
「繰り上げたら早くもらえるんだから、得なんじゃない?」
そう思っていたあの時。
誰も「将来、本当に足りるのか」を真剣に考えていなかったのかもしれません。
あのとき、母は“安心”を買ったつもりだった
母が60歳になったとき、私はまだ40代で、子育ても仕事も忙しい時期でした。
父は早くに亡くなり、母は一人暮らし。体力的にも不安が出てきた頃です。
「パートも減らしたいし、年金をもらい始めたら気が楽になるでしょ?」
と母は言いました。
当時、年金を繰り上げると1ヶ月ごとに0.5%減額される仕組みで、60歳から受け取ると30%の減額になることも知っていました。
それでも「もらえるなら早くもらいたい」という気持ちの方が強かったようです。
月に2万円の差。じわじわ効いてくる“減額の現実”
65歳を過ぎた頃から、母の言葉が変わってきました。
「もう少しもらえたら助かるんだけどね」
「通院と薬代が思ったより高くて…」
年金の繰り上げで、本来もらえる金額より毎月2万円以上少なくなっていた母。
70歳になると、医療費も増え、足腰も弱り、外出も減りました。
「友達とランチ行くのも控えてるの。年金、少ないから」
そう口にする母の横顔が、以前より寂しそうに見えました。
老後のお金、“いま”より“あと”が長い
当時、母が繰り上げを決めたとき、私も正直「早くもらえるならその方が安心」と思っていました。
でも今は、「長生きする可能性」をもっと真剣に考えるべきだったと感じています。
年金は、一生もらい続けるお金。
60代はまだ健康でも、70代、80代になると本当に必要なのは“額”と“安定”なんです。
後悔を未来に持ち込まないために
母は「繰り上げたこと、ちょっと早まったかもね」と笑います。
でもその笑顔の裏に、少しの不安と寂しさが見えるのです。
これから年金の繰り上げを考えている方へ。
「今すぐもらいたい」気持ちも分かります。
けれど、その選択は一生続く“減額の選択”です。
焦らず、調べて、できれば家族と話し合ってください。
母のように、静かに「しまったな」と思わずにすむように。
年金の繰り上げ、後悔する人が増えている?
「年金を60歳から受け取りたい」と思う人は多いですが、実際には「繰り上げて失敗した」「こんなはずじゃなかった」と後悔する声も少なくありません。
この記事では、繰り上げ受給で後悔する理由や、判断のポイント、対策方法について分かりやすく解説します。
年金繰り上げとは?基本のおさらい
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・60歳から65歳までの間に年金を早めに受け取る制度
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・1カ月繰り上げるごとに0.4%ずつ減額(2022年4月改正以降)
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・一度決めたら原則変更不可
年金繰り上げで「後悔する」主な理由
● 一生減額されたままの年金にショック
→ 70代、80代と年を重ねるごとに「もっともらえるはずだった金額」との差に気づく
● 想定よりも長生きした・医療費や介護費がかかる
→ 「足りない」と感じたときにはもう取り返しがつかない
● 働けるはずだった・働ける環境があったのに繰り上げてしまった
→ 働いて収入を得ていたら、繰り上げする必要はなかったという後悔
● 税金・社会保険料が意外にかかる
→ 「収入がある=安心」とは限らない。手取りが想定より少なくなるケースも
どうすればよかった?後悔しないためのチェックリスト
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✔ 今の貯金で5年は生活できるか?
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✔ 働ける体力・環境があるか?
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✔ 75歳以降の医療・介護費用を想定しているか?
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✔ 家族の支援や扶養など、受けられる制度を把握しているか?
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✔ 老後の“生活の質”をどう保ちたいか?
繰り上げしてしまった人の「これからできる対策」
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● 働いて収入を補う(シニア向け就労支援も紹介)
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● 支出の見直し・節税の工夫
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● 公的支援制度(生活保護・高齢者向け給付制度)を調べてみる
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● 老後資金の再設計(FP相談などの活用)
まとめ:年金の繰り上げは「一度きり」の選択。慎重に判断を
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・「早くもらえる=得」ではない
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・後悔しないためには、自分のライフプランをしっかり描くことが大切
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・決断する前に、専門家への相談も選択肢に