父が最近、呼吸が苦しそうだと感じて病院を受診したところ、『肺に水がたまっている』と言われました。
医師からは心臓や腎臓の影響も考えられると説明を受けましたが、高齢で体力も落ちてきており、これからどれくらい過ごせるのか、余命のことがとても心配です。
今後の生活や家族としてできることについて教えてほしいです。
ご相談ありがとうございます。
高齢のご家族が「肺に水がたまる」と診断されると、多くの方が「今後どうなってしまうのか」「どれくらいの余命なのか」と不安や心配な気持ちを抱えます。
肺に水がたまる状態は、医学的には「肺水腫」や「胸水貯留」などと呼ばれ、心臓や腎臓、がんなどさまざまな病気が原因となる場合があります。
高齢者の場合、体力や臓器の機能が低下していることが多く、治療や今後の生活について悩まれるご家族も多いのが現実です。
「肺に水がたまる」状態の基礎知識や余命への影響、今後のケアや家族のサポートについて分かりやすく解説します。
高齢者の「肺に水がたまる」とはどんな状態?
高齢の方が「肺に水がたまる」と言われた場合、主に「肺水腫(はいすいしゅ)」や「胸水(きょうすい)」といった状態が考えられます。
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肺水腫は、心臓の機能が低下するなどして、血液中の水分が肺胞(はいほう=肺の中の空気の袋)にしみ出し、肺に水がたまる状態です。
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胸水は、肺の周り(胸膜腔)に水分がたまってしまう状態を指します。
どちらも、肺がうまく働かなくなり、呼吸が苦しくなる、咳が続く、横になると息苦しいなどの症状が現れることが多いです。
高齢の方では、体力や臓器の働きが弱くなっていることもあり、肺に水がたまることで急激に体調が悪化したり、日常生活に大きな影響が出る場合もあります。
まずは医師の指示に従い、しっかりと診断・治療を受けることが大切です。
主な原因と考えられる病気は?
高齢者の「肺に水がたまる」状態は、さまざまな病気が背景にあります。主な原因として、次のようなものが挙げられます。
■ 心不全(しんふぜん)
もっとも多い原因のひとつが心不全です。心臓のポンプ機能が低下すると、血液がうまく循環せず、肺に余分な水分がたまってしまうことがあります。
高齢者は加齢や持病の影響で心臓の働きが弱くなっていることが多く、息切れやむくみ、倦怠感なども現れる場合があります。
■ 腎臓病(じんぞうびょう)
腎臓の働きが低下すると、体の中の水分バランスをうまく調整できなくなり、余分な水分が体にたまりやすくなります。その結果、胸水や肺水腫が起きることがあります。慢性腎不全などの基礎疾患を持つ高齢者に多い傾向です。
■ 肺炎や結核などの感染症
肺炎や結核などの感染症が原因で、胸膜(肺のまわり)に炎症が起き、胸水がたまることもあります。高齢者は免疫力が低下していることが多く、感染症が重症化しやすい点にも注意が必要です。
■ がん(肺がん・転移性がんなど)
肺がんや他の部位のがんが肺や胸膜に転移することで、胸水がたまる場合もあります。がん性胸水と呼ばれ、治療法や今後の見通しも原因疾患によって異なります。
■ その他
肝硬変や自己免疫疾患など、全身性の病気が関係する場合もあります。
どんな症状が現れる?日常生活への影響は?
高齢者の「肺に水がたまる」状態では、以下のような症状が現れることが多いです。
■ 主な症状
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息切れ・呼吸困難
最も多い症状です。動いたときや、横になると特に息苦しさが強くなることがあります。 -
せきやたん
長引くせきや、たんが増えることがあります。水がたまる量が増えると、せきが止まらなくなったり、夜間に悪化したりします。 -
胸の痛みや違和感
胸のあたりが重苦しい、圧迫されるような感じがすることもあります。 -
体のむくみやだるさ
原因となる心不全や腎臓病がある場合、足や顔のむくみ、全身のだるさを伴うことがあります。 -
食欲低下・全身の疲労感
息苦しさやだるさで、食欲がなくなる、体力が落ちて日常生活がつらくなる方も少なくありません。
■ 日常生活への影響
肺に水がたまることで、少し動いただけで息が切れる、寝つきが悪くなる、歩くのがつらい、会話も苦しくなるなど、日常の活動が大きく制限されることがあります。
また、症状が進むと、寝たきりに近い状態や介護が必要になることもあるため、家族や介護者によるサポートが重要です。
「急に息苦しさが増した」「顔色が悪い」「会話もままならない」などの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
治療法やケアの方法について
高齢者の「肺に水がたまる」状態では、原因となる病気や全身状態に応じて治療やケアの方法が異なります。以下に主な治療・対応法をまとめます。
■ 原因に応じた治療
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心不全が原因の場合
利尿薬(おしっこを増やす薬)を使って体の余分な水分を減らす治療が中心となります。心臓の負担を軽くする薬も併用されることが多いです。 -
腎臓病が原因の場合
塩分や水分の摂取制限、利尿薬の使用、場合によっては透析が検討されます。 -
感染症が原因の場合
抗生物質や抗結核薬による治療、胸水が多いときは胸に針を刺して水を抜く「胸腔穿刺」が行われることもあります。 -
がんが原因の場合
がんそのものに対する治療(化学療法や放射線治療など)が検討されますが、症状緩和のために胸水を抜く処置や、痛み・息苦しさを和らげる緩和ケアが行われることもあります。
■ ケアのポイント
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安静にする・姿勢を工夫する
起き上がった状態や、背中を高くして座ることで呼吸が楽になることがあります。無理な動きは控え、本人の楽な姿勢を探しましょう。 -
水分や塩分の管理
医師から水分・塩分制限の指示が出ている場合は、しっかり守りましょう。 -
こまめな体調観察
息苦しさの悪化、むくみの増加、意識レベルの低下などがないか、毎日観察しましょう。 -
家族や介護者のサポート
食事や身の回りのお世話、通院・治療への付き添い、心理的なケアなど、周囲のサポートもとても大切です。
■ 緩和ケアや在宅医療の活用
進行した病気の場合や、治療の継続が難しい場合は、緩和ケアや在宅医療(訪問診療・訪問看護など)の利用も選択肢となります。本人とご家族が安心して過ごせるよう、医師やケアマネジャーとよく相談しましょう。
余命への影響は?家族としてできること
「肺に水がたまる」と診断されると、ご家族としては「あとどれくらい一緒に過ごせるのか」と不安や心配が大きくなります。
実際の余命は、原因となる病気の種類や進行度、全身の体力や合併症の有無によって大きく異なります。
■ 余命への影響について
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心不全や腎臓病が進行している場合
治療を行いながらも再発しやすく、体力の低下や他の臓器の働きも影響を受けやすくなります。状態が安定している方もいれば、残念ながら急激に悪化することもあります。 -
がんや重い感染症の場合
がんが進行している場合や、治療が難しい感染症の場合、数週間〜数か月で病状が進むケースもあります。逆に、治療に反応し症状が改善することもあります。 -
年齢や基礎疾患、本人の希望
高齢者の場合、全身状態や本人の体力・気持ち、どんな治療やケアを希望するかによっても余命や過ごし方が変わってきます。
医師から余命の見通しについて説明がある場合もありますが、必ずしも「〇日で…」と決まるものではありません。
不安や疑問があれば、主治医やケアスタッフに遠慮なく相談しましょう。
■ 家族としてできること
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本人の気持ちを尊重する
治療を続けるか、つらい治療は控えて「なるべく穏やかに過ごす」ことを希望するか、ご本人の考えや気持ちをよく聞くことが大切です。 -
生活の質(QOL)を大切に
無理な延命治療ではなく、痛みや苦しみをできるだけ和らげ、「好きなものを食べる」「家で家族と過ごす」など、その人らしい日々を支えることも選択肢です。 -
医療や介護のサポートを活用する
在宅医療や訪問看護、緩和ケア病棟など、本人と家族の負担を減らし、安心して過ごせるサービスを利用しましょう。
限られた時間だからこそ、ご本人もご家族もできるだけ穏やかに、心安らかに過ごせるようサポートすることが大切です。