介護離職に効果的な対策とは?企業ができる介護離職の解決策をお伝えします

近年、介護離職は社会問題として注目されています。40%以上の企業が重要課題として考えている社員の介護離職では、仕事と介護を両立させることができず、最終的に仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれる人が増えています。

介護が必要な家族を支えるために退職をする選択は、会社として貴重な人材の損失であり、本人にとっても経済的な負担を増やすだけでなく、キャリアや人生の選択肢にも大きな影響を及ぼします。

とはいっても介護は体力、精神力的に非常に負担になり、またゴールが見えないものです。働きながら介護となると社員にとっても不安が積み重なっていき「会社を辞めたほうがいいんじゃないか・・・」と考えるようになります。

しかし、そこで退職をする道ではなく、あらゆる支援を活用することで、介護と仕事を両立させることが可能です。

ここでは、介護離職を防ぐために企業としてどういったことを行えばいいのか、具体的な解決策についてお伝えしていきます。

介護はイチ社員だけの問題ではありません。企業側の取り組みや制度の充実、そして介護を支える社会的な支援を理解することが大切です。

誰にでも起こり得る介護という課題だから、社員が長く活躍できる企業作りが今、求められています。

介護離職とは

「介護離職」とは、家族の介護のために仕事を辞めることを指します。

高齢者や障がい者などの介護が必要な家族を支えるため、職場を離れざるを得なくなるケースが増えています。

介護を始めた人の5割強が、介護開始から1年以内に離職すると言われており、その最大の理由は「自分以外に両親の介護する人がいない」ということです。

介護離職は、介護者自身の生活やキャリアに大きな影響を与えることがあり、また、経済的な負担も増えることがあるため、社会全体での支援や制度の充実が求められています。

介護によって転職をした場合、平均年収が男性で4割、女性で5割ダウンというデータもあります。

さらに、離職する本人だけでなく会社にとっても大きな損害がでてきます。

年間10万人が介護を理由に辞めている

総務省の2017年の調査によると、過去1年間で全国で9.9万人が介護を理由に離職しており、その影響は年々拡大しています。

さらに介護離職者の実態として約8割が女性であり、具体的な数字としては次のようになります。

女性:7万5,000人(約75%)
男性:2万4,000人(約25%)

女性が圧倒的に多いことがわかっています。これは、長年の日本の家庭環境や価値観が影響しており、介護の負担が女性に偏る現状を示しています。

介護離職で起きる損失

人手不足

介護離職が発生すると、従業員が突然退職することになり、欠員が生じます。そのため、残された社員に過重な負担がかかり、業務が滞る可能性があります。

採用・教育コストの増加

退職した社員を補充するために新たな人材を採用する必要があり、採用活動や教育・研修にかかるコストが増加します。

業務の連続性が失われる

介護離職した社員の業務内容が重要であった場合、その業務の引き継ぎが不十分だと、会社の業務の効率性や品質に影響を及ぼすことがあります。

社員の士気低下

介護と仕事の両立が困難である場合、他の社員も同様の状況に直面する可能性があり、社員の士気が低下する恐れがあります。また、離職によって、企業文化やチームの一体感が損なわれることもあります。

介護離職をする年代

年代別にみると、「介護を担っている」割合は、40代では9.8%、50代では15.4%となっており、介護を担う世代が年齢とともに増加していることが分かります。

特に50代は、仕事と介護の両立に大きな負担を感じる世代であり、この年代で介護離職に至るケースが増えている傾向があります。

また、介護を必要とする父母の年齢分布を見ると、75歳以上の割合が「父」で83%、「母」で79.9%と8割前後を占めており、高齢化が進む中で介護の必要性が高まっていることがわかります。

この年齢層に対する介護の需要は今後さらに増加すると予測されており、介護離職の問題はますます深刻化する可能性があります。

こうした背景から、介護と仕事を両立させるための支援策や制度の整備が急務となっています。

介護離職の理由とその背景

介護離職は、介護が必要な家族を支えるために仕事を辞めるという選択を余儀なくされる問題であり、近年、社会的にも大きな関心が集まっています。介護と仕事の両立が難しい中で、離職を選ばざるを得ない理由はいくつかあります。以下にその主な理由を紹介し、どのような背景があるのかを考えます。

1. 自分の仕事を代わってくれる人がいないこと

介護が始まると、仕事の時間や内容に柔軟性が求められる場面が多くなります。しかし、特に中小企業などでは、スタッフが少なく、業務を代わりに担当できる人がいない場合があります。このため、突然の介護を理由に欠勤や遅刻が続くと、職場の業務に支障をきたし、その結果、仕事を続けることが難しくなります。自分の役割をカバーしてくれる人がいないことで、辞職を選ぶケースが多いのです。

2. 介護休業制度等の両立支援制度がないこと

介護と仕事を両立させるための支援制度が整っていない企業では、社員が介護休業を取得することができず、結果的に退職せざるを得ない場合があります。介護休業制度が整備されていても、実際に利用するためのハードルが高いこともあります。これが制度の不十分さを引き起こし、介護に追われる中で仕事を続けることが困難になります。

3. 人事評価に悪影響がでる可能性があること

介護と仕事を両立させるために休暇を取ることや勤務時間を調整することが、人事評価に悪影響を与えるのではないかと懸念する声もあります。特に、業績重視の企業文化が強い場合、介護を理由に欠勤や短時間勤務が続くと、評価が低くなる可能性があると感じる人も多く、そのために介護休業や休暇を取ることを躊躇する場合が少なくありません。結果的に、評価を気にして仕事を辞める決断をすることになります。

4. 介護休業制度等の両立支援制度を利用しにくい雰囲気があること

たとえ制度として介護休業や両立支援制度が存在していたとしても、職場の雰囲気や文化によっては、それを利用しにくいと感じる社員が多いのも現実です。介護を理由に休暇を取ることで、周囲からの理解やサポートが得られない場合、負担感やプレッシャーを感じることがあります。そのため、制度を利用することを避け、最終的に介護離職を選ぶ人が少なくないのです。

5. 労働時間が長いこと

長時間働かなければならない職場環境は、介護と仕事の両立をさらに難しくします。特に、業務量が多く、残業が常態化している場合、介護を必要とする家族の世話をするための時間が確保できず、負担が積み重なります。時間的な制約が大きい中で、仕事を続けることがますます厳しくなり、最終的に離職に至ることがあります。

介護離職の背景には、制度面や職場環境、企業文化など複数の要因が絡み合っています。介護と仕事を両立させるためには、制度の整備だけでなく、職場全体での理解やサポートが不可欠です。企業としては、介護休業制度や柔軟な勤務体制を導入すること、また、介護をする社員が安心して利用できる環境を作ることが求められます。社会全体で介護と仕事の両立支援が進むことが、介護離職の防止につながるでしょう。

利用されている制度・いない制度

介護に関する勤務先の制度は整備されているものの、実際には多くの社員がそれらの制度を利用していない現状があります。

調査によると、最も多い回答は「利用していない」というもので、男女ともにその割合が高いことが分かります。実際に利用された制度としては、「有給休暇」が最も多く、男性で27.8%、女性で31.8%という結果となりました。

その他、比較的利用されているのは「半日単位、時間単位等の休暇制度」や、「遅刻、早退または中抜けなどの柔軟な対応」です。

しかし、制度の利用には男女差も見られます。女性の方が制度の利用割合が高い一方、男性では「フレックスタイム制度」や「残業・休日勤務の免除」が女性よりも利用されていることが分かります。これらの制度は柔軟な働き方を支援するために設けられていますが、実際にはどちらも利用者が少ないのが現状です。

特に、介護を支援するための「介護休業制度」の利用率は低く、男性で4.2%、女性で6.5%にとどまっています。

この結果から、制度自体は整備されていても、実際に利用されない原因として「制度がわからない」「相談する部署がない、わからない」「制度を利用しにくい雰囲気がある」といった社内の環境の問題が挙げられています。

企業側が制度を整備するだけでは十分ではなく、社員が制度を積極的に利用できる環境を整えることが、今後の課題となるでしょう。

介護で困っても企業には相談しない空気

介護の問題に直面したとき、就労者や離職者の多くは企業に相談せず、主に「家族・親族」に頼る傾向があります。

次いで、「ケアマネジャー」に相談する人が多く、特に就労者ではケアマネジャーに相談する割合が高いのが特徴です。

また、介護離職をしたあとは「介護が必要な本人」や「友人・知人」など、身近な人に相談する割合が高くなっています。

興味深いのは、勤務先への相談割合が非常に低いことです。

介護をしている就労者の7.6%が勤務先に相談をするということで少数派となっています。この結果から、職場で介護の問題について知られることに対する抵抗感は低いものの、それでも企業への相談を避ける傾向があることがわかります。

その理由としては、介護に関して企業が提供できる支援策や制度についての認知度が低いことが挙げられます。

相談先として企業が有効だと認識されていないため、介護問題を解決するために企業に相談しようとする動きが少ないのです。

この状況を改善するためには、企業側が介護支援に関する情報を積極的に提供し、相談しやすい環境を整えることが必要です。

介護に必要な時間

介護休業制度の利用目的について、就労者と離職者の間で利用の仕方に違いが見られます。

就労者の場合、最も多い利用目的は「入退院の手続き」であり、次いで「役割分担やサービス利用等にかかわる調整・手続き」、そして「排泄や入浴等の身体介護」の割合が高くなっています。

これは、就労者が勤務を持ちながら介護を行う中で、制度を使って介護に関わる準備や調整を行うことが主な目的となっていることを示しています。

仕事との両立を図る中で、時間的な制約もあり、直接的な身体介護よりも、手続きや調整に時間を使う傾向があると言えるでしょう。

一方、介護離職者では、就労者に比べて「排泄や入浴等の身体介護」や「定期的な声かけ」といった、直接的な介護行為や見守りのために介護休業制度を利用する割合が高くなっています。

離職後は、仕事の制約がなくなるため、介護に必要な時間をより直接的なケアに充てることができるため、このような違いが生まれると考えられます。

このように、限られた休業期間をどのように活用するかについて、就労者と離職者で目的や活用方法に違いが見られます。

企業側は、介護休業制度を利用する際の具体的なニーズや状況に応じて、柔軟な支援を行うことが求められます。

企業でできる介護離職対策

介護休業を取得できる環境を整える

介護休業とは、家族の介護が必要になったときに、一定期間仕事を休むことができる制度です。育児・介護休業法によって定められており、会社員であれば多くの場合、法律で保証された権利として取得可能です。

介護休業の基本ルール

対象者:要介護状態の家族(両親・配偶者・子・祖父母・兄弟姉妹・孫など)がいる労働者
休業期間:1人の対象家族につき、通算93日間(3回まで分割取得可)
給与:会社によって異なりますが、無給の場合が多い(※ ただし、介護休業給付金が受け取れる)
対象となる労働者:原則、雇用期間1年以上で、休業開始から93日以内に雇用契約が終了しない人

介護休業給付金について

介護休業中は、基本的に会社からの給与は支払われませんが、「介護休業給付金」をハローワーク(雇用保険)から受け取ることができます。

給付額:休業前の給与の67%
支給期間:最大93日間(分割取得した場合も合計93日まで)
申請方法:会社を通じてハローワークに申請

介護休暇を取得できる環境を整える

介護休暇とは、要介護状態の家族を介護するために取得できる短期的な休暇のことです。介護休業とは異なり、比較的短い期間で取得できるため、急な介護対応が必要なときに便利な制度です。

介護休暇の基本ルール

対象者:要介護状態の家族(配偶者・両親・子・祖父母・兄弟姉妹・孫など)がいる労働者
休暇日数:年間5日まで取得可能(対象家族が2人以上なら年間10日まで)半日単位や時間単位で取得できる(2021年1月から改正)
給与:法律上は無給(ただし、会社によっては有給とする場合もある)
対象となる労働者:雇用期間が6ヶ月以上

介護について相談できる環境を整える

家族介護に直面した社員が相談できる窓口を設置することは、企業にとっても従業員にとっても大きなメリットがあります。 介護は突然必要になることが多く、社員が適切なサポートを受けられる環境を整えることは、仕事と介護の両立を支援するうえで重要です。

社内相談窓口の役割と必要性
・社員が介護の悩みを気軽に相談できる環境を整える
・介護休業や介護休暇などの社内制度についての情報提供を行う
・介護の負担を軽減するためのアドバイスを提供する
・相談内容を分析し、企業の支援制度の改善につなげる

ただし、社内に介護や育児・介護休業法に精通した相談担当者を配置することは容易ではありません。そのため、専門的な知識が不足している場合は、外部の支援機関と連携することも選択肢のひとつです。

包括支援センターの活用

企業内での相談窓口設置が難しい場合や、より専門的なアドバイスを求める場合には、地域の「包括支援センター」を活用することも有効です。

包括支援センターとは?
地域包括支援センターは、高齢者の介護・健康・生活支援に関する総合相談窓口です。
・全国の自治体が設置しており、無料で利用できる。
・介護保険の利用方法や介護サービスの紹介、認知症の相談など、幅広い支援を提供
・専門職(社会福祉士・保健師・ケアマネジャー)が対応するため、適切なアドバイスを受けられる。

包括支援センターの活用メリット

専門的なアドバイスが受けられる
社内では対応できない介護の具体的な相談や、介護サービスの紹介を行ってくれる。

・介護保険サービスの活用方法を教えてもらえる
社員が介護負担を軽減するために、どのような公的サービスを利用できるかを把握できる。

・無料で利用できる
企業の負担なく、社員が利用できる支援機関として案内できる。

社内相談窓口と包括支援センターの併用

社内相談窓口 → 会社の制度や働き方に関する相談を受付
・包括支援センター → 介護そのものに関する専門的なアドバイスを提供

社内だけで完結させようとせず、外部の専門機関と連携することで、社員の負担を軽減し、より実効性のあるサポートを提供することが可能です。企業としても、包括支援センターの存在を周知し、必要な社員が適切な支援を受けられるような環境を整えていくことが重要です。

介護についての社内セミナーを実施する

介護に直面した社員だけでなく、今後介護が必要になる可能性がある社員も対象に、介護に関する知識や支援制度について学ぶ場を提供する取り組みです。

セミナーを通じて、以下のような情報を提供できます。
・介護保険制度の基礎知識
・介護サービスの種類と利用方法
・仕事と介護を両立するための工夫
・社内の介護支援制度の活用方法
・実際に介護と仕事を両立している社員の体験談

特に、社員自身が介護に直面していなくても、事前に知識を得ておくことで、いざという時にスムーズに対応できるというメリットがあります。