社員の介護離職を防ぎたい――企業が実践できる介護離職の解決策と支援

いま、身近な家族の介護をきっかけに仕事を辞めてしまう「介護離職」が社会全体の課題になっています。
会社で長く働いてきた社員が、突然「家族の介護が必要になって…」と退職を申し出る。そんな場面に、きっと驚いたことのある人事担当者さんや管理職の方も多いのではないでしょうか。

介護離職は、社員本人だけでなく、会社にも大きな影響を与えます。大切な人材が抜けてしまうだけでなく、現場の人手不足や教育コストの増加など、いろいろな困りごとが出てきます。

実は、介護と仕事は“両立できない”わけではありません。
社員が安心して働き続けられるようにするためには、企業としてどんなサポートができるのか――
最近では、両立支援のための制度や、現場での工夫を取り入れる会社も増えています。

この記事では、介護離職が起こる理由や背景をふまえつつ、会社でできる具体的な支援策や、実際の取り組み事例を、わかりやすくご紹介します。

「うちの会社も、これからできることは何か?」を考えるヒントになれば幸いです。

介護離職が企業にもたらす影響――数字で読み解く現実

“年間10万人”の社員が介護で仕事を辞めている

実は、日本では毎年約10万6,000人もの方が「親や家族の介護・看護」を理由に仕事を辞めています。
この数字、単純計算でも1日に約290人が介護離職している計算です。
これは大企業だけでなく、中小企業や個人経営の会社も含め、どんな職場でも起こりうる「身近な問題」です。

また、離職した人の多くがすぐに別の仕事に就けるわけではありません。約8万3,000人もの方が、そのまま再就職しないまま家族の介護を続けていると推計されています。
その分、家計へのダメージが大きいだけでなく、企業側も「長年育てた大切な人材」を失ってしまうことになります。

介護離職が企業に与える“見えない損失”とは

介護離職が企業にもたらすダメージは、単に「一人社員が減る」だけではありません。
人が辞めることで現場の負担が増えるのはもちろん、採用や新人教育にかかるコスト、即戦力が失われることによる生産性の低下――
実は、こうした“見えにくい損失”が年々積み重なっています。

政府やシンクタンクの調査によると、介護離職や両立困難による日本全体の経済損失は、2030年時点で約9兆円にも上ると推計されています。
このうち、「介護離職そのもの」による直接的な労働損失額は約1兆円
さらに、新たな人材を採用し、育て直すためのコストは数千億円規模になるといわれています。
これだけの影響が、毎年社会全体で起こっている――決して無視できる問題ではありません。

どんな会社でも“例外ではない”

実際、企業へのアンケート調査では約7.3%の会社で「この1年以内に介護離職があった」と回答しています。
つまり、「うちの会社はまだ大丈夫」「そんなに多くないだろう」と油断していると、ある日突然、大切な社員が「家族の介護が必要になって…」と辞めてしまうことも十分あり得るのです。

しかも、離職者は1人で済まないこともあります。現場で介護離職が起こると「自分も将来、同じ目に遭うかもしれない」と感じる社員が増え、職場の雰囲気やモチベーションにも影響が出ます。
結果として、人材の定着率が下がったり、連鎖的な離職を招いてしまうリスクも否定できません。

“今”対策する価値

こうした数字や現状を踏まえると、介護離職は「本人の問題」でも「家庭の事情」でもなく、企業が積極的に向き合うべき課題だといえます。

  • ・現場で困っている社員がいても「言い出しにくい」風土がある

  • ・相談できる制度や窓口がない

  • ・介護休業や時短制度はあっても使いにくい

…という職場は、どの会社にも意外と多いのが現実です。

逆に言えば、工夫や制度の見直しで「社員も会社も守る」環境づくりが可能です。

なぜ介護離職が起こるのか?

介護は“突然”やってくる

介護離職の大きな原因の一つは、「親や配偶者の介護が、ある日突然必要になる」ことです。
たとえば親が転倒して骨折した、脳梗塞や認知症を発症した、病気や入院からそのまま自宅介護へ移行する――こうしたケースは決して珍しくありません。
働き盛りの40〜50代の社員が、急に「家族の介護が必要になった」と悩み始めることが多いのです。

両立できる体制や知識が足りない

介護が始まった時、多くの社員は「どうしたらいいか分からない」「誰に相談すればいいか分からない」と感じます。

  • ・介護保険制度や使えるサービスの情報が少ない

  • ・職場で相談できる雰囲気がない

  • ・介護と仕事の両立方法が分からない

こうした“情報不足”や“相談しづらさ”が、社員を孤立させ、結果として「仕事を辞めざるを得ない」という選択につながります。

職場の理解・制度が不十分

介護休業や時短勤務などの制度があっても、

  • ・上司や同僚の理解が得られない

  • ・「休みを取ると職場に迷惑をかけるのでは」と遠慮してしまう

  • ・制度自体を知らない・使いづらい

…といった理由で実際には活用されていないことが多いです。
「会社に迷惑をかけるくらいなら」と、責任感の強い社員ほど黙って退職してしまう現状があります。

経済的・精神的な負担の大きさ

介護は長期化しやすく、体力的・精神的な負担が大きい上、場合によっては介護サービスの費用もかさみます。
仕事と介護の両立に疲れ、体調を崩したり、家計が苦しくなったりして「続けたくても続けられない」と感じる社員も少なくありません。

“自分だけは大丈夫”という思い込み

「まだ親は元気だから」「自分の家庭には関係ない」と思いがちですが、介護はいつ・誰にでも起こりうるものです。
また、実際に直面するまで“準備”ができていないケースが多く、突然の介護に対応しきれずに離職してしまう、という流れになりがちです。

このように、介護離職は「制度の未整備」「職場の理解不足」「情報やサポートの不足」「突然の事態」など、複数の要因が重なって発生しています。
企業としては、「困ったときに相談できる窓口」「使いやすい制度」「介護に関する情報提供」など、社員が一人で抱え込まない職場づくりが、介護離職を減らす大きなカギとなります。

社員から介護離職の相談を受けたとき、どう向き合えばいい?

会社で働く社員から、「家族の介護が必要になってしまった」「このまま働き続けられるか不安だ」といった相談は突然やってきます。

相談の場面では、相手の気持ちや事情をしっかり受け止め、安心して話してもらえる環境をつくることが最初の一歩となります。

介護の話題はとてもプライベートで、本人も「迷惑をかけてしまうのでは」とためらいながら切り出していることが少なくありません。

そんな時、どんなふうに話を聞けばよいか、どんな情報を伝えれば不安の軽減や実際のサポートにつながるのか――

社員から介護離職についての相談や申し出があった際に、どのような姿勢で話を聞き、どんなポイントを押さえて会話を進めるとよいかをご紹介します。

社員から介護に関する相談があったときの“聞き方”と“伝え方”

1. まずは、安心できる雰囲気づくりから

介護の相談は、とてもデリケートでプライベートな内容です。
社員は「こんなこと話して大丈夫かな」「迷惑をかけてしまうのでは」と、心配しながら相談していることも多いものです。

「話してくれてありがとうございます」
「今はどんなことで困っていますか?」
――まずは相手に安心感を持ってもらえる声かけから始めましょう。

「詳しいことは今すぐ答えられなくても大丈夫です」といった配慮も、社員の緊張を和らげます。

2. 状況を無理なくヒアリングするポイント

いきなり根掘り葉掘り聞くのではなく、「できる範囲で教えてください」と前置きしながら、以下のような点を確認していきます。

介護の現状

  • ・どなたの介護が必要になったのか(例:ご両親、ご配偶者など)

  • ・どんな介護がどれくらいの頻度で必要か(例:日中だけ/夜間のみ/毎日/週末のみ など)

  • ・今後、仕事との両立で不安に思っていること

どんなことに一番困っているか

  • ・急な呼び出しや突発的な休みが必要になりそうか

  • ・仕事の調整や、会社でどんな支援があれば安心できそうか

  • ・すでに介護サービスや外部の相談先を利用しているか

「会社としてどんなことができると助かると感じますか?」といった質問も有効です。

3. 会社ができる支援や制度についてわかりやすく伝える

社員が“退職しか選択肢がない”と感じてしまわないよう、「実はこんな制度やサポートがあります」と、利用できる制度や相談窓口を案内します。

  • ・介護休業、時短勤務、フレックス勤務、テレワークなどの両立支援制度

  • ・利用条件や申請方法(担当窓口を一緒に案内すると◎)

  • ・困った時は再度相談しても大丈夫であること

「こんなケースでも制度が使えます」「一度の面談で全部を決めなくても大丈夫ですよ」といった言葉も、社員の心理的ハードルを下げるポイントです。

4. 一緒に今後を考える、というスタンスを持つ

介護の状況は日々変化するものです。一度の面談で結論を出そうとせず、「今後も状況に合わせて柔軟に相談しましょう」というスタンスを持ちましょう。

  • 「また困ったときや状況が変わったときは、遠慮なく相談してください」

  • 「社内だけで難しい場合は、外部の専門相談窓口もご案内できます」

――こうした一言が、社員の“相談しやすさ”を大きく変えます。

最初から「退職したい」という意向が強い社員から介護の相談を受けた場合

1.まずは気持ちをしっかり受け止める

退職を決断する背景には、相当な悩みや不安、追い詰められた気持ちがある場合が多いです。
最初に「退職しかない」と感じている社員に対して、頭ごなしに引き留めたり、制度利用を無理に勧めたりしないことが大切です。

  • ・「大変な決断をされたのですね」

  • ・「今まで仕事と介護を両立しようと努力されてきたこと、お疲れさまでした」

  • ・「どんなお気持ちで退職を考えられているのか、お聞かせいただけますか」

――まずは、相手の思いを否定せずに受け止める姿勢で寄り添いましょう。

2.「退職以外の選択肢」も丁寧に案内する

社員が退職を選ぶ背景には、「他に方法がない」「制度が使いづらい」「相談しにくい」といった思い込みや、情報不足がある場合も少なくありません。

  • ・「実は会社には〇〇という制度もありますが、ご存じでしたか?」

  • ・「もしよろしければ、具体的にどんな支援があれば働き続けられそうか、一緒に考えてみませんか?」

  • ・「今すぐ結論を出さず、制度を使いながら介護と両立できる道もありますので、ご相談だけでもどうぞ」

引き留めが目的ではなく、選択肢の幅を広げるための情報提供という姿勢を心がけます。

3.無理強いせず、最終的な意思を尊重する

どんなに会社がサポートできる体制を整えていても、本人やご家族の事情によっては「退職」という選択が最適な場合もあります。
制度や支援策を一通り案内した後は、社員自身が納得して判断できるよう配慮することが大切です。

  • ・「会社としても残っていただけると嬉しいですが、最終的には〇〇さんのご判断を尊重します」

  • ・「退職後も、必要な手続きや情報があればサポートします」

4.今後に向けてできること

  • ・退職の意思が固い場合でも、円満な退職・スムーズな引継ぎをサポートする

  • ・もし将来的に再就職や復職を希望する場合の再雇用制度や情報提供を案内する

  • ・最後まで感謝の気持ちとエールを伝える

うした姿勢を心がけることで、「会社に相談してよかった」「きちんと向き合ってもらえた」と社員が感じられる対応ができます。

無理に引き止めること(強引な引き止め)は、社員本人にも会社にもデメリットやリスクが多いので注意が必要です。

  • ・社員の信頼やモチベーション低下

  • ・心身の健康悪化(うつ・体調不良等)のリスク

  • ・職場の雰囲気や他の社員への悪影響

  • ・パワハラ等の法的リスク

  • ・引き継ぎ不足や急な退職の可能性

「引き止め」はあくまで“選択肢や情報の提供”として、最終的な判断は本人に委ねるのが、本人にも会社にも最善です。
無理な引き止めよりも、「戻ってきたい時はいつでも相談できる」「最後までしっかりサポートする」と伝えるほうが、信頼関係を保ち、企業のブランド価値も守ることができます。

企業が法律上、必ず整えておかないといけない“介護と仕事の両立支援”の基本環境

法律で決まっている最低限のサポート

会社は「育児・介護休業法」という法律に従って、社員が家族の介護を理由に仕事を休んだり、働き方を変えたりできる制度を必ず用意しなければいけません。
たとえば、

  • ・介護休業(最大93日まで休める)

  • ・介護休暇(短期間の休み)

  • ・時短勤務や残業免除、夜勤免除
    …などです。

もし社員から「使いたい」と言われたら、会社は理由なく断ることはできません

ルール違反には罰則や行政指導も

この法律を守らず、

  • ・「休みを取らせない」

  • ・「介護を理由に不利益な扱いをした(降格・減給・解雇など)」

などをすると、会社は行政(労働基準監督署など)から指導や勧告を受けることになります。

悪質な場合は、20万円以下の罰金や、最悪「企業名の公表」というペナルティも。

就業規則や社内制度に明記を

また、介護休業や時短制度が使えることは就業規則や社内ルールにもきちんと書いておく必要があります
制度があっても「知られていない」「書いていない」ではトラブルのもとになるので、

  • ・社内研修や説明会で周知

  • ・相談窓口の設置

  • ・管理職への研修

などもおすすめです。

「介護休業や介護のための働き方の配慮」は、“会社の善意”ではなく“法律で決まった義務”です。
社員が安心して働けるよう、まずは「法律で定められた最低限の環境整備」が必要不可欠です。

さらに“使いやすさ”“相談しやすさ”も意識できれば、離職防止や職場の信頼感アップにつながります。

具体的にどういうサポートや環境を整えるべきか

1. 法律で決められている“基本の制度”

まず、育児・介護休業法などで義務付けられている「最低限必要な制度」は、必ず社内に用意・周知しておきましょう。

  • 介護休業制度
    社員が家族の介護のために最大93日間(通算)まで休業できる仕組み。分割取得も可能。

  • 介護休暇制度
    家族の介護や通院付き添いのため、年に5日(2人以上なら10日)まで有給で休める。

  • 時短勤務や残業免除、深夜勤務免除
    要介護の家族がいる場合、所定労働時間の短縮や、残業・深夜業務の制限が可能。

  • 不利益取扱い禁止
    これらの制度利用を理由に、降格・減給・解雇などの不利益な扱いは禁止されています。

2. 「使いやすさ」を高めるための工夫・配慮

法定制度だけでなく、実際に社員が“相談しやすい・使いやすい”環境を整えることが、介護離職防止にはとても重要です。

  • 相談窓口の設置
    人事部や総務部に専門窓口をつくり、「気軽に相談できる」体制を明示する。

  • 制度のガイドや事例集を作成し、周知
    「どんなとき、どうやって制度を使えばいいか」「実際の利用例」などを具体的に説明。

  • 管理職・同僚向けの研修や勉強会
    介護に対する理解を深め、“職場で助け合う雰囲気”を作る。

  • 柔軟な働き方の導入
    テレワーク、フレックス制度、時差出勤、短日勤務など、個人の事情に合わせた働き方を選べるようにする。

3. 継続的なフォロー体制

介護は“状況が日々変わる”ものなので、定期的な面談やフォローアップも有効です。

  • 定期面談やキャリアカウンセリング
    介護中の社員に対して、定期的に近況や困りごとをヒアリングし、必要な支援を随時検討。

  • 復職や再雇用の制度
    一度退職した場合も、復帰できる「再雇用制度」や、休職からのスムーズな復帰支援。

4. 情報提供・外部資源の活用

  • 介護保険や地域の支援サービス情報の提供
    介護の公的サービスや相談先(地域包括支援センター等)について情報をまとめて案内。

  • 社外の専門家やEAP(従業員支援プログラム)との連携
    精神的なサポートや、専門家への相談の窓口を案内する。

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介護離職を防ぐためには、社内の制度やサポート体制だけでは解決しきれない現実があるのも事実です。
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