父が癌と診断されました。
医師からは手術や抗がん剤の説明を受けましたが、父は「もう十分生きたし、つらい治療はしたくない」と言っています。
家族としては、治療をしないことで この先どうなるのか が分からず、不安でいっぱいです。
治療をしなかった場合、どのくらい進行するのか、痛みは強くなるのか、
本人の意思を尊重してよいのか、それとも説得したほうがいいのか……。
高齢者が癌の治療をしないと、実際にはどうなるのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
「癌=治療をするもの」と思われがちですが、高齢者の場合、あえて治療をしない選択をする方も少なくありません。
年齢や体力、持病の有無、そして「これからどう生きたいか」。
それらを総合的に考えた結果、「治すための治療」よりも「今の生活を大切にする」道を選ぶケースもあります。
一方で、
「癌を治療しないとどうなるのか」
「痛みや苦しさは強くなるのか」
「後悔しない選択なのか」
といった不安を抱えるご家族が多いのも事実です。
高齢者が癌の治療をしない場合に考えられる経過や、その選択をするときに知っておきたいポイントを、相談への回答という形で、できるだけ分かりやすく解説していきます。
癌を治療しないとどうなるのか(高齢者の場合)
結論からお伝えすると、高齢者が癌の治療をしなかった場合の経過は、人によって大きく異なります。
「すぐに悪化する」「何もできずに苦しむ」というイメージを持たれがちですが、実際には 癌の種類・進行度・体力・持病の有無 によって、状況は大きく変わります。
癌は「治療しない=すぐ亡くなる」ではない
高齢者の場合、癌の進行よりも 加齢や他の病気の影響のほうが先に出る ケースも少なくありません。
特に以下のような場合は、治療をしなくても 比較的ゆっくり経過する ことがあります。
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・進行が遅いタイプの癌
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・初期〜中期で発見されている場合
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・高齢で、癌の成長スピード自体が緩やかな場合
そのため、「治療をしない=すぐ命に関わる」とは一概には言えません。
一方で、進行していく可能性はある
もちろん、治療をしなければ癌そのものが自然に消えることは基本的にありません。
時間の経過とともに、
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・癌が大きくなる
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・周囲の臓器に影響が出る
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・症状(だるさ、食欲低下、痛みなど)が現れる
といった変化が起こる可能性はあります。
ただし高齢者の場合、進行のスピードが緩やかで、症状が出るまで長い時間がかかる ことも多く、「しばらくは今までと大きく変わらない生活ができた」というケースも珍しくありません。
「治療をしない」選択がされる背景
高齢者が癌の治療をしない選択をする背景には、次のような理由があります。
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・手術や抗がん剤による体力低下への不安
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・治療による副作用や入院生活を避けたい
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・残された時間を「自分らしく」過ごしたい
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・すでに別の持病があり、治療の負担が大きい
これは「諦め」ではなく、生活の質(QOL)を重視した現実的な判断であることも多いのです。
癌を治療しないと、痛みや苦しさはどうなる?
「治療をしないと、強い痛みや苦しさが続くのではないか」
これは、ご本人だけでなくご家族が最も心配される点です。
結論から言うと、癌の治療をしなくても、痛みや苦しさを我慢し続ける必要はありません。
痛みは「必ず強くなる」とは限らない
まず知っておいてほしいのは、すべての癌が強い痛みを伴うわけではないということです。
高齢者の場合、
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・痛みがほとんど出ないまま経過する
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・違和感やだるさが中心で、激痛はない
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・痛みが出ても、適切な対応でコントロールできる
といったケースも多く見られます。
特に初期〜中期の段階では、「治療をしていないけれど、日常生活に大きな支障はない」という方も少なくありません。
痛みが出た場合でも、対処する方法がある
仮に癌の進行に伴って痛みやつらさが出てきたとしても、それを和らげる医療はしっかり存在しています。
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・痛み止め(段階的に調整可能)
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・呼吸苦や不安を和らげる薬
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・食事がつらい場合のサポート
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・倦怠感・不眠への対応
これらは「癌を治す治療」とは別に行われるもので、治療をしない選択をしていても受けることができます。
「治療しない=放置」ではない
多くの方が誤解しがちですが、治療をしないことは、何もせずに我慢することではありません。
むしろ高齢者の場合、
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・つらさを最小限に抑える
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・入院よりも自宅で過ごす時間を大切にする
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・本人のペースを尊重する
といった考え方が重視されることも多く、その中で痛みや不安への対応が行われます。
苦しませないために大切なこと
大切なのは、「痛みが出てから考える」のではなく、早めに相談できる体制を整えておくことです。
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・痛みや不調を我慢しすぎない
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・遠慮せず医師や看護師に伝える
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・家族も「変化」に気づいたら共有する
こうした関わり方によって、「治療をしなかったけれど、穏やかに過ごせた」というケースも多くあります。
「治療しない」=何もしない、ではない
高齢者の癌で大切にされる“緩和ケア”という考え方
「治療をしないと、もう医療は受けられないのでは?」
そう思われがちですが、それは大きな誤解です。
高齢者が癌の治療をしない選択をした場合でも、できること・支えられることはたくさんあります。
緩和ケアは「最期の医療」ではない
緩和ケアという言葉を聞くと、「もう末期」「最期の段階」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし実際には、緩和ケアは“癌と診断された時点から受けられるケア”です。
目的はただ一つ。
つらさを減らし、できるだけ穏やかに過ごすこと
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・痛みや苦しさを和らげる
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・不安や気持ちの揺れに寄り添う
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・生活の質(QOL)を保つ
これは、治療をする・しないに関わらず行われる医療です。
「治す」より「苦しまない」を優先する選択
高齢者の場合、治療によって癌は小さくなっても、
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・寝たきりになる
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・食事がとれなくなる
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・体力が大きく落ちる
といったリスクが高くなることもあります。
そのため、
「治る可能性が少しある治療」より「今の生活を守ること」を選びたい
と考える方が少なくありません。
これは決して後ろ向きな選択ではなく、その人らしい人生を大切にする前向きな判断とも言えます。
自宅で過ごすという選択もできる
治療をしない高齢者の中には、入院ではなく自宅で過ごすことを希望される方も多くいます。
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・慣れた環境で安心して過ごせる
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・家族との時間を大切にできる
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・自分のペースで生活できる
必要に応じて、医療や看護のサポートを受けながら生活を続けることも可能です。
「治療をしない=何もできない」ではなく、「どう過ごしたいかを選べる」状態だと考えると、イメージが変わってきます。
家族が知っておきたい大切な視点
ご家族として大切なのは、「治療をさせるべきか」だけに目を向けるのではなく、
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・本人が何を一番大切にしているのか
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・何をつらいと感じているのか
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・どんな毎日を望んでいるのか
に耳を傾けることです。
治療をしない選択は、放棄ではありません。
「苦しまないように支える」「その人らしさを守る」ための選択肢の一つです。
高齢者が癌の治療をしない選択は、「諦め」ではありません
高齢者が癌と診断され、「治療をしない」という選択を前にすると、本人も家族も、大きな不安や迷いを抱えます。
「治療をしないとどうなるのか」
「苦しませてしまうのではないか」
「この判断は正しいのか」
そう考えるのは、ごく自然なことです。
この記事でお伝えしてきたように、高齢者が癌の治療をしない場合でも、すぐに状態が悪化するとは限りません。
進行のスピードは人それぞれで、しばらく穏やかに生活を続けられるケースも多くあります。
また、治療をしないからといって、痛みやつらさを我慢し続ける必要はありません。
苦しさを和らげるための医療や支えは、きちんと存在しています。
そして何より大切なのは、「治療をするか・しないか」だけで判断しないことです。
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本人がどんな時間を過ごしたいのか
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何を一番大切にしているのか
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どんな形なら安心して生活できるのか
そうした思いを尊重しながら、その人らしい選択を一緒に考えていくことが、後悔の少ない関わりにつながります。
治療をしない選択は、決して諦めではありません。
残された時間を、できるだけ穏やかに、自分らしく生きるための一つの道です。
迷ったとき、不安が大きくなったときは、一人や家族だけで抱え込まず、医療や支援につながることも大切にしてください。