数日前、知り合いのお母さん(80歳)が『朝起きたら急に立てなくなった』と聞いて驚きました。少し前に会ったときは普通に歩いていたのに…。こういうことって、よくあるんでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
高齢者が「突然歩けなくなった」と聞いたとき、驚きや不安を感じる方は少なくありません。
転倒やけがではなく、“原因がよくわからないまま急に立てなくなる・歩けなくなる”ケースは、決して珍しくないのです。
そんな“急な歩行困難”が起こる背景や、疑われる病気、家族ができる対応についてわかりやすく解説していきます。
「年のせい」で片づけてしまう前に、知っておきたい知識をお届けします。
高齢者が急に歩けなくなる原因とは?
高齢者が急に歩けなくなった場合、年齢的な筋力低下や疲労だけでなく、隠れた病気や体の異常が原因であることも多くあります。ここでは、主に考えられる代表的な原因を4つに分けて解説します。
1. 脳・神経系の異常
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脳梗塞・脳出血(軽度含む)
→ 突然片足に力が入らなくなる、バランスを取れなくなるなどの症状から始まることも。 -
パーキンソン病
→ 徐々に歩行が不安定になる病気ですが、初期は「すり足」や「小刻みな歩き方」が見られる。 -
正常圧水頭症(NPH)
→ 歩行障害・認知機能低下・尿失禁がセットで現れることも。歩幅が小さくなり転びやすくなる。
2. 筋肉・関節の障害
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変形性膝関節症・股関節症
→ 関節の痛みで立ち上がれなくなったり、一歩目が出にくくなることも。 -
筋力の急激な低下(廃用症候群)
→ 入院・自宅安静などで体を動かさない期間があると、急に立てなくなることがあります。 -
骨粗しょう症による圧迫骨折
→ 転倒していなくても、骨がもろくなり突然骨折して歩けなくなる場合もあります。
3. 内臓や循環器の異常
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心不全や肺炎の初期症状
→ 体力の急激な低下や呼吸困難が原因で、立ち上がれない・歩けない状態に。 -
脱水・低栄養・電解質異常
→ 高齢者はちょっとした食事や水分の不足でも、足腰に力が入らなくなることがあります。
4. 精神的な要因・環境変化
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うつ状態・認知症の進行
→ 意欲低下や認知の混乱から、「歩きたくない」「立てない」と感じることがあります。 -
入院や引っ越しなど環境の変化
→ 一時的に歩行が不安定になる「せん妄」の一種として現れることも。
このように、「急に歩けなくなる」と言ってもその背景はさまざまです。
だからこそ、“ただの老化”と自己判断せず、必ず医療機関での診察を受けることが重要です。
家族が取るべき初期対応と受診の目安
高齢の家族が突然歩けなくなったとき、「とりあえず様子を見よう」と判断するのは危険です。
特に高齢者の場合、症状の進行が早い病気や、初期症状がわかりづらい疾患も多くあります。ここでは、家族が取るべき行動を段階的にご紹介します。
すぐに確認すべきこと(5分以内)
まずは慌てずに、以下の点を確認しましょう。
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意識ははっきりしているか?
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左右どちらかの手足に力が入らない、しびれていないか?
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言葉がはっきりしているか?ろれつが回らない様子は?
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頭を打った・転んだなどの様子はないか?
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痛みの場所や体の異変は言えるか?
これらの症状がある場合は、すぐに救急要請(119)が必要です。
「軽いと思ったけど、実は脳梗塞だった」というケースもあるため、“念のため”の早め対応が命を守るポイントです。
自力で立てない・痛みが強いときの行動
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整形外科・内科・神経内科など、専門科のある病院に連絡を
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移動が難しいときは、往診や訪問看護の利用も検討を
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事前に健康保険証・お薬手帳・介護保険証があるとスムーズ
急な症状であっても、「寝ていたら治るかも」と放置するのは禁物です。
時間が経つほど、回復が難しくなるケース(特に神経や筋力系)もあります。
病院に行くべきか迷ったときは?
「救急車を呼ぶほどではなさそう」「ただの筋肉疲れかも?」というときは、次の方法も有効です。
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#7119(救急安心センター)に電話相談する
→ 地域により設置されている「医師や看護師が対応する窓口」で、緊急度の判断を手伝ってくれます。 -
かかりつけ医に電話で相談する
→ 日常の状態を知っている医師なら、的確なアドバイスをくれることも。 -
地域包括支援センターに相談
→ 医療・介護・生活支援が一体で相談できる窓口です。症状だけでなく、今後の生活サポートまで一緒に考えてくれます。
早めの受診が、予後を大きく左右する
高齢者の体は、ちょっとした異変が大きな転機になることがあります。
「念のため」の行動が、その後の生活を守る第一歩です。
“大ごとになる前に見つける”ことが、家族にできる最善のサポートです。
再発予防と日常生活で気をつけたいこと
一度「歩けない」という症状が出た場合、原因を特定し、再発を防ぐための生活改善が大切です。高齢者の身体は、一度バランスを崩すと回復に時間がかかることが多いため、日々の生活の中でできる対策を意識して取り入れていきましょう。
無理なく続けられる運動習慣を
ウォーキングやストレッチを日課に
→ 毎日少しずつでも足を動かすことで、筋力やバランス感覚を維持できます。
椅子に座ってできる体操(介護予防体操など)も有効です。
※目標は「疲れるほど」ではなく「気持ちよく終われる程度」。継続が何より大切です。
栄養バランスの見直し
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たんぱく質やビタミンD、カルシウムを意識的に摂取
→ 筋肉・骨の健康を保つために必要です。 -
水分不足に注意
→ 脱水や電解質異常が原因でふらつくことも。
食が細くなっている場合は、少量でも栄養価の高い食材や、栄養補助食品も活用を。
転倒しにくい環境づくり
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段差の解消や手すり設置、滑り止めマットなどの工夫
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夜間の移動には足元灯を設置する
→ 特にトイレまでのルートは重点的にチェック!
「つまずきそうな場所」を家族と一緒に見直すだけでも、事故の予防につながります。
高齢者が安心して日々を送るには、医療的な支援と、家庭でのちょっとした気づかいの両方が必要です。
再発を防ぎ、より良い生活を取り戻すためにも、「できることから少しずつ」を意識していきましょう。