大きく左右します。

4. 「つながり」を持ち続ける努力を

高齢になると、人との関係が急に減り、孤立しやすくなります。
いざというときの頼れる人・地域とのつながりがあるかどうかは、介護生活の質を大きく左右します。

  • 近所との関係を大事にする

  • 行きつけの場所(美容室、医院、地域サロンなど)を作っておく

  • 見守りサービスや地域包括支援センターと関係を持っておく

5. 「保険外サービス」や地域支援の選択肢を知っておく

介護保険だけではカバーしきれない部分(外出の付き添い・掃除・相談支援など)を担うのが、「保険外サービス」や民間の生活支援です。

  • 移動支援・訪問サービス(例:バディファミリーなど)

  • 地域の助け合い団体

  • NPOや有償ボランティア

自分が将来頼れるサービスの「選択肢」を、あらかじめ知っておくことも立派な備えです。

■ 家族が「2035年問題」に備えてできること

2035年には、介護が必要な高齢者が爆発的に増える一方、支える家族や介護人材はますます不足すると予測されています。
その時、親や配偶者が介護を必要としたときに慌てないよう、“今から家族としてできる備え”があります。

1. 「いざというとき、どうしたい?」を話しておく

介護は突然始まることがほとんど。
事前に「親の希望」「家族の考え」を口に出して話しておくことが、何よりの備えです。

  • 施設か在宅か、どちらを希望する?

  • 認知症になったら延命治療はどうしたい?

  • どんなサービスを利用したい?

  • 誰が中心になって介護する?

【ポイント】
「まだ早い」と思わず、元気なうちに軽い雑談のように話すことがコツです。

2. 経済的な準備と“見える化”

介護には予想以上にお金がかかります。
親の貯金や保険、年金、資産状況などを家族で共有しやすい形に整えておくことが重要です。

  • 通帳・口座の所在を確認

  • 介護保険証・後期高齢者医療被保険者証の場所を把握

  • 認知症に備えて「家族信託」や「任意後見」の検討

【ポイント】
経済的な話は避けたくなりますが、**「使えるお金」「使ってほしくないお金」**を事前に確認しておくことが、家族全体の安心につながります。

3. 介護の知識を「ざっくり」持っておく

介護に関する制度や支援サービスは意外と多くありますが、「知らない」ことで大きな損や負担が生じることも。

  • 介護保険サービスの種類

  • 要介護認定の仕組み

  • 地域包括支援センターの存在

  • 保険外サービスや民間支援(訪問・買い物・見守りなど)

【ポイント】
「いざとなったら調べればいい」ではなく、“知っておくべき人や場所”を覚えておくことが鍵です。

4. 「自分の人生」も大切にする準備を

家族の介護に夢中になりすぎて、介護する側が心身ともに疲弊するケースも少なくありません。

  • 仕事との両立(介護休業・時短制度の活用)

  • 兄弟姉妹との分担・連携

  • 介護者自身のリフレッシュの時間確保

  • 外部サービスへの委託・相談

【ポイント】
「全部自分がやらなきゃ」と思いすぎないこと。
介護は“家族で抱え込まず、分かち合う”ことが大切です。

家族の“対話”が最大の備えになる

2035年問題は、「制度がどうなるか」だけでなく、「家族がどう支え合うか」が問われる時代です。
日常の中で少しずつ、“介護について話しやすい雰囲気”を作っておくことが、将来の安心につながります。